30 / 416
第3章 動き出す陰謀
第30話 情報屋
しおりを挟む
「怪しい動きですか?」
「ああ。もしかしたら、思い過ごしかもしれないが、一応気を付けておくに越したことはないからな」
「根拠は何ですの?」
「順を追って話そう。まず、俺が初めてティアに会った時に聞いた村での話。その中で村長と奴隷商人が結託して村人を謀ろうとしている場面をティアが目撃したんだが、その際にそいつらがあることを言った。それは"悪魔のささやき"と"アスターロ様の名の下に"だ。まず、この言葉を覚えていて欲しい。次にこれはその現場にいなかったアスカ・イヴ・ラミュラは分からないだろうが、俺達がある冒険者達と再会した時、その内の一人が言っていたんだ。………"故郷に巣食うあの悪魔"と。実際、彼らはそれに立ち向かおうと必死で冒険者として活動していくつもりだったみたいだ。そして、最後にこの間のスタンピードの元凶、ラミュラを操っていた黒ローブ…………こいつが俺達に連れていかれる直前、ボソッと呟いた"アスターロ様、どうか不出来なこの私をお許し下さい"という言葉…………俺にはこれら3つの出来事が無関係とは思えないんだが……………ま、皆、心のどこかに留めておいて常に警戒は怠らないようにしておけ。たとえ、それが街中であってもだ」
「……………こちらに危害を加えようとしてきたら、いかが致しますか?」
「単騎なら、生け捕り。それ以外であれば、1人残して、あとは殺して構わん」
「かしこまりました」
「さて、そんじゃギルドへ向かうか」
――――――――――――――――――――
「お、おい!あれ、見ろ!黒天の星だ!」
「まじかよ!かっけー」
「いや、"黒締"以外はどちらかというと可愛いだろ」
「お前、何言ってんだよ。あんな見た目でめちゃくちゃ強いらしいぞ。甘くみんなよ」
「"銀狼"ティアちゃん、可愛い」
「いーや、俺は断然"金耳"派だね!罵られたい!」
「いやいや、どう考えても"朱鬼"カグヤだろ!」
「"銅匠"ノエたん、はぁはぁ」
「お前らには"玄舞"の奥ゆかしさが分からんのか!」
「それよりも高貴さだ!よって、"白姫"の一人勝ち!」
「俺は"蒼鱗"ラミュラが気になるな」
俺達がギルドへ入るやいなや、そんな声が聞こえてきた。いまいち状況が分からないが、全く興味がない為、無視して受付へと向かおうとしたところ
「あ、あの!皆さん、黒天の星の方々ですよね!」
「お、おい!抜け駆けすんな!」
「ずるいぞ!」
「わ、私も!」
目の前に有象無象が立ちはだかり、進路を妨害してきた。………これは王の権威で気絶させるか。そう思い、発動しようとした時、どこからか声が聞こえてきた。
「ちょっと待て、お前ら。浮かれる気持ちは分かるが、"黒締"の邪魔をするなよ」
それはネズミ色のハットを被った緑髪の男だった。すらっとした体型で高身長。端正な顔立ちに整えられた顎髭がよく映えていた。興奮冷めやらぬギルド内にて、そいつだけは焦った表情で有象無象を追い払ってくれた。
「ふぅ~………全くあいつらときたら」
「助かった。ありがとう」
「いやいや………たぶん、こういうのは嫌がるだろうと思ってな」
「………どうして、そう思った?」
「実はお前らが初めて冒険者ギルドに足を踏み入れた時から、見ていてね………他の者に対する態度というか言動があまりにも興味なさそうだったもんで…………」
「へぇ………分かるか?」
「まぁ、職業柄、人間観察とかは割と得意な方だな」
「職業柄?ここにいるのは冒険者とその相手をする職員だけじゃないのか?…………もしかして、同業者ではないとかか?」
「なぜ、そう思った?」
「同業者なら、わざわざ"職業柄"なんて言い方しないだろ」
「ふむ、鋭いな」
「こんなの誰にでも分かることだろ」
「いやいや、冒険者ってのは荒くれ者というか単細胞というか………そんな連中ばかりなもんでね」
「なるほど………お前、面白い奴だな」
「ん?なぜだ?」
「こんだけ冒険者がいる中でその発言は中々できるもんじゃない。随分と肝が座っているじゃないか」
「…………あ」
ハットの男が気付いた時にはもう遅かった。ギルド内から殺気の籠もった視線を浴びせられ、今すぐにでも武力行使でもって屈服させられてもおかしくはない状況へと変化していた。戦々恐々。普段は常に冷静さを心掛け、あらゆる者を敵に回すような発言などしないはずのその男。いつもの自分ではない、どこか浮かれた様子に首を捻り先程、シンヤに群がる者達を止めた時とは別の焦りが心に生じかけたその時、
「文句があるなら、俺に言ってこいよ」
一瞬にして、空気が変わった。シンヤがさらなる殺気を視線と言葉に乗せて放ったのだ。これにはたちまち冒険者達が震え上がった。と同時にやはりシンヤ達はとんでもない実力を秘めた冒険者なのだという共通認識がその場にいた冒険者達の間で生まれた。
「そういえば、自己紹介が遅れたな。俺の名はシンヤ・モリタニ。冒険者だ………で、お前の名は?」
「俺の名はドルツ………しがない情報屋だ」
「ああ。もしかしたら、思い過ごしかもしれないが、一応気を付けておくに越したことはないからな」
「根拠は何ですの?」
「順を追って話そう。まず、俺が初めてティアに会った時に聞いた村での話。その中で村長と奴隷商人が結託して村人を謀ろうとしている場面をティアが目撃したんだが、その際にそいつらがあることを言った。それは"悪魔のささやき"と"アスターロ様の名の下に"だ。まず、この言葉を覚えていて欲しい。次にこれはその現場にいなかったアスカ・イヴ・ラミュラは分からないだろうが、俺達がある冒険者達と再会した時、その内の一人が言っていたんだ。………"故郷に巣食うあの悪魔"と。実際、彼らはそれに立ち向かおうと必死で冒険者として活動していくつもりだったみたいだ。そして、最後にこの間のスタンピードの元凶、ラミュラを操っていた黒ローブ…………こいつが俺達に連れていかれる直前、ボソッと呟いた"アスターロ様、どうか不出来なこの私をお許し下さい"という言葉…………俺にはこれら3つの出来事が無関係とは思えないんだが……………ま、皆、心のどこかに留めておいて常に警戒は怠らないようにしておけ。たとえ、それが街中であってもだ」
「……………こちらに危害を加えようとしてきたら、いかが致しますか?」
「単騎なら、生け捕り。それ以外であれば、1人残して、あとは殺して構わん」
「かしこまりました」
「さて、そんじゃギルドへ向かうか」
――――――――――――――――――――
「お、おい!あれ、見ろ!黒天の星だ!」
「まじかよ!かっけー」
「いや、"黒締"以外はどちらかというと可愛いだろ」
「お前、何言ってんだよ。あんな見た目でめちゃくちゃ強いらしいぞ。甘くみんなよ」
「"銀狼"ティアちゃん、可愛い」
「いーや、俺は断然"金耳"派だね!罵られたい!」
「いやいや、どう考えても"朱鬼"カグヤだろ!」
「"銅匠"ノエたん、はぁはぁ」
「お前らには"玄舞"の奥ゆかしさが分からんのか!」
「それよりも高貴さだ!よって、"白姫"の一人勝ち!」
「俺は"蒼鱗"ラミュラが気になるな」
俺達がギルドへ入るやいなや、そんな声が聞こえてきた。いまいち状況が分からないが、全く興味がない為、無視して受付へと向かおうとしたところ
「あ、あの!皆さん、黒天の星の方々ですよね!」
「お、おい!抜け駆けすんな!」
「ずるいぞ!」
「わ、私も!」
目の前に有象無象が立ちはだかり、進路を妨害してきた。………これは王の権威で気絶させるか。そう思い、発動しようとした時、どこからか声が聞こえてきた。
「ちょっと待て、お前ら。浮かれる気持ちは分かるが、"黒締"の邪魔をするなよ」
それはネズミ色のハットを被った緑髪の男だった。すらっとした体型で高身長。端正な顔立ちに整えられた顎髭がよく映えていた。興奮冷めやらぬギルド内にて、そいつだけは焦った表情で有象無象を追い払ってくれた。
「ふぅ~………全くあいつらときたら」
「助かった。ありがとう」
「いやいや………たぶん、こういうのは嫌がるだろうと思ってな」
「………どうして、そう思った?」
「実はお前らが初めて冒険者ギルドに足を踏み入れた時から、見ていてね………他の者に対する態度というか言動があまりにも興味なさそうだったもんで…………」
「へぇ………分かるか?」
「まぁ、職業柄、人間観察とかは割と得意な方だな」
「職業柄?ここにいるのは冒険者とその相手をする職員だけじゃないのか?…………もしかして、同業者ではないとかか?」
「なぜ、そう思った?」
「同業者なら、わざわざ"職業柄"なんて言い方しないだろ」
「ふむ、鋭いな」
「こんなの誰にでも分かることだろ」
「いやいや、冒険者ってのは荒くれ者というか単細胞というか………そんな連中ばかりなもんでね」
「なるほど………お前、面白い奴だな」
「ん?なぜだ?」
「こんだけ冒険者がいる中でその発言は中々できるもんじゃない。随分と肝が座っているじゃないか」
「…………あ」
ハットの男が気付いた時にはもう遅かった。ギルド内から殺気の籠もった視線を浴びせられ、今すぐにでも武力行使でもって屈服させられてもおかしくはない状況へと変化していた。戦々恐々。普段は常に冷静さを心掛け、あらゆる者を敵に回すような発言などしないはずのその男。いつもの自分ではない、どこか浮かれた様子に首を捻り先程、シンヤに群がる者達を止めた時とは別の焦りが心に生じかけたその時、
「文句があるなら、俺に言ってこいよ」
一瞬にして、空気が変わった。シンヤがさらなる殺気を視線と言葉に乗せて放ったのだ。これにはたちまち冒険者達が震え上がった。と同時にやはりシンヤ達はとんでもない実力を秘めた冒険者なのだという共通認識がその場にいた冒険者達の間で生まれた。
「そういえば、自己紹介が遅れたな。俺の名はシンヤ・モリタニ。冒険者だ………で、お前の名は?」
「俺の名はドルツ………しがない情報屋だ」
4
お気に入りに追加
577
あなたにおすすめの小説
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜
平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。
『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。
この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。
その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。
一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~
霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。
ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。
これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる