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第12章 vs聖義の剣
第242話 恥と誇り
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「兄…………だと?」
「うん」
「じ、じゃあ貴様はあのズボラの弟だっ
ていうのか?」
「そうだね。誠に遺憾ながら」
「……………驚いた。こりゃかなりの大ニ
ュースじゃねぇか」
「まぁ、周りからしたらそうだろうね。
なんせ前回の邪神復活、それと今回の非
人道的な研究の両方の中心人物と高ラン
ク冒険者が身内なんだ。でもね、周りか
ら見れば卑劣でどうしようもない研究馬
鹿でも僕からしたら、ただの兄でしかな
いんだ」
「仲間達はこのことを知っているの
か?」
「いや、知らない」
「これはとんでもない裏切り行為になる
んじゃないのか?邪神災害と今回の騒動
に関わる人物がまさか、自分達の仲間の
身内だなんてな………………今も必死に戦
っている貴様の仲間がそれを知ったら、
どう思うかな?」
「………………」
「いいか?悪の行いってのは連帯責任な
んだよ。それを精算するのは主に血、つ
まり同じ血族の者達だ。貴様はただ、あ
の男の兄というだけで世界中から白い目
を向けられ、罪を償うことを強いられる
だろう。例え、貴様が悪いことを何もし
ていなくてもだ。まぁ、あいつのやった
ことはとんでもないことだから、贖罪も
相当なものなはずだ……………まさかとは
思うが、あいつがやったことを隠し通
し、のうのうと生きていく訳じゃないだ
ろうな?」
「そんなことはしない。今回の騒動が終
われば、ちゃんと仲間達にもギルドにも
伝えるさ。そこから、世界中に伝わるの
も時間の問題だし、ちゃんと身の振り方
は考えてある」
「ふんっ!楽しみだな。調子良く出世街
道をひた走っていた奴が脱落していくの
は見ていて、気持ちがいい!そうだ。記
念に俺からこの言葉を貴様に送ってや
る…………出る杭は打たれる。天狗にな
るな」
「随分と性格悪いね」
「これが人の性ってもんだ」
「君以外の人も一括りにしないでよ」
「ふんっ!知ったことか。他の奴のこと
なんか気にしてる奴にこの組織の幹部は
務まらん」
「さっき仲間のことでブチギレてなかっ
たっけ?」
「………………」
「まぁ、いいや。ところでさっさと僕達
も始めない?」
「貴様がまず始めるのは仲間達、それか
ら世界中の者達への謝罪だろう?」
「それは後。僕にはまだやらなければな
らないことがある」
「ほぅ?」
「僕はなんとしてでも君達を止める。ま
ずはそれが………………僕の贖罪の第一歩
目だ」
――――――――――――――――――――
とある王国の跡地。そこを何の躊躇いも
なく、突き進む者がいた。"聖義の剣"
の幹部である。白い修道服越しでも分か
るほど、身体のラインがくっきりとして
おり、すれ違った男であれば誰であれ振
り返るほどの長身美女だった。しかし、
それを台無しにしてしまうほど見た目に
ミスマッチなものを担ぎながら歩いてい
る為、振り返ったはいいものの、思わず
声を掛けようとする男は皆無であろう。
たとえ修道服を着崩し、胸元がぽっかり
と開いてしまっている状態だとしても
だ。
「おい、さっきからコソコソと着いてき
てる奴、何者だ?」
それまで軽快に進んでいたはずの幹部の
女は突然、立ち止まると後ろへ振り返っ
て、そう言った。顔は険しくなってお
り、明らかに後方を警戒している。
「さっさと出てこいよ。俺も暇じゃねぇ
んだ」
辺りを見回していた幹部は少しして、あ
る一点を凝視し始めた。そこは崩れた瓦
礫の山ができている場所だった。それこ
そ、人が1人は隠れていられそうなくら
いに……………それから1分程が過ぎた
時、観念したのか美声と共にある者が姿
を現した。
「どうやら、これ以上は無理なようね。
完全にバレているようだし」
「お、お前は………………"麗鹿"ケリュ
ネイア!?」
それはエメラルドグリーンの長髪をした
儚げで美しい鹿人種の女性だった。彼女
が歩く度、まるでそこが切り取られた絵
の一部であると錯覚してしまうほどであ
り、触れてはいけない聖域という雰囲気
すら醸し出している。場所が場所という
こともあり、崩壊した国に舞い降りた女
神だと感じてしまう者もいることだろ
う。
「私を知っているの?」
「馬鹿言っちゃいけねぇ。冒険者でなく
ても"麗鹿"という異名を聞いたことの
ない奴ならいない。ましてや、お前は"
赤虎"と肩を並べる獣人族の誇り。同じ
獣人族である俺にとっちゃ、本来は雲の
上の存在よ」
「あら、本当ね。あなた、豹人種かし
ら?」
「ああ、そうだ」
「へ~そう………………ところで"本来は
"って、どういうことなの?」
「ああ、それはな…………確かに以前の
俺だったら、お前に出会っただけで嬉し
さと興奮から気を失っていたかもしれね
ぇ。だが、今は違う。俺はな、出会っち
まったんだよ………………それ以上の存在
であるハジメ様にな」
「………………やっぱり、あなたは"聖義
の剣"とかいう組織の者なのね?」
「ああ。一応、幹部をやらせてもらって
る」
「そう。だったら、残念だけど……………
ここであなたには退場してもらわなくて
はならないわ」
「はんっ!そうくると思っていたぜ!」
直後、幹部の女は担いでいたバスタード
ソードを地面へと叩きつけながらニヤリ
と笑って、こう言った。
「だが、お前が戦うのは俺じゃない。こ
いつだ」
幹部は隣を指差して得意気な顔をする。
気が付けば、そこには生気を感じられな
い虚な表情をした者が立っていた。
「うん」
「じ、じゃあ貴様はあのズボラの弟だっ
ていうのか?」
「そうだね。誠に遺憾ながら」
「……………驚いた。こりゃかなりの大ニ
ュースじゃねぇか」
「まぁ、周りからしたらそうだろうね。
なんせ前回の邪神復活、それと今回の非
人道的な研究の両方の中心人物と高ラン
ク冒険者が身内なんだ。でもね、周りか
ら見れば卑劣でどうしようもない研究馬
鹿でも僕からしたら、ただの兄でしかな
いんだ」
「仲間達はこのことを知っているの
か?」
「いや、知らない」
「これはとんでもない裏切り行為になる
んじゃないのか?邪神災害と今回の騒動
に関わる人物がまさか、自分達の仲間の
身内だなんてな………………今も必死に戦
っている貴様の仲間がそれを知ったら、
どう思うかな?」
「………………」
「いいか?悪の行いってのは連帯責任な
んだよ。それを精算するのは主に血、つ
まり同じ血族の者達だ。貴様はただ、あ
の男の兄というだけで世界中から白い目
を向けられ、罪を償うことを強いられる
だろう。例え、貴様が悪いことを何もし
ていなくてもだ。まぁ、あいつのやった
ことはとんでもないことだから、贖罪も
相当なものなはずだ……………まさかとは
思うが、あいつがやったことを隠し通
し、のうのうと生きていく訳じゃないだ
ろうな?」
「そんなことはしない。今回の騒動が終
われば、ちゃんと仲間達にもギルドにも
伝えるさ。そこから、世界中に伝わるの
も時間の問題だし、ちゃんと身の振り方
は考えてある」
「ふんっ!楽しみだな。調子良く出世街
道をひた走っていた奴が脱落していくの
は見ていて、気持ちがいい!そうだ。記
念に俺からこの言葉を貴様に送ってや
る…………出る杭は打たれる。天狗にな
るな」
「随分と性格悪いね」
「これが人の性ってもんだ」
「君以外の人も一括りにしないでよ」
「ふんっ!知ったことか。他の奴のこと
なんか気にしてる奴にこの組織の幹部は
務まらん」
「さっき仲間のことでブチギレてなかっ
たっけ?」
「………………」
「まぁ、いいや。ところでさっさと僕達
も始めない?」
「貴様がまず始めるのは仲間達、それか
ら世界中の者達への謝罪だろう?」
「それは後。僕にはまだやらなければな
らないことがある」
「ほぅ?」
「僕はなんとしてでも君達を止める。ま
ずはそれが………………僕の贖罪の第一歩
目だ」
――――――――――――――――――――
とある王国の跡地。そこを何の躊躇いも
なく、突き進む者がいた。"聖義の剣"
の幹部である。白い修道服越しでも分か
るほど、身体のラインがくっきりとして
おり、すれ違った男であれば誰であれ振
り返るほどの長身美女だった。しかし、
それを台無しにしてしまうほど見た目に
ミスマッチなものを担ぎながら歩いてい
る為、振り返ったはいいものの、思わず
声を掛けようとする男は皆無であろう。
たとえ修道服を着崩し、胸元がぽっかり
と開いてしまっている状態だとしても
だ。
「おい、さっきからコソコソと着いてき
てる奴、何者だ?」
それまで軽快に進んでいたはずの幹部の
女は突然、立ち止まると後ろへ振り返っ
て、そう言った。顔は険しくなってお
り、明らかに後方を警戒している。
「さっさと出てこいよ。俺も暇じゃねぇ
んだ」
辺りを見回していた幹部は少しして、あ
る一点を凝視し始めた。そこは崩れた瓦
礫の山ができている場所だった。それこ
そ、人が1人は隠れていられそうなくら
いに……………それから1分程が過ぎた
時、観念したのか美声と共にある者が姿
を現した。
「どうやら、これ以上は無理なようね。
完全にバレているようだし」
「お、お前は………………"麗鹿"ケリュ
ネイア!?」
それはエメラルドグリーンの長髪をした
儚げで美しい鹿人種の女性だった。彼女
が歩く度、まるでそこが切り取られた絵
の一部であると錯覚してしまうほどであ
り、触れてはいけない聖域という雰囲気
すら醸し出している。場所が場所という
こともあり、崩壊した国に舞い降りた女
神だと感じてしまう者もいることだろ
う。
「私を知っているの?」
「馬鹿言っちゃいけねぇ。冒険者でなく
ても"麗鹿"という異名を聞いたことの
ない奴ならいない。ましてや、お前は"
赤虎"と肩を並べる獣人族の誇り。同じ
獣人族である俺にとっちゃ、本来は雲の
上の存在よ」
「あら、本当ね。あなた、豹人種かし
ら?」
「ああ、そうだ」
「へ~そう………………ところで"本来は
"って、どういうことなの?」
「ああ、それはな…………確かに以前の
俺だったら、お前に出会っただけで嬉し
さと興奮から気を失っていたかもしれね
ぇ。だが、今は違う。俺はな、出会っち
まったんだよ………………それ以上の存在
であるハジメ様にな」
「………………やっぱり、あなたは"聖義
の剣"とかいう組織の者なのね?」
「ああ。一応、幹部をやらせてもらって
る」
「そう。だったら、残念だけど……………
ここであなたには退場してもらわなくて
はならないわ」
「はんっ!そうくると思っていたぜ!」
直後、幹部の女は担いでいたバスタード
ソードを地面へと叩きつけながらニヤリ
と笑って、こう言った。
「だが、お前が戦うのは俺じゃない。こ
いつだ」
幹部は隣を指差して得意気な顔をする。
気が付けば、そこには生気を感じられな
い虚な表情をした者が立っていた。
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