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第9章 フォレスト国
第135話 従者の心、主人知らず
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「ふんっ、今日は最悪な日だな。なんせ朝からお前の顔を見てしまったのだからな」
「それは俺の台詞だ。それにしても相変わらず、取り巻きを何人も連れて、いいご身分だな」
「それはお前も一緒だろう。いいから、さっさとそこをどけ。俺が通れないだろ」
「お前の方こそ、そこをどけ。こういったところで人に優しくする余裕を見せておけば、後継者に近付くんじゃないか?」
「俺が優しく接するのは国民だけだ。間違ってもお前なんかじゃない」
「国民だけだと?笑わせるな。武装国家を作るのに死ぬほどこき使おうとしている人間が言う台詞か?お前はお前と周りの人間さえ、よければそれでいいんだろ」
「さっきから、俺に言ってる台詞が全てそのままお前に返っていってるぞ。何が法治国家だ。全て、お前の自己満足じゃないか」
フォレスト国の王城にて、朝早くから運悪く鉢合わせしてしまった第一王子と第二王子。いくら周りの者が気を遣って毎日、鉢合わせしないよう配慮していたとしてもさすがに同じ場所に住んでいれば、接触は避けられない。しかし、いくら不可避の事実だとしても2人の取り巻きのほとんどはおろおろと困ることしか出来なかった…………側近である者達を除いては。
「「御二方共、よろしいでしょうか?」」
「「ん?」」
「お話の最中、失礼致します。発言をよろしいでしょうか?」
「ああ、構わない」
「ありがとうございます……………私が言いたきことは1つにございます。ここでご歓談をされるのはやめた方がよろしいかと。それはまたの機会にでも行って、今はすぐに取り掛からねばならない仕事が沢山ございます。それにご尽力なされた方が賢明かと」
「私も全く同じ意見にございます。これでは王城にいらっしゃる者も御二方のことが気になって仕事が手につかなくなってしまいます。なんせ、御二方の言い争いの演技が上手すぎてパフォーマンスと化してしまっています。周りの者が魅入られてしまうのは無理なからぬことでそれとこれが御二方にとってのご歓談の一種であることはとっくに周知済みとなっておられます。ここは1つ。そのサービス精神をお抑えになって、本日の仕事に励まれては如何でしょうか?」
「…………うむ。一理ある。今日のところはひとまず、こんなもんだろう」
「…………仕事もかなり残っているしな。さっさと移動して取り掛かろう」
「「ホッ……………良かった(ボソッ)」」
こうして、王城での日常が始まっていくのだが、いつもはこの2人が鉢合わせをすること自体が非常に少ない。稀にこういった状況になり、その度に周りの者が肝を冷やすのだがそんなことは王子達が知る由もないし、知ったところで何の関係もないのだ。側近達は常に思っていた。後継者の件から、険悪な関係になってしまったが昔のようにはなれないものだろうか。あの仲良く和気藹々と3人で遊んでいたあの頃のようには…………だが、そんなことは不可能に近い。こうして後継者という目の前の目標があり、思想が違う以上、分かり合うことは難しいのだ……………でも
「「もし、もしも……………この問題を解決できる者がいるのならば………………」」
その先は相当可能性の低い希望だった。一体、どこの誰がこんな面倒臭い王族の問題にわざわざ首を突っ込んで解決などしてくれようか……………しかし、そんな希望に縋りたくなってしまうほど、彼らは悩んでいたのであった。
「それは俺の台詞だ。それにしても相変わらず、取り巻きを何人も連れて、いいご身分だな」
「それはお前も一緒だろう。いいから、さっさとそこをどけ。俺が通れないだろ」
「お前の方こそ、そこをどけ。こういったところで人に優しくする余裕を見せておけば、後継者に近付くんじゃないか?」
「俺が優しく接するのは国民だけだ。間違ってもお前なんかじゃない」
「国民だけだと?笑わせるな。武装国家を作るのに死ぬほどこき使おうとしている人間が言う台詞か?お前はお前と周りの人間さえ、よければそれでいいんだろ」
「さっきから、俺に言ってる台詞が全てそのままお前に返っていってるぞ。何が法治国家だ。全て、お前の自己満足じゃないか」
フォレスト国の王城にて、朝早くから運悪く鉢合わせしてしまった第一王子と第二王子。いくら周りの者が気を遣って毎日、鉢合わせしないよう配慮していたとしてもさすがに同じ場所に住んでいれば、接触は避けられない。しかし、いくら不可避の事実だとしても2人の取り巻きのほとんどはおろおろと困ることしか出来なかった…………側近である者達を除いては。
「「御二方共、よろしいでしょうか?」」
「「ん?」」
「お話の最中、失礼致します。発言をよろしいでしょうか?」
「ああ、構わない」
「ありがとうございます……………私が言いたきことは1つにございます。ここでご歓談をされるのはやめた方がよろしいかと。それはまたの機会にでも行って、今はすぐに取り掛からねばならない仕事が沢山ございます。それにご尽力なされた方が賢明かと」
「私も全く同じ意見にございます。これでは王城にいらっしゃる者も御二方のことが気になって仕事が手につかなくなってしまいます。なんせ、御二方の言い争いの演技が上手すぎてパフォーマンスと化してしまっています。周りの者が魅入られてしまうのは無理なからぬことでそれとこれが御二方にとってのご歓談の一種であることはとっくに周知済みとなっておられます。ここは1つ。そのサービス精神をお抑えになって、本日の仕事に励まれては如何でしょうか?」
「…………うむ。一理ある。今日のところはひとまず、こんなもんだろう」
「…………仕事もかなり残っているしな。さっさと移動して取り掛かろう」
「「ホッ……………良かった(ボソッ)」」
こうして、王城での日常が始まっていくのだが、いつもはこの2人が鉢合わせをすること自体が非常に少ない。稀にこういった状況になり、その度に周りの者が肝を冷やすのだがそんなことは王子達が知る由もないし、知ったところで何の関係もないのだ。側近達は常に思っていた。後継者の件から、険悪な関係になってしまったが昔のようにはなれないものだろうか。あの仲良く和気藹々と3人で遊んでいたあの頃のようには…………だが、そんなことは不可能に近い。こうして後継者という目の前の目標があり、思想が違う以上、分かり合うことは難しいのだ……………でも
「「もし、もしも……………この問題を解決できる者がいるのならば………………」」
その先は相当可能性の低い希望だった。一体、どこの誰がこんな面倒臭い王族の問題にわざわざ首を突っ込んで解決などしてくれようか……………しかし、そんな希望に縋りたくなってしまうほど、彼らは悩んでいたのであった。
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