俺は善人にはなれない

気衒い

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第12章 vs聖義の剣

第234話 救援

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怒号や悲鳴が辺りに響き渡り、魔法によ

って所々が燃えている森の中。そんな中

を疾風のごとく駆け回る集団がいた。全

員、女で構成されたその集団の数は8

人。黒衣を靡かせ、それぞれ違う武器を

携帯した彼女達の胸には一風変わったク

ランマークがついている。と、徐に先頭

を走る者が言葉を発した。

「ここからは別行動をしましょう。敵は

見つけ次第、即殲滅。分かっていると思

うけど、情けは無用よ」

「「「「「はい!!!!!」」」」」






「ひぃっ!こ、来ないでくれ!」

「見逃して~!」

「俺達はただ静かに暮らしたいだけなん

だ!」

森の中を逃げ惑う人々。それを執拗に追

う"聖義の剣"。側から見れば、どちら

が加害者でどちらが被害者なのかは一目

瞭然だ。しかし、彼らにとって、そんな

ことはどうでも良かった。

「「「うわあっ!?」」」

「ったく、面倒かけさせやがって」

「ようやく追い詰めたぜ」

「見逃す訳ねぇだろ」

戦いの経験がない者と人を痛め付けるこ

とに慣れている者。その鬼ごっこではど

ちらに軍配が上がるのか明白だった。い

くら鬱蒼と茂った森の中であろうと戦闘

のプロを撒くことは容易ではない。結

果、人々は白い修道服を着た悪魔達に捕

まってしまうのだった。

「ゆ、許してくれ」

「みっともねぇな。命乞いかよ」

「たとえ、みっともなくても命が助かる

のなら、どんなことだってする!俺には

帰りを待つ家族がいるんだ!」

「あっそ。そういうの俺、一番嫌いなん

だわ。ってことで……………逝け」

瞬間、これから訪れる恐怖に対して目を

瞑る男。その間に時間の流れがゆっくり

となり、これまで生きて経験してきたこ

とが走馬燈となって頭の中に………………

流れることはなかった。と同時に痛みも

やってこない。

「ん?おかしいな」

違和感を覚えた男はゆっくりと目を開け

て周りの状況を確認してみることにし

た。すると周りでも同じことを思ったの

か、徐々に目を開ける人々がそこにはい

た。そして、肝心の悪魔達の方だ

が……………

「がはっ!な、なんだお前………」

「うるさいです。大人しく逝って下さ

い」

「ぐはあっ!」

「本当に救いようのない奴ら」

2人の少女の手によって、片付けられて

いた。一瞬、何が起きたのか分からない

人々は揃って呆けた顔をする。すると1

人がちょうど振り返り、目が合った彼女

はこう言った。

「そこの貴方!」

「お、俺!?」

「はい!」

「…………な、何でしょうか?」

「貴方はみっともなくなんてないです」

「へ?」

「貴方は自分の大切な人達の為に何もか

もを捨てて生き残ろうとした……………そ

の心意気は称賛されこそすれ、見下され

るようなことではありません!むしろ、

みっともないのはこいつらの方です」

男は突然かけられた言葉に込み上がるも

のがあった。何故、自分は年下の女の子

に助けられ、あまつさえ優しく慰めても

らっているのか……………彼女の言葉によ

って、勇気付けられた心と身体が立ち上

がれと訴えてかけてくる。まだ自分にも

何か他にできることがあるんじゃない

か。ここにいる人と協力して、無事に生

き延びる方法がどこかに残されているん

じゃないのか。だが、まずはその前にや

ることがあった。助けてもらったお礼を

まだ言っていない。男は震えそうになる

声を必死に誤魔化しながら、彼女へ感謝

の念を述べようと

「あの、先程は……………」

「皆さん、よく頑張りましたね。もう大

丈夫です」

したが、それよりもはっきりとした大き

な声で遮られてしまった。そして、今度

は少女達が2人共、人々を見渡しながら

言葉を続ける。

「ここからは私達がご一緒させて頂きま

す。あ、自己紹介が遅れました。私、ク

ラン"黒天の星"の遊撃部隊、新兵のセ

ーラと申します」

「同じく新兵のサクヤだよ。よろし

く~」

「"黒天の星"!?」

「あの有名な!?」

「た、確かに黒衣を着ているし、クラン

マークもそうだ」

驚いた空気が流れたがそれも一瞬のこ

と。人々はハッと我に返ると皆、頭を下

げて先程声をかけられた男を先頭に謝意

を述べた。

「セーラさん、サクヤさん、この度は命

を助けて頂き、誠にありがとうございま

す」

「「「「「ありがとうございます」」」」」

「このお礼は必ず致します」

「でしたら、私達からは1つだけ要望が

あります」

「何でしょうか?」

「必ず生きて、帰るべき場所へと帰るこ

と……………これをお約束して下さい」

「っ!?は、はい!分かりました!」

「よろしい。では行きましょうか」

「あ、あの!ちょっとお待ち下さい!」

「はい?」

「あっちにもまだ取り残された人達がい

るんです!助けてもらっておいて、こん

なことを言うのが図々しいのは百も承知

なんですが、その人達も助けて頂くこと

はできないでしょうか?」

その訴えに対し、何故か満面の笑みを浮

かべたセーラはこう返した。



「心配なさらずとも大丈夫ですよ。なん

せ、あちらには私以上に頼りになる人達

がいますから」
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