俺は善人にはなれない

気衒い

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第10章 セントラル魔法学院

第186話 準々決勝

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竜闘祭1日目は準々決勝が行われる。5つの学院で合わせて16チームがトーナメント方式で戦うことになるのだが、その際の組み合わせは全てランダムである。その為、同じ学院のチーム同士がぶつかるなんてことはザラである。会場は都市の中心にある大きな闘技場が使用され、そこでは約1000人の観客に見守られながら、舞台上で試合が繰り広げられていくことになる。初日は全8試合が行われることになり、この時点で観客席は満員になる。中には遠くの国からわざわざ有望な者をスカウトしようと観に来ている者や有名クラン・パーティーの冒険者が興味本位でやってくるパターンもある。いずれにせよ、竜闘祭が注目されていることに変わりはない。ここに参加する学院の生徒達にとっても将来、冒険者や国の兵士となった時の為に今の内から自分達の力を誇示する絶好の機会。皆が皆、やる気に満ち溢れていた。そんな中、シンヤが受け持つクラスの生徒達はというといつも通りの平常運転だった。

「これがトーナメントの組み合わせだ」

「へ~……………とは言われましても全然ピンときていないんですけどね」

「まぁな。有名な冒険者でもなければ、学院の生徒の名が知れ渡るなんてことはまず、ないからな」

「ですね」

「とは言っても毎年どこの学院が強いとかはあるんだろ?」

「はい。ですが、それはあくまでも生徒の中でレベルが高い者が多くいるというだけです。先生達が見ている世界の一端に触れた僕達にとって、そんなのは団栗の背比べ………………」

「おい」

「あ、すみません!」

「分かっているとは思うが絶対に油断はするなよ。どんな相手に対しても常に警戒し、必要とあれば確実に叩き潰す。これを念頭に置いて、動け」

「「「「「はい!!!!!」」」」」

「じゃあ、初戦行ってこい。俺達のチームは運良く1試合目からだから、早く終わればその分、時間ができるぞ。その際は自由行動で好きなように動いて構わん」

「「「「「ありがとうございます!!!!!」」」」」





――――――――――――――――――





「お前らが相手か。こりゃ、ラッキーだったな。なんせ、あの年々、落ちぶれていってるセントラル魔法学院だ」

「おい、言ってやるなよ。試合前から傷付けて、どうする。そういうのは試合が始まってからにしろよ。もちろん、言葉の刃じゃなくて本物のでな」

「お前、上手いこと言うな!」

セーラ達の前で馬鹿騒ぎをしている対戦相手はアミル学院の生徒達である。学院からはほとんどが各学年につき、1クラスを1チームとして選出している。しかし、実際に戦うのはクラスメイト全員ではない。1試合において出場できるのは上限20名までとなっている為、非常にバランスの良い采配が期待される。かくいう俺達も決勝まで進むことを考えて全員がちゃんと選ばれるようにメンバーを決めたつもりだ。

「ただいまより、準々決勝の第1試合を行います。対戦するのはセントラル魔法学院のチーム"黒椿"とアミル学院のチーム"宝山"だ!それでは両チーム、正々堂々と悔いのないように戦うこと!いざ、尋常に……………始め!」

司会進行の合図と共に始まった第1試合。まず最初に動き出したのはチーム"黒椿"の方だった。

「「「「「大流水ウォーター・フロー」」」」」

5人が同じ水魔法を一斉に発動し、相手チームに向かって大洪水を起こした。少々勢いがつき過ぎたのか、若干床に亀裂が走った気がしなくもないがそんなことは俺達が気にすることではない。今、見るべきところは相手チームがどうなっているのかだ。

「お、おい!これ何とかしろよ!」

「な、何とかってどうやってだよ!」

「知らねぇよ!とりあえず、適当な魔法でも…………」

慌てていた、それも非常に。

「「「「"大嵐テンペスト"」」」」

だが、そんなのはお構いなしとばかりに立て続けに魔法を放つチーム"黒椿"。この時点で勝敗は決まったようなものだが審判からの判定がない為、またもや別の魔法を放とうとする"黒椿"。ちなみにセーラを含めた前衛役は後衛を守る為に待機状態で取りこぼしの相手が向かってこないかを警戒している。

「「「「"氷の世界フリージング"」」」」

今度は相手チーム全体を氷漬けにする意図の魔法が放たれた。チラリと審判の方を見ると先程までのあり得ない光景に口をポカンと開けて立ち尽くしていたようだが、これ以上はまずいと判断したのか、試合終了の合図が出された。

「そ、そこまで!これ以上の継続は困難と判断し、終了とさせて頂きます!結果、この試合の勝者はチーム"黒椿"です!おめでとうございます!」

直後、会場全体が大きく震えた。審判の合図のタイミングが良かったのか、相手チームに迫っていた氷は彼らのすぐ目の前で止まり、氷漬けだけはかろうじて免れたようだった。しかし、彼らの表情は真っ青になっており、どうやらそれは寒さだけのせいではないようだった。
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