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第9章 フォレスト国
第127話 故郷
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「ここか?」
「ええ」
フォレスト国まであと半分というところで俺達は車を止めた。理由はローズの故郷がこの辺りにあるということだったからだ。出発前にそのことはここにいる全員が知っていたし、一度寄るということも決めていた。だから、そのつもりで車を降りて進もうとしたのだがローズはどこか浮かない顔をしていた。
「ねぇ、本当に私なんかの為にいいの?」
「当たり前だろ。ちゃんとリースに許可も得ている。なぁ、いいよな?」
「当然だよ。故郷は大事にした方がいい。長い間、帰ってなかったのなら尚更だ。この世界ではどんな危険が待ち受けているか分からないんだ。なくなって後悔してからでは遅いんだよ?」
「ほら、リースもこう言ってる。それにお前らも賛成なんだろ?」
「はい!ローズさん、迷惑とかは考えずに素直になりましょう!」
「そうです。故郷に残してきた家族達の心配をするのはおかしなことではありません」
「大姉貴!俺達はどこまでもついていきますぜ!」
「ライアンの言う通りです。それに他の里に興味もありますし…………」
ネネ・マヤ・ライアン・レーンがそれぞれの気持ちを告げるとローズはポカンとなりながらも微笑んだ。
「全く、アンタ達ったら……………こっちがネガティブなことを考えてるのが馬鹿らしくなってくるわ」
「だろ?お前の悪い癖だぞ?俺達と出会ってから、だいぶ自信がついて明るくなってはいるが根底にはそういう気持ちがあるってことだ。初めて出会った時に言ったはずだ。お前は俺達の仲間であり、家族だ。だから遠慮はするな。それにお前が嫌がってもいずれはここに来るつもりだった。挨拶も兼ねてな」
「え、そうなの?」
「ああ。だから気にするな」
「…………そういうことなら、分かったわ」
「よし、それじゃあ行くか」
――――――――――――――――――――
「ん?お、おい!向こうから、見たこともない他種族の奴らがやって来てないか?」
「ん?……………ほ、本当だ!な、何故だ!?ここは結界で覆われた我らの隠れ里。おいそれと部外者が侵入なぞ、できるはずがないのだが」
「理由などはどうでもいい。と、とにかくここを通す訳にはいかん!ここは俺が抑えておくから、お前は長老に急ぎ報告をしてきてくれ!」
「ああ、分かった!!」
「お前ら、ここで止まれ!そして、何者なのか名乗れ!」
「俺はシンヤ。冒険者をしている者だ。そして、こいつらは俺の仲間達だ」
「シンヤ?どこかで聞いた名だが…………まぁ、いい。それで目的は何だ?」
「仲間の1人にここが故郷だという奴がいてな。目的地へと向かう途中でちょうどいいから寄ってみたんだ」
「は?ここが故郷だと?何を馬鹿なことを。今まで我々は他種族から忌み嫌われ排除されてきた。それも純粋なエルフとは肌の色が違い、異端だというただそれだけの理由でだ!そんな中身を知ろうとせず、外見だけで判断されてきた我々が外の世界で暮らしていける訳がなかろう!それもこれだけの他種族に囲まれて、お仲間ごっこなど……………虫唾が走るわ!!」
「これを見てもそんなことが言えるのか?」
「ん?何だ?」
俺は近くにいた者が被っていたフードを下ろした。そこで露わになったのは今、まさに門番がこの場にいるはずがないと断言した種族、ダークエルフであった。
「なっ!?」
「久しぶり、ジェイドさん。元気そうで何よりだわ」
「お、お、お前は………………ローズか?」
「そうよ。あの時は勝手に居なくなってごめんなさい。おそらく、あなたに責任が及んだでしょ?何でもっと注意深く見ていなかったんだって……………」
「い、いや、そんなことはないが……………それにしても一体、今までどこでどうしていたんだ?」
「ワタシもまだまだね。隠れ里とはいえ、こんなところでさえ、名が広がっていなかったなんて……………"黒天の星"って聞いたことはない?」
「それって、邪神を倒した英雄が所属しているクランだろ?今では傘下までつけるぐらい拡大しているらしいが」
「ええ。ワタシはそこの幹部よ。"十人十色"の1人」
「ちょっと待て。"十人十色"のローズって……………まさか、"灰剋"のか?それって、アスターロ教とかいう邪神復活を企んだイカれた連中の幹部と一対一で戦った内の1人じゃないか!?」
「そこまで知っていたのに何故、ワタシの動向を知らなかったの?」
「まさか、ローズというのがお前のことだとは思わなかったんだよ!ダークエルフは他種族とは相容れない。本来はそのはずなんだ。だから」
「だから?」
「……………こうして目の前にした今でもお前が件の人物だとは到底思えない」
「え、どうして!?」
「お前も分かっているだろ?それほど我々は他種族から散々な扱いを受けてきたんだ。その結果、こうやって隠れる形で暮らしていくしかなくなった。お前も外では酷い目に遭ってきたはずだ」
「……………」
「悪いが俺はこいつらのことをとてもじゃないが信用できない。お前が洗脳でもされているか、もしくは騙されているとしか思えないんだ。どうせ、ここへもお前を脅迫して連れてこさせたんだろ」
「そんな!?ち、違うわ!この人達はワタシの仲間であり、家族なのよ?そんなことしていない」
「いいや、違う!お前をダシにして、我々から全てを奪っていこうと乗り込んできたに違いない!考えてもみろ!我々と他種族が仲良くなどできるはずがないだろ!なんて汚い奴らだ!おい、貴様ら!覚悟しろ!今すぐここから追い出してやる!」
「や、やめて!ワタシの大切な人達に酷いこと言わないで!武器も下ろして!お願いよ!」
「いいや、やめない!いくらローズの頼みといえど、こればっかりはな!おい、今すぐ薄汚い貴様らに目にモノ見せてやる!無事に帰れると思……………」
「やめんか、馬鹿タレ!!」
その時、怒号が辺り一帯に響き渡った。これには門番も驚いて、思わず動きを止めるしかなかった。
「ほぅ、ようやくお出ましか」
「え…………」
俺が放った呟きが聞こえていたのかは分からないがその直後、門番はたった一言だけを発するので精一杯のようだった。俺の視線の先にいたのは皺がいくつも刻まれ、どこか重厚な雰囲気を漂わせる1人のダークエルフだった。
「ええ」
フォレスト国まであと半分というところで俺達は車を止めた。理由はローズの故郷がこの辺りにあるということだったからだ。出発前にそのことはここにいる全員が知っていたし、一度寄るということも決めていた。だから、そのつもりで車を降りて進もうとしたのだがローズはどこか浮かない顔をしていた。
「ねぇ、本当に私なんかの為にいいの?」
「当たり前だろ。ちゃんとリースに許可も得ている。なぁ、いいよな?」
「当然だよ。故郷は大事にした方がいい。長い間、帰ってなかったのなら尚更だ。この世界ではどんな危険が待ち受けているか分からないんだ。なくなって後悔してからでは遅いんだよ?」
「ほら、リースもこう言ってる。それにお前らも賛成なんだろ?」
「はい!ローズさん、迷惑とかは考えずに素直になりましょう!」
「そうです。故郷に残してきた家族達の心配をするのはおかしなことではありません」
「大姉貴!俺達はどこまでもついていきますぜ!」
「ライアンの言う通りです。それに他の里に興味もありますし…………」
ネネ・マヤ・ライアン・レーンがそれぞれの気持ちを告げるとローズはポカンとなりながらも微笑んだ。
「全く、アンタ達ったら……………こっちがネガティブなことを考えてるのが馬鹿らしくなってくるわ」
「だろ?お前の悪い癖だぞ?俺達と出会ってから、だいぶ自信がついて明るくなってはいるが根底にはそういう気持ちがあるってことだ。初めて出会った時に言ったはずだ。お前は俺達の仲間であり、家族だ。だから遠慮はするな。それにお前が嫌がってもいずれはここに来るつもりだった。挨拶も兼ねてな」
「え、そうなの?」
「ああ。だから気にするな」
「…………そういうことなら、分かったわ」
「よし、それじゃあ行くか」
――――――――――――――――――――
「ん?お、おい!向こうから、見たこともない他種族の奴らがやって来てないか?」
「ん?……………ほ、本当だ!な、何故だ!?ここは結界で覆われた我らの隠れ里。おいそれと部外者が侵入なぞ、できるはずがないのだが」
「理由などはどうでもいい。と、とにかくここを通す訳にはいかん!ここは俺が抑えておくから、お前は長老に急ぎ報告をしてきてくれ!」
「ああ、分かった!!」
「お前ら、ここで止まれ!そして、何者なのか名乗れ!」
「俺はシンヤ。冒険者をしている者だ。そして、こいつらは俺の仲間達だ」
「シンヤ?どこかで聞いた名だが…………まぁ、いい。それで目的は何だ?」
「仲間の1人にここが故郷だという奴がいてな。目的地へと向かう途中でちょうどいいから寄ってみたんだ」
「は?ここが故郷だと?何を馬鹿なことを。今まで我々は他種族から忌み嫌われ排除されてきた。それも純粋なエルフとは肌の色が違い、異端だというただそれだけの理由でだ!そんな中身を知ろうとせず、外見だけで判断されてきた我々が外の世界で暮らしていける訳がなかろう!それもこれだけの他種族に囲まれて、お仲間ごっこなど……………虫唾が走るわ!!」
「これを見てもそんなことが言えるのか?」
「ん?何だ?」
俺は近くにいた者が被っていたフードを下ろした。そこで露わになったのは今、まさに門番がこの場にいるはずがないと断言した種族、ダークエルフであった。
「なっ!?」
「久しぶり、ジェイドさん。元気そうで何よりだわ」
「お、お、お前は………………ローズか?」
「そうよ。あの時は勝手に居なくなってごめんなさい。おそらく、あなたに責任が及んだでしょ?何でもっと注意深く見ていなかったんだって……………」
「い、いや、そんなことはないが……………それにしても一体、今までどこでどうしていたんだ?」
「ワタシもまだまだね。隠れ里とはいえ、こんなところでさえ、名が広がっていなかったなんて……………"黒天の星"って聞いたことはない?」
「それって、邪神を倒した英雄が所属しているクランだろ?今では傘下までつけるぐらい拡大しているらしいが」
「ええ。ワタシはそこの幹部よ。"十人十色"の1人」
「ちょっと待て。"十人十色"のローズって……………まさか、"灰剋"のか?それって、アスターロ教とかいう邪神復活を企んだイカれた連中の幹部と一対一で戦った内の1人じゃないか!?」
「そこまで知っていたのに何故、ワタシの動向を知らなかったの?」
「まさか、ローズというのがお前のことだとは思わなかったんだよ!ダークエルフは他種族とは相容れない。本来はそのはずなんだ。だから」
「だから?」
「……………こうして目の前にした今でもお前が件の人物だとは到底思えない」
「え、どうして!?」
「お前も分かっているだろ?それほど我々は他種族から散々な扱いを受けてきたんだ。その結果、こうやって隠れる形で暮らしていくしかなくなった。お前も外では酷い目に遭ってきたはずだ」
「……………」
「悪いが俺はこいつらのことをとてもじゃないが信用できない。お前が洗脳でもされているか、もしくは騙されているとしか思えないんだ。どうせ、ここへもお前を脅迫して連れてこさせたんだろ」
「そんな!?ち、違うわ!この人達はワタシの仲間であり、家族なのよ?そんなことしていない」
「いいや、違う!お前をダシにして、我々から全てを奪っていこうと乗り込んできたに違いない!考えてもみろ!我々と他種族が仲良くなどできるはずがないだろ!なんて汚い奴らだ!おい、貴様ら!覚悟しろ!今すぐここから追い出してやる!」
「や、やめて!ワタシの大切な人達に酷いこと言わないで!武器も下ろして!お願いよ!」
「いいや、やめない!いくらローズの頼みといえど、こればっかりはな!おい、今すぐ薄汚い貴様らに目にモノ見せてやる!無事に帰れると思……………」
「やめんか、馬鹿タレ!!」
その時、怒号が辺り一帯に響き渡った。これには門番も驚いて、思わず動きを止めるしかなかった。
「ほぅ、ようやくお出ましか」
「え…………」
俺が放った呟きが聞こえていたのかは分からないがその直後、門番はたった一言だけを発するので精一杯のようだった。俺の視線の先にいたのは皺がいくつも刻まれ、どこか重厚な雰囲気を漂わせる1人のダークエルフだった。
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