俺は善人にはなれない

気衒い

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第9章 フォレスト国

第115話 秘密

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僕がシンヤの元を訪れてからの毎日は常に慌ただしいものだった。お酒造りや武器・防具作製の見学、戦闘訓練の観戦、街の復興や仕事のお手伝いなど……………実に様々なことをした。とは言っても嫌々ではなく、むしろどれも新鮮で楽しいことだらけだった。これらは今までお城の中で生活していては決してできないことばかりでとてもいい経験になった。と同時にこれまでの自分がいかに世間知らずで我儘であったかを思い知らされた。自分達が今もこうして何不自由なく暮らしていけているのも全ては色々な人の支えがあってのものでそこにはどれだけの苦難と手間が掛かっているのかを初めて目の当たりにしたのだ。あらゆる理不尽が襲い掛かろうと決してへこたれず前を向いて頑張ろうとする街の人々を見ていると自分まで元気づけられる。その結果、毎日が驚きと発見の連続でとても充実したものになった。それもこれも全てはシンヤのおかげだ。彼と関わっていなければ……………彼に指名依頼を引き受けてもらい、僕をクランハウスに置くことを了承してもらえていなければ、このようなことにはなっていなかったはずである。だから、彼にはとても感謝しているし、尊敬の念も抱いている。世界を滅亡せんとする大いなる敵を打ち倒した英雄………………圧倒的な実力とカリスマ性を兼ね備え、常に先を見続けているからこそできる行動力を持つ。知謀にも長け、決して油断や過信をせず、冷静に物事を判断する姿勢からはこれまでに相当な修羅場をくぐってきたことが窺える。いずれにせよ、僕とは環境も能力も思考も何もかもが異なっているということは確かだ。これだけ良いところばかりでは欠点などないのではないか?そう思ってしまうのも不思議ではない………………とたった今、この時まではそう確かに思っていた。しかし………………

「あわわわわっ!?な、な、何でここにシンヤが!?」

「ん?風呂に入ろうと思って来たんだが?ってか、大浴場の更衣室に来る用事なんか、それしかないだろ」

「い、いや、それもそうだけど……………」

「どうしたんだ?ってか、お前も入ろうとしていたんだな?」

「う、うん」

「そっか。この時間は俺達2人しかいないから実質、貸切みたいなもんだな」

「そ、そ、そうだね~…………」

「何かさっきから様子がおかしくないか?せっかくなんだから、2人での風呂を楽しもうぜ」

「え!?ぼ、僕も一緒に入るの!?」

「当たり前だろ。だから、さっさと服を脱げ。俺はもうとっくに全裸だぞ」

「う、うわっ!?ほ、本当だ!?いつの間に………………それとす、凄くいい身体…………」

「柔な鍛え方はしてないからな」

「そうなんだ………………あれ?でも所々、何か傷のようなものが……………」

「…………気のせいだ」

「あ、あれ!?で、でも」

「気のせいだ。これ以上は言わせるなよ?」

「わ、分かった……………ごめん」

「別にいい。そんなことよりも往生際が悪いぞ。いいから、さっさと脱いで入るぞ」

「あっ!?ち、ちょっと!?」

結局、僕はその後、シンヤの早技によって無理矢理、服を脱がされ腕を引っ張られて、大浴場まで連れて行かれてしまった。

「シ、シンヤ!や、やめて!」

しかし、咄嗟に切羽詰まった声を出した僕にシンヤは軽く驚いてから、振り返ってこう言った。

「すまん!そこまで嫌がるとは思ってな……………お、おい。リース、お前……………」

「うぅ……………」

そこから、たっぷりと10秒程溜めてシンヤはこう続けた。

「お前………………女だったのか!?」

シンヤの欠点……………それはもしかしたら、圧倒的なタイミングの悪さと鈍感さ。その2つかもしれなかった。
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