俺は善人にはなれない

気衒い

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第7章 vsアスターロ教

第86話 序列6位"怪物"ジャイガント

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ニーベル
性別:男 種族:半小神 年齢:15歳

Lv 15
HP 7500/7500
MP 7500/7500
ATK 7500
DEF 7500
AGI 7500
INT 7500
LUK 7500

固有スキル
酒造・急所崩し・袋叩き・魔の境地・守護神・叡智・サイボーグ・炎熱操作・戦士の誓い・透過・明鏡止水・???

武技スキル
刀剣術:Lv.MAX
体術 :Lv.MAX

魔法
全属性魔法

装備
黒衣一式(神級)
橙斧パラシュ(伝説級)

称号
酒神の加護・働き者・ひたむきな心・自由を求める者・傅く者・従者の心得・武神・魔神・魔物キラー・盗賊キラー・本能に従う者

――――――――――――――――――――

ジャイガント
性別:男 種族:改造巨人 年齢:37歳

Lv 25
HP 5000/5000
MP 500/500
ATK 4000
DEF 3000
AGI 500
INT 1000
LUK 0

固有スキル
限界突破・脳筋・状態異常無効

武技スキル
体術 :Lv.7

魔法
土魔法:Lv.6
無魔法:Lv.6

称号
なし

――――――――――――――――――――




"怪物"と呼ばれた男がいた。とある傭兵団に所属していたその男は一身上の都合により、退団。後に各地を1人で放浪し、以前の経験を活かして傭兵として生きていくことになるのだが、何故か依頼が一向に来ず、生活に困窮し始める。後で分かったことだが、前の傭兵団の団員が出鱈目な噂を流し、男の評判を悪くしていたらしい。そうとは知らず毎日毎日、あちこちを放浪して依頼を探す日々。しかし、男の顔を見るや否や、一斉に逃げていく人々。そんなことが数回、数十回と続き、さすがにおかしいと感じた男は情報屋を捕まえて原因を教えて欲しいと頼み込んだ。すると返ってきた答えは"男があまりにも凶暴すぎる。事前の依頼料に加えて大目に金を積むよう脅迫され、断ると殴られる。人格も破綻していて、短気。一度怒ると手がつけられない"などあまりにも身に覚えのない噂が広まっていることに気が付いた男はそれを広めた者についても聞き出し、元凶の元まで向かった。元凶はかつての仲間だった。男は問いただした。何故、そんな悪評を流したのか?それをして何のメリットがあるのか?と。それに対して元凶はこう答えた。

「お前、目障りなんだよ。一緒の傭兵団で戦っている時からな…………傭兵やってる癖に妙に優しいし、気性も穏やかで戦いなんて、むしろ好まない性格。はっきり言ってお前みたいな奴は傭兵やってる資格がねぇんだよ!もっと血に飢えて好戦的な性格の奴が傭兵には必要なんだ……………お前みたいなのはどっかの貴族の家で静かに庭の手入れでもしてろ」

この言葉に男はショックを受けると同時に激しい怒りに襲われた。当時、楽しく仲良く傭兵活動をしていると思っていただけにそんな風に思われていたのかというショック、それと自身の性格を否定されるのはまだいいが、その後の庭師の仕事についての言い方が何だか馬鹿にされているように感じたのだ。こちらがそう受け取っているだけで元凶はそんなつもりで言ってないかもしれない。しかし、一度そう捉えてしまうとそうとしか思えなくなってくるものだ。男は傭兵団を抜けて、各地を放浪している際に感じたのだ。様々な人々の様々な生き方を。皆、自分の仕事に誇りを持ち、一生懸命に働いている。本来、それに優劣などないのだ。世の中の誰かの役に立っている、それだけで尊いものである。だからこそ、元凶の言い回しにかすかな違和感を覚え、それが数秒後には自分でも抑えが効かない程の怒りに変わっていたのだ。そして、気が付けば元凶に殴りかかっていた。

「お、おい!お前、いきなり何すん………ぐはっ!や、やめ………ぐぼぁっ!」

この場面をたまたま目撃した他の団員達が慌てて、止めに入るも既に怒りに呑まれていた男は止まることがなかった。他の団員達すらも突き飛ばし、結果その傭兵団を壊滅させてしまう。我に返ったのは全てが終わった後だった。奇しくも元凶が流した悪評通り、"凶暴で一度怒ると手がつけられない"状態になってしまっていたのである。その後、男はとてつもない自己嫌悪に襲われながら、また以前のように放浪の旅に出た。しかし、自分のような文字通りの怪物が他の人々の役になど立てるのか、傭兵団の件がトラウマとなり、なかなか積極的に依頼に取り組むことが難しくなってしまった。そんな時だった。その後の男の人生を変えることになる、とある人物と出会ったのは……………

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「とても覚悟のある顔をしている。まるで今から生死をかけた戦いに赴く戦士のような…………でも、本来の君はそんな性格ではないだろう?弱きを助け、強きを挫く………………穏やかでとても優しい男な筈だ」

「オデの一体何を知っている!知った風な口を叩くな!」

イパ村にほど近い森の中。そこでは巨人と小人の男が対峙していた。どちらも組織の幹部同士。辺りには両者から放たれる殺気が充満しており、普段から戦場に身を置いていない者であれば、1分と保たないであろう。その為、この場には2人しかおらず、今まさに組織の威信と命運をかけた大きな戦いが始まろうとしていた。

「気に障ったのなら、謝るよ。ごめん。でもね、部下に君と同じ感じの巨人がいてね……………その男もとても優しく頼り甲斐のある奴なんだ」

「オデは…………ここを任されたんだ、あの御方に!あの方がいなければ、今のオデはない!」

「今のこの状況は本当に君が望んでいることなのか?」

「オデの意思なんて関係ない!やるしかないんだ!あの方がそれを望んでいるのだから!」

「そうか、残念だよ。君とは美味しいお酒が飲めると思っていたのに」

「オデを誑かす気か!その手には乗らねぇど!ランギル様に言われてんだ!敵の言葉に耳を傾けるな、惑わされるな、そして…………俺を信じろと」

「そのランギルとかいう奴は相当なやり手のようだね。それと同時にズル賢く、冷徹で目的の為ならば手段を選ばないように感じる」

「ランギル様を侮辱する気か!許さないど!」

「いやいや、そんなつもりはないさ。ただ、それなら、僕らの大将の方がよっぽどやり手だと思っただけさ」

「何!?」

「ってか、今思ったんだけど…………君の口から"邪神"っていう単語が出てこないのは何故?本来はそっちがメインのはずでしょ?」

「……………」

「どうしたの?」

「本当はこんなこと言っちゃいけねぇんだけど、正直邪神なんて、オデにとってはどうだっていいんだ」

「……………」

「オデはあの御方の…………ランギル様のお役に立ちたい!ただ、それだけなんだ。ランギル様に褒められると自分がこの世にいてもいいんだ、こんな役立たずでも生きてていいんだって認めてもらえたような気がして」

「君は一体、何を言っているんだ!この世に生きてちゃいけない人なんて一人もいないし、役立たずだって存在しない!前提がまず間違ってる!皆、この世に生まれてきただけで奇跡なんだ!祝福されることはあれど、蔑まれたり虐げられたりするなんて、決してあってはならない!皆、命は等しく尊いものなんだ……………それは悪人だろうが善人だろうが同じこと。幸せに生きていく権利は誰にだってある」

「そんなこと今さら言われたって仕方ねぇど…………オデはもう止まれないんだ」

「君の過去に一体何があり、何故こんなことをするのか、分からないし、聞いてもおそらく賛同はできないだろう。ただ、これだけは言える……………出会うべき男を間違えたな」

「お前っ!!」

「本当に残念だ。君の信念はとても固く、強い。そんな君を今、ここで止めなければならないのは心苦しいが、それが僕に与えられた使命だ」

「……………お前のリーダーはそんなに偉大な男なのか?」

「ああ。後にも先にもあれ程の者は出てこない……………そう思わせるほどにね。まぁ、本人は否定するだろうけど」

「……………」

「さぁ、お互いの目的が確認できたところで始めようか…………"神雷斧"!」

「絶対に邪魔させねぇど!"強硬拳土"!」



「……………本当に君達の親玉はムカつくね。こんなに怒りを覚えたのは生まれて初めてだ」
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