俺は善人にはなれない

気衒い

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第10章 セントラル魔法学院

第164話 選抜

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「待たせてしまって悪かった。それと再びのご足労、感謝する」

「いえいえ。依頼を吟味し、それを受けるかどうか判断するにはいくばくか時間が掛かりましょう」

「そう言ってくれるとありがたい。っと自己紹介がまだだったな。俺はシンヤ・モリタニ。冒険者をしている者だ」

「私はカンパル王国セントラル魔法学院の理事長、ネバダでございます。この度はこちらの依頼内容に目を通して頂き、誠にありがとうございます」

「…………まだ了承するとは言っていないんだが?」

「シンヤ様は世界を救った英雄であらせられます。そのような方のお時間を頂戴しているのですから、感謝の思いが募るのは当然でごさいます。ましてや、あなたほどの方であれば、依頼は連日連夜、自然と舞い込んでくるでしょう?わざわざ時間が掛かる面倒臭い依頼など受ける必要がないはず。なのに私の依頼には目を通して頂いた…………これがどうして喜ばずにいられましょう」

「この時点でこれなら、俺の返事を聞いた後は一体どうなるんだ?」

「え!?と、と、ということは…………」

「ああ」

そこで軽く息を吸い込んだシンヤはこう言った。

「この依頼、受けさせてもらおう」




――――――――――――――――――――





「全員、いるな?」

シンヤはクランハウスの会議室に集まったメンバー達を見渡してから、そう言った。帰還パーティーがあってから、まだ1週間ほどしか経っておらず、特別な依頼を受けてどこかへ行ったり、ふらっと別の街へ赴いたりするということもなかった為、全員がこうして集まることができた。

「再び集まってもらって悪いな。今日は皆に伝えたいことがある」

シンヤのその言葉にザワザワしだす会議室。期待と不安が半々な心理状態の中、彼らは次の言葉を待った。

「俺がフォレスト国に行っている間にとある依頼が舞い込んできた。内容を確認するとこれまた別の地へと向かう依頼でな。ここから北へ馬車で5日といったところか。場所はカンパル王国という。もし、これを受けるとなると前回同様、軽い旅も兼ねた依頼になりそうだ」

「シンヤさんはお受けするつもりですか?」

アスカの直接的な問いにシンヤはハッキリと頷いた。

「ああ。そして、もう一緒に行くメンバーも選出してある」

その瞬間、待ってましたと言わんばかりに会議室内が沸いた。"今度こそは"と意気込む者がほとんどである。

「まずは俺。それから、ティアとサラ。ちなみに2人の代わりはカグヤとイヴに務めてもらうから、そのつもりで」

「お選び下さり光栄です」

「べ、別に嬉しい訳ではなくてよ」

「よっしゃー!頑張るぞ!」

「ここは妾がストッパーにならねば」

「次に幹部の方から発表だ。これは前回同行しなかったメンバーでノエ・アスカ・ラミュラ・スィーエル・レオナ・ニーベルだ」

「やった」

「うわぁ~選ばれました!」

「やっとシンヤ殿をお護りできる」

「全く、待ちくたびれたデス」

「旅、楽しみなの」

「ふぅ、ここは唯一の常識人枠である僕がしっかりしないとな」

「最後に組長と組員だが……………まずは組長から。クーフォ・オウギ・フェンド・ケープ」

「あっ、私だ!ありがとうございます!」

「必ずや、お役に立ってみせまする」

「組織の壊滅ならば任せて下さい、シンヤ様!」

「シンヤ様の為、いつでも剣となり盾となりましょう」

「なんか後半、物騒だな。まぁ、いいや。次は組員だが、前回と違いこの枠には副長も一部含まれている。それではいくぞ……………蒼組からアルス・エレナ・カナ・サナ。一家族まるごとだ」

「よっし!精一杯、頑張ります!」

「ありがとうございます。初めての旅行、楽しみです」

「「旅行、楽しみ!!」」

「喜んでもらえて何よりだ。以上俺を含めた17人が今回のメンバーだ。選ばれなかった者達については本当にすまないと思うがまたいずれ機会はある。その時を待って欲しい」

「あの~1つよろしいでしょうか?」

シンヤは一旦区切ると最後の締めに入ろうとした。しかし、そこで急に質問がきた為、それを中断し、質問者に向き直った。

「いいぞ。何だ?」

「結局、依頼って何なんでしょうか?」

その時、シンヤとティア・サラを除く全員が"あっ"という表情をした。皆、選ばれるかどうかに重きを置いて、依頼内容を重視していなかったのだ。冒険者にとって大事な依頼内容の確認を忘れるほど別の部分に熱中していた証拠である。

「それは……………」

シンヤは一旦俯き、再度顔を上げると全員を見渡してこう言った。



「特別講師だ」
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