俺は善人にはなれない

気衒い

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第9章 フォレスト国

第152話 鬼人族の隠れ里

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「この辺りか?」

「ああ、そうだ」

現在、俺達はフリーダムへ帰還する最短ルートから少し外れた場所にいた。そこはローズの故郷"スニク"とフォレスト国との間に位置しているが行きのルート上にはなく、少し横に逸れた場所だった。何故、こんなところにいるのかというとどうやら、この辺りにカグヤの故郷があるらしいのだ。

「………カグヤの育った場所か」

「ああ。とは言ってもローズのとこみたいに侵入者除けで隠れ里になってるけどな……………っと着いたぞ。ここが入り口だ」

「なるほど。霧と魔法で大抵の奴なら気が付かないようになってるな」

「まぁ、アタシらには効かないけどな」

「"スニク"同様、俺が結界を張って強化しておくから大丈夫だ」

「ありがとう」





――――――――――――――――――――






「ん?おい、誰か来るぞ」

「あれ?今日って誰か里の外に出たっけ?」

「おいおい。俺達鬼人族はそうそう里の外になんか出られないだろ。最後に出た奴も2週間以上前だ。そいつも無事に帰ってきてる」

「そうだよなぁ。じゃあ、アイツらは…………何者だ?」

「ん?ちょっと待て。先頭にいるのカグヤじゃないか?」

「本当だ!ある日突然消えたあの……………お、俺、急いで長老代理に報告してくる!」

「あ、ああ頼んだ」






「ゲンさん、久しぶり」

「お、お、お前…………本当にカグヤか?カグヤなのか?」

門番らしき人物に挨拶をするカグヤ。その顔はとても優しく穏やかなものだった。俺達はというと後ろに控え、そんな2人のやり取りを見守っていた。

「急にいなくなってごめん。言い訳になっちゃうんだけど…………」

「………ああ」

そこから、カグヤが今日に至るまでの過程を話した。門番はあまりの内容の濃さに表情がコロコロ変わり、しまいには

「"朱鬼"ってお前のことだったのか!」

とまで叫んだ。そして、一通り説明したところで俺の方をチラッと見た。

「そうか。それは大変だったな。とにかく無事に生きていてくれて嬉しいよ」

「うん。今まで心配かけてごめん」

「それは里の連中に言ってやってくれ。俺はただただ嬉しいって気持ちしかないからな。そんなことより、そちらがまさか、あの有名な英雄の…………」

「ああ。アタシが所属しているクランのマスターだ」

「英雄という呼び方はよしてくれ。シンヤ・モリタニだ。冒険者をしている」

「どうも、俺は門番のゲンだ。じゃあ、名前で呼ばせてもらっても?」

「ああ。呼び捨てで頼む」

「分かった」

「この度はカグヤの帰郷に付き合わせてもらった。こんな大人数で突然押しかけてしまい、すまない」

「いやいや!どこぞの素性が知れない奴じゃないんだ。シンヤ達なら大歓迎だ。そんなことよりもカグヤが世話になったみたいで」

「それこそ、里の連中に言ってもらうさ」

「お前、言うね!気に入ったぞ!」

「これ、手土産だ。フォレスト国の名産品らしい。きっと気に入ってもらえると思う」

「おいおい、これって"フォレストフィッシュ"じゃねぇか!何故かフォレスト国周辺の湖でしか獲れないって噂の……………」

「あと、これクランのメンバーが作った酒だ。お前ら、好きだろ?」

「おいおい、両方とんでもない量だな。これこそ、俺じゃなくて里の連中に見せてやってくれよ!」

「ああ、後でそうするぞ」

「じゃあ、何故ここで!?」

「お前のリアクションが面白いから」

「そんな理由かい!」

「…………そういえばお前ら、鬼人族って他の種族に対して恐怖や敵対心といった感情はないのか?こうやって普通に話しているが」

「ああ、それはないな。お前が言っているのってあれだろ?昔、俺達鬼人族が悪さをしてきたから、迫害を受けるかもしれない。そこから来る感情ってやつだろ?」

「ああ」

「それは本当にないな。俺達全員は覚悟を決めている。先祖がその昔何をやらかしてきたのか知らないがその分のツケが返ってくるのは仕方がない。それは当然のことだと思うし、それで苦しんだ方達には誠心誠意お詫び申し上げたいくらいだ」

「そうか」

その後、他のクランメンバーやリース、セバス(リースと共に国を飛び出した)とも挨拶を交わしたゲン。どうやら、里に入るまでにやることがあるらしく少しだけ待って欲しいと言われた為、お互いに軽く話をして暇を潰していると

「す、すまんお客人達!待たせたな!」

息を切らせながら、1人の男が別の門番と共にやってきたのだった。
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