俺は善人にはなれない

気衒い

文字の大きさ
上 下
240 / 416
第12章 vs聖義の剣

第240話 新生人

しおりを挟む
「君……………一体、どこに行く気だ

い?」

「っ!?お前は…………」

カンパル王国近くの深い森の中。そこを

今、まさに歩く男がいた。白い修道服に

身を包み、首から金のペンダントをかけ

たその男はガタイがかなり良く、険しい

顔も相まって、出会ってしまったのが一

般人であれば、即逃げ出すこと間違いな

しな程だった。そんな男が突然、掛けら

れた声に驚き振り返るとそこにはこの場

にはおよそ似つかわしくない物腰の柔ら

かそうな青年が立っていた。

「お前は……………ハーメルン・ルイス」

「その呼び名はあまり好きじゃないな。

できれば、違う呼び方で呼んで欲しい

ね」

「では"笛吹き"ハーメルン」

「うん。なんだい?」

「何故、お前がここにいる?」

「それはこちらの台詞なんだけどな」

「何?」

「君、さっき変なゲームを開催したハジ

メとかいう人の仲間でしょ?」

「変なとは何だ!いくらSSランク冒険

者とはいえ、ハジメ様を愚弄することは

許さん!」

「あ~はいはい。で、珍しいゲームを開

催したハジメ様とかいう人の仲間なんで

しょ?」

「ふんっ!よく気が付いたな」

「いや、映像の魔道具に映っていたか

ら。君、身体がデカいし」

「そうだろう!凄いだろう?」

「いや……………まぁ、いいや。というよ

り、映ってなくてもその特徴的な服装で

大方察しはつくでしょ。ここに来るまで

も結構いたし、ハジメ様ってのがあの大

胆な宣言をした瞬間、どこかに隠れてい

たのか一気に増えたしね」

「それはそうだ。俺達は計画通り、ハジ

メ様の公開宣言の後に大きく動くことに

なっていたからな。今頃、世界中では同

志達が派手に暴れ回っているだろう」

「あ、そんなことも教えてくれるんだ。

じゃあ、ついでにこの後の展開も教えて

くれると助かるな」

「ああ、この後はな……………って、そん

な口車に乗る訳ないだろ!あまり俺を馬

鹿にするな!」

「ちえっ!まぁ、いいや。用件はそんな

ことじゃないし」

「用件だと?」

「うん。君……………鍵を持たされた幹部

でしょ?」

「……………どこで気が付いた?」

「うん。映像の魔道具に映っていたとい

う確定的な証拠はこの際、置いておくと

して……………その金のペンダントだよ」

「ペンダント?それがどうした」

「ここに来るまでに君のお仲間達と遭遇

したって言ったよね?その人達はね、君

が首から掛けているようなものを特にし

ていなかったんだ。だから、その違いに

疑問を覚えた。で、他の組織とかでよく

あるパターンに照らし合わせたのさ。そ

したら、大抵は役職のある者、幹部や幹

部候補生といった者達とそれ以外を区別

する為に分かりやすいものを身に付けた

りするってことに気が付いたんだ」

「………………」

「そこで改めて君を見て、思ったよ。そ

の佇まいと威圧感は確実に幹部だとね」

「ふんっ!それが分かったから、なんだ

ってんだ?まさか、俺を倒して鍵を奪お

うとでも?しかし、残念だったな。こっ

ちはこれでも忙しい身。そんな時にSS

ランク冒険者の相手なんぞ、していられ

るか」

「へ~逃げるんだ」

「戦略的撤退だ。あとそんな安い挑発な

ら、いくらされても効かんぞ」

「あっ、そう。じゃあ、こんなのはど

う?僕がここに来るまでに出会ったって

いう君の仲間達…………どうなったと思

う?」

「ふんっ!あいつらなら、敵との戦力差

を考え、合理的な判断を………………っ

て、お前まさか」

「楽しかったとだけ言っておく。彼らが

奏でた旋律は実に美しかったよ」

「………………貴様、覚悟はできているん

だろうな」

「あれ?安い挑発は効かないんじゃない

の?しかも呼び方まで変わってるし」

「それのどこが安い挑発だ?俺は仲間達

をやられて、そのまま気楽に過ごせる

程、馬鹿じゃねぇ」

「いいね、その殺気。楽しみだ。君は一

体どんな音を奏でてくれるのかな?」

「ふんっ、甘いな!貴様の相手をするの

は俺ではない!……………こいつだ!」

そう言って、男が何もない空間に手を当

てるとそこが歪み出し、やがて1つの大

きな穴が開いた。繋がっている先は真っ

暗で何も見えず、一度吸い込まれたら二

度と出てこられないような、そんな不気

味さを感じる。そして、男はそこへなん

の躊躇いもなく手を突っ込むと形容し難

い不快音をさせながら、何かを引っ張り

出す。するとそれを見たハーメルンはと

ても驚き、同時にひどく不快感も覚え

た。

「っ!?それは………………」

「俺達、"聖義の剣"が研究と実験を繰

り返し、新しく生まれ変わった者だ」

「いや、どう見てもその人は」

「うん?ああ、貴様が言いたいことはこ

ういうことか?……………正気を感じられないし、まるで死人・・・・・・・・・・・・・・・・

だと。なかなかに鋭いな」

「っ!?ま、まさか君達は…………」

「ああ。俺達は死人を完全な状態に復元

し、なおかつ新しく生まれ変わらせるこ

とに成功したんだ。俺達はそんなこいつら・・・を"新生人ニュー・タイプ"と名付けた」

「……………その人は君の知り合いな

の?」

ハーメルンの質問に対して、男はニヤッ

と笑いながらこう答えた。


「いや、違う。だが、聞いて驚け。こい

つはなんとあのアスターロ教の幹部だっ

た者……………その成れの果てだ」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

能力1のテイマー、加護を三つも授かっていました。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:9,401pt お気に入り:2,271

生贄として捧げられたら人外にぐちゃぐちゃにされた

BL / 完結 24h.ポイント:433pt お気に入り:315

パラレルワールドの世界で俺はあなたに嫌われている

BL / 完結 24h.ポイント:184pt お気に入り:1,321

転生先のパパが軽くヤンデレなので利用します

BL / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:571

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:3,132pt お気に入り:1,296

悪魔皇子達のイケニエ

BL / 連載中 24h.ポイント:3,565pt お気に入り:1,949

処理中です...