俺は善人にはなれない

気衒い

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第10章 セントラル魔法学院

第198話 蠢く影

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「全員、揃っているな?」

「はい。我ら"十王剣武"、主の御前に」

「では早速だが報告を聞こう」

「かしこまりました。1週間程前、カンパル王国のセントラル魔法学院に潜入させていたキルギスという男の消息が絶たれました」

「ふむ」

「消息を絶つ直前、キルギスの身体に急速な魔力の凝縮・膨張がみられた為、おそらく魔人になったかと思われます。そして、その原因は強敵との対峙にあるかと。というのもその学院には昔、"魔拳"と呼ばれ恐れられていたネバダ・クウォーターが常駐しています。もし、何らかの理由で奴と戦うことになった場合、いかにキルギスといえど無事では済みません。現役でないとはいえ、"魔拳"を相手にするとなるとやはり、それなりの……………」

「ないな」

「……………はい?」

「キルギスと一戦交えたのは"魔拳"ではないと言っているんだ」

「ど、どういうことでしょうか?」

「この世界の基準で言えば、"魔拳"は強い。これは確かだ。しかし、1つ解せない点がある。それは消息を絶ったというところだ。お前達も知っての通り、そんな事態に陥るのは数が限られている。突然、病で倒れた時、特殊な魔法で雲隠れをした時、そして……………自分よりもはるか格上の敵に追い詰められ命の危機に瀕した時だ」

「………………」

「魔人となった者はステータスが何倍にも膨れ上がる。果たして、その状態のキルギスを"魔拳"が追い詰めることは可能か?言っておくが余程の危険に曝されなければ、証拠隠滅の為に組み込んだ自爆の術式が作動することはまずない。ということはキルギスの目の前に立ちはだかった者は一切の情報を渡してはいけない超危険人物だと判断されたということだ」

「そ、そんな者が!?まさか、我らの障害となりうる人物なのでしょうか?」

「それはまだ分からん。世界は広いからな。"雲海"や"鋼帝"、"炎剣"みたいなSSSランク冒険者よりも強い者がどっかその辺にいるかもしれない。アスターロ教の幹部達なんか、そのいい例だ。奴らは表立って活動してはいなかったが、その実力はSランクを優に越えていた」

「なるほど」

「お前達もそうだろう?結局、いつどんな強敵が現れるかなど分からない。警戒しておくに越したことはない」

「で、ではどのような対応を?」

「とりあえず、静観だ。相手の出方次第でこちらも動きを変えればいい。それまでは今まで通りの活動を続けていく」

「かしこまりました」

「ではくれぐれも気を付けて行動しろ。なるべく1人行動は避け、最低でも2人1組で動くようにしろ。他の者にもそう伝えておけ」

「仰せのままに」

「さて……………これから忙しくなるぞ」
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