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第8章 動き出す日常
第102話 軍団
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「久しぶり。ってか、何だ?この面子は」
フリーダムにあるクランハウスの会議室。そこに集まっていたのは9人の男達だった。見知った顔もいれば全然知らない顔もいる。その共通点は全く見当たらず、皆どこか緊張感を漂わせていた。こちらは一応何かあった時の為にとティアとサラを引き連れてきていたから、それが余計に彼らを驚かせてしまったのかもしれない。まぁ、そんなの俺の知ったことではないが……………
「あの日、俺達4人はブロンが解放された後、それぞれ自分達のクランメンバーがいるところへと戻って一緒に教徒を殲滅していたんだ。で、お前が邪神を倒したと聞いて、少し経って落ち着いたら、一言礼を言いたいのとそれからとある頼みがあって、ここまでやって来たんだが……………門の前でこいつらとバッタリ出くわしてな。話を聞いたら、どうやら全員同じ目的らしくて」
「で、ここに集まっていると」
「ああ。だから、まずは礼を言わせてくれ。この度はブロンを救ってくれて、本当にありがとう」
「「「ありがとう」」」
「そんなの当然だろ。お前ら"四継"があいつを父親のように思う気持ちはよく分かるからな……………で、お前らは?確か、対抗戦で戦った奴らだろ?"サンバード"、"フォートレス"、"守護団"だっけ?」
「ああ、そうだよ。久しぶりだな。にしてもよく覚えてたな」
「お前らのことは何故か嫌いになれなかったからな」
「ふ、ふんっ。そうかよ」
「………で、どうしたんだ?」
「俺達も礼を言いに来た。今回はフリーダムを救ってくれて、ありがとよ。俺達はここを拠点にしてたからな。なくなったら困るところだった」
「「ありがとう」」
「何度も言うが俺は別にこの街の為だけに動いた訳じゃない。単純にあいつらと邪神が気に食わなかっただけだ」
「素直じゃねぇな。こっちがちゃんと感謝の気持ちを伝えた時ぐらい、ちゃんと受け取れってんだ」
「分かったよ…………で、あとはそこの2人だが」
「俺はクラン"威風堂々"のクランマスター、ボンドだ。以前、うちの者が"黒天の星"に無礼を働いたらしく、まずはその謝罪からさせてもらいたい。その節は本当にすまなかった」
「謝る必要はないだろ。おそらくそれ相応の対処をこちらもしている。だから、おあいこだ」
「そう言って頂けると助かる…………あとは礼も言いに来たんだ。お前らの行動に感化されて俺達の中にやる気のある者が出てきている。これはとても良い影響だ。ありがとう」
「先程の手前、感謝に関しては素直に受け取っておく。だが、覚えておけ。それは些細なキッカケに過ぎない。最終的にどうするかを決め行動に移すのは自分自身だ。だから、結果、急成長を遂げたのなら本当に凄いのは俺じゃなく、そいつ自身ってことになる」
「ああ、もちろんだ。ちゃんと本人の頑張りも評価し、適切な対応をするさ」
「そうか……………で、あとはお前だけか」
「申し遅れた。クラン"永久凍土"のクランマスター、フリーズだ。用件はボンドという男とほぼ同じだ。まずは以前、部下が迷惑をかけたことを謝らせてくれ。本当にすまなかった。それと今度は礼を言わせてくれ。本当にありがとう。お前達と関わっていなければ俺達は未だに自分達の過ちに気が付くことが出来なかった。俺達はお前達のおかげで生まれ変わることが出来たんだ。本当に感謝している。おかげであれから毎日がとても充実したものになった」
「いまいち状況がよく分からないが…………まぁ、いい。お前らも頑張っているんだな。ご苦労様」
それから全員の顔をゆっくりと見回した俺は最終的にここに来て最初に言葉を交わした男へと視線を向けて、こう言った。
「で?用件はこれだけじゃないんだろ?とある頼みがあるって言ってたからな」
「ああ。それなんだが…………」
「言いにくいことなのか?」
「ひょっとしなくても厚かましいお願いになってしまうからな。慎重に言葉を選ばなければ」
「別に思ったことをそのまま言ってくれて構わないぞ。お前らは直近の俺達を知って近付いてきたミーハー冒険者達とは訳が違うからな。そんな無碍な扱いはしないさ」
「そうか?じゃあ、単刀直入に言わせてもらう」
「ああ」
「俺達9つのクランを"黒締"いや、シンヤ……………お前の傘下に入れて欲しい」
「……………は?」
「やっぱり無理だよな?すまん。変なことを言って。忘れてくれ」
「いや、拒否からくる反応じゃなくて単純に意味が分からなかったんだが…………何だ?傘下って」
「ん?…………ああ、そうか!お前はランクこそ高いがまだ新人冒険者という扱いだったな。だからギルドで説明を受けてないのか」
「?」
「すまんすまん。一から説明させてもらう。通常、冒険者として活動する時は色々なパターンがあるよな?1人で依頼を受けていくソロ、6人までの編成がパーティー、7人以上の集まりがクランと……………だが、冒険者のランクがSに到達した者がマスターを務めるクランはお互いの合意の下、他のクランを従えることができるようになる。それがいわゆる傘下だ。この制度の説明に関しては冒険者歴が半年以上でなおかつSランクに到達した瞬間、ギルドでされることになっているんだがお前は色々と例外だからな。ってか普通はそんな短期間でSランクになんかなれねぇよ。おそらく、こんなことは想定していなかっただろうな」
「……………」
「で、ここからが大事なんだが傘下とその親玉クランは1つの共同体として見なされ、それは軍団と呼ばれる。これはとても大きな力を持った強固な組織となり、実際この世界にいくつもあるが、そのどれもがどこかの土地や地域を縄張りとして君臨している。ある程度力のある者も迂闊に手は出せず、抑止力としてはかなりの力を発揮しているがごく稀に軍団同士の抗争があったりもする。がしかし、基本的にはそんな争いごともなく、軍団を組織することに関しては特にデメリットはない………………と思うんだが、どうだろうか?」
「ん~別にいいか。俺達としてはこれ以上絡んでくる変な奴が減るに越したことはないからな。だろ?ティア、サラ」
「ええ。いいと思います。もし、やってみて合わなそうなら、すぐにでもやめればいいだけですし」
「仲間が増えるのは楽しそうですわ」
「だってさ……………ってか手続きはギルドでするのか?」
「ああ。その際に軍団名も決めなければならない。何度も手間を取らせて悪いな」
「構わん。それにしてもお前ら全員が俺の下につきたいなんてな……………逆に聞くが本当に大丈夫なのか?」
「お前は自分を過小評価しすぎている。それと冗談で俺達もこんなことは言わないぞ」
「そうか…………何か、ここのところ驚くことが多いな。この間のランク上げにしてもそうだし」
「あ、そういえばまだ言っていなかったな……………世界初のEXランク冒険者、おめでとう」
「ちっ、やっぱり噂が広まっていたのか」
「ああ。俺達も下で支える身として恥をかかせないよう精一杯頑張らねば」
「程々にな」
「ああ」
こうして俺は9つのクランを纏める大親分となった。またもや自分にとって大切なものが増えていく。それは嬉しさと同時に不安でもる。もしも失ってしまったら、はたまた壊してしまったら……………生きている限り、何が起きるかは分からない。物事に絶対はないのだ。いくら強くなってもそれは変わらない。だから、俺は満足しないのだ。どこまでいっても何を得ても一向に安心はできない。決して油断せず慢心せず、掴んだその手を離さないように俺は今日も生きていく……………失わせやしない。きっと守ってみせる。
フリーダムにあるクランハウスの会議室。そこに集まっていたのは9人の男達だった。見知った顔もいれば全然知らない顔もいる。その共通点は全く見当たらず、皆どこか緊張感を漂わせていた。こちらは一応何かあった時の為にとティアとサラを引き連れてきていたから、それが余計に彼らを驚かせてしまったのかもしれない。まぁ、そんなの俺の知ったことではないが……………
「あの日、俺達4人はブロンが解放された後、それぞれ自分達のクランメンバーがいるところへと戻って一緒に教徒を殲滅していたんだ。で、お前が邪神を倒したと聞いて、少し経って落ち着いたら、一言礼を言いたいのとそれからとある頼みがあって、ここまでやって来たんだが……………門の前でこいつらとバッタリ出くわしてな。話を聞いたら、どうやら全員同じ目的らしくて」
「で、ここに集まっていると」
「ああ。だから、まずは礼を言わせてくれ。この度はブロンを救ってくれて、本当にありがとう」
「「「ありがとう」」」
「そんなの当然だろ。お前ら"四継"があいつを父親のように思う気持ちはよく分かるからな……………で、お前らは?確か、対抗戦で戦った奴らだろ?"サンバード"、"フォートレス"、"守護団"だっけ?」
「ああ、そうだよ。久しぶりだな。にしてもよく覚えてたな」
「お前らのことは何故か嫌いになれなかったからな」
「ふ、ふんっ。そうかよ」
「………で、どうしたんだ?」
「俺達も礼を言いに来た。今回はフリーダムを救ってくれて、ありがとよ。俺達はここを拠点にしてたからな。なくなったら困るところだった」
「「ありがとう」」
「何度も言うが俺は別にこの街の為だけに動いた訳じゃない。単純にあいつらと邪神が気に食わなかっただけだ」
「素直じゃねぇな。こっちがちゃんと感謝の気持ちを伝えた時ぐらい、ちゃんと受け取れってんだ」
「分かったよ…………で、あとはそこの2人だが」
「俺はクラン"威風堂々"のクランマスター、ボンドだ。以前、うちの者が"黒天の星"に無礼を働いたらしく、まずはその謝罪からさせてもらいたい。その節は本当にすまなかった」
「謝る必要はないだろ。おそらくそれ相応の対処をこちらもしている。だから、おあいこだ」
「そう言って頂けると助かる…………あとは礼も言いに来たんだ。お前らの行動に感化されて俺達の中にやる気のある者が出てきている。これはとても良い影響だ。ありがとう」
「先程の手前、感謝に関しては素直に受け取っておく。だが、覚えておけ。それは些細なキッカケに過ぎない。最終的にどうするかを決め行動に移すのは自分自身だ。だから、結果、急成長を遂げたのなら本当に凄いのは俺じゃなく、そいつ自身ってことになる」
「ああ、もちろんだ。ちゃんと本人の頑張りも評価し、適切な対応をするさ」
「そうか……………で、あとはお前だけか」
「申し遅れた。クラン"永久凍土"のクランマスター、フリーズだ。用件はボンドという男とほぼ同じだ。まずは以前、部下が迷惑をかけたことを謝らせてくれ。本当にすまなかった。それと今度は礼を言わせてくれ。本当にありがとう。お前達と関わっていなければ俺達は未だに自分達の過ちに気が付くことが出来なかった。俺達はお前達のおかげで生まれ変わることが出来たんだ。本当に感謝している。おかげであれから毎日がとても充実したものになった」
「いまいち状況がよく分からないが…………まぁ、いい。お前らも頑張っているんだな。ご苦労様」
それから全員の顔をゆっくりと見回した俺は最終的にここに来て最初に言葉を交わした男へと視線を向けて、こう言った。
「で?用件はこれだけじゃないんだろ?とある頼みがあるって言ってたからな」
「ああ。それなんだが…………」
「言いにくいことなのか?」
「ひょっとしなくても厚かましいお願いになってしまうからな。慎重に言葉を選ばなければ」
「別に思ったことをそのまま言ってくれて構わないぞ。お前らは直近の俺達を知って近付いてきたミーハー冒険者達とは訳が違うからな。そんな無碍な扱いはしないさ」
「そうか?じゃあ、単刀直入に言わせてもらう」
「ああ」
「俺達9つのクランを"黒締"いや、シンヤ……………お前の傘下に入れて欲しい」
「……………は?」
「やっぱり無理だよな?すまん。変なことを言って。忘れてくれ」
「いや、拒否からくる反応じゃなくて単純に意味が分からなかったんだが…………何だ?傘下って」
「ん?…………ああ、そうか!お前はランクこそ高いがまだ新人冒険者という扱いだったな。だからギルドで説明を受けてないのか」
「?」
「すまんすまん。一から説明させてもらう。通常、冒険者として活動する時は色々なパターンがあるよな?1人で依頼を受けていくソロ、6人までの編成がパーティー、7人以上の集まりがクランと……………だが、冒険者のランクがSに到達した者がマスターを務めるクランはお互いの合意の下、他のクランを従えることができるようになる。それがいわゆる傘下だ。この制度の説明に関しては冒険者歴が半年以上でなおかつSランクに到達した瞬間、ギルドでされることになっているんだがお前は色々と例外だからな。ってか普通はそんな短期間でSランクになんかなれねぇよ。おそらく、こんなことは想定していなかっただろうな」
「……………」
「で、ここからが大事なんだが傘下とその親玉クランは1つの共同体として見なされ、それは軍団と呼ばれる。これはとても大きな力を持った強固な組織となり、実際この世界にいくつもあるが、そのどれもがどこかの土地や地域を縄張りとして君臨している。ある程度力のある者も迂闊に手は出せず、抑止力としてはかなりの力を発揮しているがごく稀に軍団同士の抗争があったりもする。がしかし、基本的にはそんな争いごともなく、軍団を組織することに関しては特にデメリットはない………………と思うんだが、どうだろうか?」
「ん~別にいいか。俺達としてはこれ以上絡んでくる変な奴が減るに越したことはないからな。だろ?ティア、サラ」
「ええ。いいと思います。もし、やってみて合わなそうなら、すぐにでもやめればいいだけですし」
「仲間が増えるのは楽しそうですわ」
「だってさ……………ってか手続きはギルドでするのか?」
「ああ。その際に軍団名も決めなければならない。何度も手間を取らせて悪いな」
「構わん。それにしてもお前ら全員が俺の下につきたいなんてな……………逆に聞くが本当に大丈夫なのか?」
「お前は自分を過小評価しすぎている。それと冗談で俺達もこんなことは言わないぞ」
「そうか…………何か、ここのところ驚くことが多いな。この間のランク上げにしてもそうだし」
「あ、そういえばまだ言っていなかったな……………世界初のEXランク冒険者、おめでとう」
「ちっ、やっぱり噂が広まっていたのか」
「ああ。俺達も下で支える身として恥をかかせないよう精一杯頑張らねば」
「程々にな」
「ああ」
こうして俺は9つのクランを纏める大親分となった。またもや自分にとって大切なものが増えていく。それは嬉しさと同時に不安でもる。もしも失ってしまったら、はたまた壊してしまったら……………生きている限り、何が起きるかは分からない。物事に絶対はないのだ。いくら強くなってもそれは変わらない。だから、俺は満足しないのだ。どこまでいっても何を得ても一向に安心はできない。決して油断せず慢心せず、掴んだその手を離さないように俺は今日も生きていく……………失わせやしない。きっと守ってみせる。
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