俺は善人にはなれない

気衒い

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第11章 軍団戦争

第219話 笛吹き

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他種族が多く入り混じる街ワプロ。ここ

は異文化の交流が盛んであり、種族の隔

たりなく皆仲良く暮らしている。その

為、毎日のように旅の者や観光客が訪

れ、商売人にとっては非常に生活しやす

い街となっていた。また近くに迷宮があ

ることから冒険者の数も多く、高ランク

冒険者が姿を見せることもしばしばあっ

た。そして、それはこの日も例外ではな

かった。

「オレはヒュージといいやす。この街に

は今日、初めて来たので一応ご挨拶をと

思いやして」

「黒の衣にその巨体………………もしかし

て"黒天の星"の!?」

「はい。そうでやす」

「し、少々お待ち下さい!ただ今、ギル

ドマスターをお呼び致しますので!」

「ゆっくりで結構ですぜ」







「おい、あれ」

「ああ。受付嬢が驚くのも無理はねぇ。

あれは"黒天の星"のメンバー、"巨腕

"のヒュージだな」

「橙組組長様が何だって、こんなとこ

に…………」

「さぁな。ただ何となく観光って訳じゃ

なさそうだぞ。他のメンバーも見ろ」

「"流水"に"氷砕"、"獣剣"までい

るな。確かに休暇中って感じでもない

か。ってか、冷静に考えてあいつらが1

つのクランに入って、それも幹部ですら

なく、一組員とかヤバいな」

「今更すぎる意見だな。まぁ、それも仕

方ないだろ。なんせ上の層が厚すぎる」

「寝首を掻いてやろうとか思わねぇのか

な?元々ソロで冒険者やってた奴なんて

自我が強そうな感じがするが」

「だよなぁ。入っていきなり組長を1人

でも倒せば、昇進できるかもしれねぇ

し。それが幹部ともなれば、大躍進だか

らな。まぁ、ただ」

「ただ?」

「組長は鬼のように強く、幹部は次元が

違う。さらにその上ともなれば、大国を

多数相手にする方がマシだと聞いたこと

があるな。実際に奴らの戦いぶりを見た

奴がそう言っていたらしい。まぁ、実績

もあるしな」

「ひぃ~怖っ!関わらないようにしよ。

でも、あそこにいる"巨腕"は温厚そう

だけどな」

「だが、怒らせるととんでもないことに

なるらしいからな。以前、しつこく絡ん

でた冒険者がそれで吹っ飛ばされたみた

いだ」

「へ~気をつけよ」








「待たせたな」

「いえいえ」

ギルドマスター室へと迎え入れられたヒ

ュージは恐縮しながら、ソファーに座っ

た。他のメンバーは後ろに立ち、2人の

やり取りを見守っている。

「私は冒険者ギルド ワプロ支部のギルド

マスター、タイタンだ。よろしく」

「クラン"黒天の星"、ヒュージです」

「ああ、知っている。後ろに立つ彼らも

そこそこ名の知れた者達だな。で、そん

な君達がこの街に一体何の用なのか

ね?」

「実はこの街にクランハウスを設けて、

そこを支部としようと思っていやし

て……………しばらく、この街に滞在する

予定なんでご挨拶をと」

「なんと!?支部までとな。そこまで大

きくなったか」

「まだ仮段階みたいですけどね」

「そうか。何にしても君達がこの街にい

てくれるのは心強いな」

「まぁ、全員が常にいるとは限らないん

ですけどね。交代で別の場所に行くこと

もありやすし」

「忙しいんだな……………ところでさっき

から気になっていたんだが、君の種族は

巨人じゃなかったか?それにしては随分

と小さいようだが」

「これはスキルで小さくなっているだけ

でやす。じゃないと日常生活に支障をき

たしやすから。この部屋にも入れやせん

し」

「なるほど。普段から、その大きさで行

動しているのか。では2つ名の"巨腕"

とは?」

「あぁ。それはしつこく絡んできた冒険

者を追っ払う際に腕だけを巨大化させた

からだと思いやす。それをたまたま見て

いた人がいるんでしょう」

「なるほどな……………ん?」

その時、扉をノックする音が聞こえ、皆

の視線がそこへと向かう。ギルドマスタ

ーは一瞬顔を顰めたが、ヒュージが気に

していないのとむしろ自分達のことはい

いから早く対応してあげてくれと言われ

た為、入室を許可した。するとそこにい

たのは……………


「お話のところ、失礼致します。どうや

ら、こちらに"黒天の星"の方々がいら

っしゃるとのことで参りました」

「お前は……………」


SSランク冒険者であり、クラン"|愉

快な行進《パレード》"のクランマスタ

ー、"笛吹き"ハーメルンだった。
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