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第4章 迷宮都市
第43話 勘違い
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「お、おい…………何だ、あれ?」
僕の周りを取り囲む男達の1人がそう言った。体全体を震わせ、まるで信じられないものでも見たかのような反応をしている。無理もない。誰だって、あんな光景を見れば、そう言いたくもなる……………追いかけてきた男達から逃げ回っていた僕は結局、見つかって、村まで連れ戻されてしまった。逃げたことがバレれば、きついお仕置きが待っている為、項垂れながら、村の中を歩いていると村長の家の近くに何やら、人だかりができているのに気が付いた。どうやら、男達もそれに気付いたようでみんなでそこへと向かってみると村長の周りにいた黒ローブの集団が一斉に血を流して倒れだしたのだ。一体、何が起こったのか理解できなかったが、現場へと目を向けると驚くべき光景が目に飛び込んできた。なんと、黒ローブの集団が全員、胴体を真っ二つにされていたのである。これに対して、僕を含めた村人達はみんな吐きそうになっていたが、どうにか我慢した。もし、余計な行動を取って、この惨状を作り出した者の逆鱗に触れでもしたら、次にこうなるのは自分なのではないかという危機感が咄嗟に働いた為だ。あまりにも目を背けたくなる光景だが、なぜか、この顛末を見届けなければならないという謎の使命感に駆られ、この後もそこから目を離せなかった。血の匂いと砂埃が舞う中、見物人である村人達以外でそこに立っているのは村長と……………黒い衣を纏った不思議な集団だけだった。
――――――――――――――――――――
「で、村長、この後はどうするんだ?まさか、尻尾を巻いて逃げたりしないよな?」
「あああぅあ…………」
「まぁ、Aランクなど恐るるに足らんか?」
「この強さでAランク…………Sランクではなかったのか」
「それは俺を含めた、こっちの6名だけだ。ってか、こんな芸当は"黒天の星"の新人のBランク、3人でもできるわ」
「な、なんと…………ワシはとんだ間違いを犯してしまったとでもいうのか」
「後悔すんのは勝手だが、お前にはまだ用があるからな?」
「え……一体、何を………ひ、ひぃっ!やめろ!ち、近付くでない!」
「黙れ。お前に拒否権などはない………アスカ、やれ」
「はい」
「な、何をす…………ぐ、ぐわあああぁぁ」
――――――――――――――――――――
「なるほどな………やっぱり、奴らが絡んでいたか」
「いかが致しますか?」
「この間も言った通りだ。俺達の邪魔をするようなら、1人残して排除する。そうでないなら、放っておけばいい」
「了解致しました」
「さて……死体も片付けたし、あとは…………」
「あの」
「ん?」
「お取り込み中、失礼致します。私は村長代理のナルーサという者なのですが………一体、何が起きたのか、ご説明して頂けないでしょうか?」
「ああ、悪い。お前らの存在、すっかり忘れてたわ。まぁ、簡単に言うと村長とさっきの黒ローブの集団がグルになって、この村を乗っ取ろうと画策してたんだ」
「え………」
「結果、執拗なまでの重労働・食料の大量奪取、税金の引き上げを村人達に強いていたみたいだな」
「う、嘘だろ」
「俺達があんなに一生懸命に働いてたのって、全てあいつらの為だったのかよ」
「確かにここ最近、おかしいとは思ってたんだ」
「俺達はなんてことを………」
「………………」
俺が告げた真実に一斉に項垂れる村人達。受け入れたくないのか現実逃避をしている者までいた。とそこへ、村長代理が割って入り、大きな声でこう言った。
「皆さん!沈んでばかりいても仕方ありません!村長達の呪縛からはもう既に解き放たれているじゃありませんか!なにせ、彼らが…………偉大なる冒険者様である彼らが私達の現状を知って、立ち上がり、その元凶をたった今、打ち倒してくれたのです!だから、今、することはただ嘆き悲しむことではなく、私達の為に奮闘して頂いた方々に感謝の念を伝え、精一杯おもてなしをすることなんじゃないでしょうか?」
「た、確かに」
「危なかった………自分達の問題ばかりに気を取られ、肝心なことを見失うところだった」
「ありがたや~救世主様」
「おもてなし…………一体、何を振る舞えば」
「決まっているだろ。イパ村といったら、あれしか、あるまい」
「皆さん、各々の感想は後でいいですから!まずは彼らにお礼を言うのが先です!では、いきますよ?…………この度は村を救って頂き…………せーの」
「「「「「ありがとうございました!」」」」」
言えない。こんな状況になってしまってはとてもじゃないが、言えない。
「さぁ、救世主様方。こちらへ、どうぞ!私達、村人一同はあなた方を歓迎致します!」
動機が"自分達の為"だとは…………。彼らの満面の笑顔を前にして、一体、誰が言えようか。
――――――――――――――――――――
「お前ら、二日酔いになってないか?もし、なってたら、魔法で直せよ」
次の日、俺達は朝早くに目が覚めた。村長代理の勧めもあり、村で一泊することに決めた俺達は村長代理宅で寝泊まりした。ちなみに昨日の村人達のおもてなしとやらは酒だった。この世界では酒に関する法律がない為、一応、誰でも飲むことは可能であるが、そこは日本の法律に基づき、成人してからという方が精神衛生上も肉体的にもいいと思うのは俺だけだろうか………ま、どちらにしても俺達は全員、そこをクリアしているし問題はないんだが……………それから、この世界での成人とは種族関係なく、満15歳のことを指している。
「昨夜は楽しんで頂けたでしょうか?」
「ああ。さすがは酒を特産品にしているだけあるわ。コクがあったり、まろやかだったり、味が深かったり…………それぞれ種類ごとの趣きがあって、最高だったぞ」
「お褒めに預かり光栄でございます…………ですが、大変申し訳ございません。私達にはこれしか取り柄がなくてですね…………」
「いや、どう考えても十分すぎるもてなしだったぞ。こちらこそ、ありがとう」
「そう言って頂けて、幸いでございます」
「じゃあ、もう行くわ。世話になった。村の連中にもよろしく言っといてくれ」
「すみません。本当は全員でお見送りするのが筋なのですが…………」
「朝早いから、起こすのは忍びない。せっかく、あんなに働かなくてもよくなったんだ。久しぶりにぐっすりと寝て、疲れを取ってもらえ」
「うぅっ………ここまできて、私達の心配をして頂けるなんて、なんとお優しい………」
「気にするな………じゃあ、またいつか。機会があったら、また立ち寄るかもしれん」
「はい!その際はぜひ、生まれ変わったイパ村を自信を持って、お見せできるよう日々、精進して参ります!」
「ほどほどにな」
「さて、行くか」
「お土産に色々、もらっちゃいました」
「まだ少し眠いですわね」
「それにしても昨日の酒は美味かったな~」
「カグヤ、酔っ払うと、面倒臭い」
「その点、ノエ先輩は酔ってもあまり変わらないですよね?」
「朝は貧血気味じゃ~血が欲しいのぅ」
「おい、イヴ!我に寄りかかるな!歩きづらいだろう!」
「お前ら、朝から元気だな」
「不覚デス………まさか、あんな醜態を晒しやがるなんて」
「エル、完全に酔いが覚めて、昨夜のこと思い出して後悔してるの」
朝独特の新鮮な空気を思いっきり吸って、門の外へと踏み出した一歩。この次に待っているのは何事もなければ、おそらく迷宮都市のみ。気持ちは既に前へと向いていた。しかし、こういう時に何かしら、邪魔が入ってくるのが今までは多かった。その為、今回もそれがあるんじゃないかと警戒していると案の定、二歩目を踏み出す直前で声が聞こえてきた。
「ちょっと待ってくれ!」
振り向くと昨日、酒の席でも見かけなかった人物がそこには立っていた。再度、記憶を辿ってみるが、やはり一度も喋ったことがない。こんな朝早くから、一体、何の用だろうか?もう、この村を出発してしまう者達に…………だが、一目でその者が冗談やおふざけでそこにいる訳ではないと分かった。なぜなら、その者はどこか覚悟を決めた顔をしていたのだった。
僕の周りを取り囲む男達の1人がそう言った。体全体を震わせ、まるで信じられないものでも見たかのような反応をしている。無理もない。誰だって、あんな光景を見れば、そう言いたくもなる……………追いかけてきた男達から逃げ回っていた僕は結局、見つかって、村まで連れ戻されてしまった。逃げたことがバレれば、きついお仕置きが待っている為、項垂れながら、村の中を歩いていると村長の家の近くに何やら、人だかりができているのに気が付いた。どうやら、男達もそれに気付いたようでみんなでそこへと向かってみると村長の周りにいた黒ローブの集団が一斉に血を流して倒れだしたのだ。一体、何が起こったのか理解できなかったが、現場へと目を向けると驚くべき光景が目に飛び込んできた。なんと、黒ローブの集団が全員、胴体を真っ二つにされていたのである。これに対して、僕を含めた村人達はみんな吐きそうになっていたが、どうにか我慢した。もし、余計な行動を取って、この惨状を作り出した者の逆鱗に触れでもしたら、次にこうなるのは自分なのではないかという危機感が咄嗟に働いた為だ。あまりにも目を背けたくなる光景だが、なぜか、この顛末を見届けなければならないという謎の使命感に駆られ、この後もそこから目を離せなかった。血の匂いと砂埃が舞う中、見物人である村人達以外でそこに立っているのは村長と……………黒い衣を纏った不思議な集団だけだった。
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「で、村長、この後はどうするんだ?まさか、尻尾を巻いて逃げたりしないよな?」
「あああぅあ…………」
「まぁ、Aランクなど恐るるに足らんか?」
「この強さでAランク…………Sランクではなかったのか」
「それは俺を含めた、こっちの6名だけだ。ってか、こんな芸当は"黒天の星"の新人のBランク、3人でもできるわ」
「な、なんと…………ワシはとんだ間違いを犯してしまったとでもいうのか」
「後悔すんのは勝手だが、お前にはまだ用があるからな?」
「え……一体、何を………ひ、ひぃっ!やめろ!ち、近付くでない!」
「黙れ。お前に拒否権などはない………アスカ、やれ」
「はい」
「な、何をす…………ぐ、ぐわあああぁぁ」
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「なるほどな………やっぱり、奴らが絡んでいたか」
「いかが致しますか?」
「この間も言った通りだ。俺達の邪魔をするようなら、1人残して排除する。そうでないなら、放っておけばいい」
「了解致しました」
「さて……死体も片付けたし、あとは…………」
「あの」
「ん?」
「お取り込み中、失礼致します。私は村長代理のナルーサという者なのですが………一体、何が起きたのか、ご説明して頂けないでしょうか?」
「ああ、悪い。お前らの存在、すっかり忘れてたわ。まぁ、簡単に言うと村長とさっきの黒ローブの集団がグルになって、この村を乗っ取ろうと画策してたんだ」
「え………」
「結果、執拗なまでの重労働・食料の大量奪取、税金の引き上げを村人達に強いていたみたいだな」
「う、嘘だろ」
「俺達があんなに一生懸命に働いてたのって、全てあいつらの為だったのかよ」
「確かにここ最近、おかしいとは思ってたんだ」
「俺達はなんてことを………」
「………………」
俺が告げた真実に一斉に項垂れる村人達。受け入れたくないのか現実逃避をしている者までいた。とそこへ、村長代理が割って入り、大きな声でこう言った。
「皆さん!沈んでばかりいても仕方ありません!村長達の呪縛からはもう既に解き放たれているじゃありませんか!なにせ、彼らが…………偉大なる冒険者様である彼らが私達の現状を知って、立ち上がり、その元凶をたった今、打ち倒してくれたのです!だから、今、することはただ嘆き悲しむことではなく、私達の為に奮闘して頂いた方々に感謝の念を伝え、精一杯おもてなしをすることなんじゃないでしょうか?」
「た、確かに」
「危なかった………自分達の問題ばかりに気を取られ、肝心なことを見失うところだった」
「ありがたや~救世主様」
「おもてなし…………一体、何を振る舞えば」
「決まっているだろ。イパ村といったら、あれしか、あるまい」
「皆さん、各々の感想は後でいいですから!まずは彼らにお礼を言うのが先です!では、いきますよ?…………この度は村を救って頂き…………せーの」
「「「「「ありがとうございました!」」」」」
言えない。こんな状況になってしまってはとてもじゃないが、言えない。
「さぁ、救世主様方。こちらへ、どうぞ!私達、村人一同はあなた方を歓迎致します!」
動機が"自分達の為"だとは…………。彼らの満面の笑顔を前にして、一体、誰が言えようか。
――――――――――――――――――――
「お前ら、二日酔いになってないか?もし、なってたら、魔法で直せよ」
次の日、俺達は朝早くに目が覚めた。村長代理の勧めもあり、村で一泊することに決めた俺達は村長代理宅で寝泊まりした。ちなみに昨日の村人達のおもてなしとやらは酒だった。この世界では酒に関する法律がない為、一応、誰でも飲むことは可能であるが、そこは日本の法律に基づき、成人してからという方が精神衛生上も肉体的にもいいと思うのは俺だけだろうか………ま、どちらにしても俺達は全員、そこをクリアしているし問題はないんだが……………それから、この世界での成人とは種族関係なく、満15歳のことを指している。
「昨夜は楽しんで頂けたでしょうか?」
「ああ。さすがは酒を特産品にしているだけあるわ。コクがあったり、まろやかだったり、味が深かったり…………それぞれ種類ごとの趣きがあって、最高だったぞ」
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「いや、どう考えても十分すぎるもてなしだったぞ。こちらこそ、ありがとう」
「そう言って頂けて、幸いでございます」
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「さて、行くか」
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「それにしても昨日の酒は美味かったな~」
「カグヤ、酔っ払うと、面倒臭い」
「その点、ノエ先輩は酔ってもあまり変わらないですよね?」
「朝は貧血気味じゃ~血が欲しいのぅ」
「おい、イヴ!我に寄りかかるな!歩きづらいだろう!」
「お前ら、朝から元気だな」
「不覚デス………まさか、あんな醜態を晒しやがるなんて」
「エル、完全に酔いが覚めて、昨夜のこと思い出して後悔してるの」
朝独特の新鮮な空気を思いっきり吸って、門の外へと踏み出した一歩。この次に待っているのは何事もなければ、おそらく迷宮都市のみ。気持ちは既に前へと向いていた。しかし、こういう時に何かしら、邪魔が入ってくるのが今までは多かった。その為、今回もそれがあるんじゃないかと警戒していると案の定、二歩目を踏み出す直前で声が聞こえてきた。
「ちょっと待ってくれ!」
振り向くと昨日、酒の席でも見かけなかった人物がそこには立っていた。再度、記憶を辿ってみるが、やはり一度も喋ったことがない。こんな朝早くから、一体、何の用だろうか?もう、この村を出発してしまう者達に…………だが、一目でその者が冗談やおふざけでそこにいる訳ではないと分かった。なぜなら、その者はどこか覚悟を決めた顔をしていたのだった。
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