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第2章 クラン結成
第20話 偏に風の前の塵に同じ
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「10番隊隊長"炎砂"のブーケ!」
「9番隊隊長"闇医者"ダドク!」
「8番隊隊長"撃墜"のキルス!」
「7番隊隊長"魔女"メルザ!」
「6番隊隊長"預言"のリンド!」
「4番隊隊長"撹乱"のルッツ!」
「3番隊隊長"熊爺"ゴロン!」
「2番隊隊長"剛力"のレウルス!」
「1番隊隊長"鬼"のランド!」
「そして、クランマスター"鉄壁"のガンドル!占めて10名が今、貴様に戦いを………」
「うるさい」
「な……」
「ぐべらっ」
「ぐはっ」
「リンド、ダドク、ブーケ!」
いつの間にか、隊長達の近くまで忍び寄っていたノエがハンマーを振るった。それで3人は吹き飛び、絶命してしまった。ハンマーという武器は破壊力に重きを置き、その分、動きは非常にゆっくりとなるはずであった。愚狼隊の面々もその予備動作に攻撃のチャンスを見出し、仕掛けようと考えていたぐらいだ。しかし、その淡い期待はいとも簡単に打ち砕かれた。相手は普通ではなかったのだ。というより、常軌を逸していた。あそこまで重い武器を担ぎながら、自分達に知覚できないほどのスピードで側まで近付く。この動きができる時点で既に勝敗は決していると言っていいだろう。だが、勝ち負けなどではなく、殲滅のみを頭に思い描いている者に白旗を挙げたところで止まるはずがない。となると彼らの選択肢はたった一つしかない。それは
「テメェ、よくも………絶対に許さねぇ!」
決死の覚悟で立ち向かうことのみである。どこかに逃げたり、やり過ごそうとするなど愚の骨頂。仮にそれをしたところで彼女が諦める理由などない。しかし、
「それは、こっちの、台詞」
「くそが~~」
「…………視界が真っ赤……あはっ」
「こ、こんなの情報にな………」
「しっかりしろ!キルス、メルザ、ルッツ!」
いかんせん実力差がありすぎる。こうしている間にも3人失い、残りはクランマスターを入れて4人となった。
「嬢ちゃん、ちと手加減してくれんかの?年寄りにはきつ」
残り3人。
「こいつぁ、早まっただで………でも、おいらは負け」
残り2人。
「わ、私は最後の最」
あと1人。
「お前で、最後」
「私が何と言われているのか先程、言ったであろう。固有スキル"鉄壁"発動!!」
「無駄」
「ぐはっ………な、なぜだ」
「あ、耐えた………すごい」
「…くっ………よし、分かった。小娘、一体何が欲しい?金か?地位か?それとも名誉か?今、私を見逃してくれたら、いくらでもくれてやろう」
人間、恐怖に支配されすぎるとおかしくなるというもの。彼女がそ・の・程・度・の・も・の・を欲するはずがない。彼女の目的は彼らの殲滅。それを完遂するまでは絶対に止まらない。そんなことは相対した彼らなら、誰もが分かっていた。振われる鎚から伝わるのは絶対に許さないという強い意志。彼女達にとって、家族特にシンヤは最も大事でそれを傷つけようとする者など地の果てまで追いかけ、天罰を加えねば、明日の飯もおちおち食えやしない。それほどの重要案件。ましてや、今回はノエ自ら参戦したのだ。だとするのなら、最後まで責任を持って、良い報告ができるよう努めたいと思うのは必然だろう。
「リーダーが、それ、言っちゃ、おしまい」
「うるさい、化け物!!隊員は皆死亡。これではリーダーもへったくれもないではないか!!お前さえ、いなければ私達は今頃」
「それこそ、無意味」
「は?」
「私は、下から、2番目」
「ま、まさか………う、嘘だと言ってくれ」
「ほんと」
「……………元々、勝ち目などなかったということか。なんと愚かな」
「遺言、終わり?」
「いや、最期に忠告だ…………我々を倒したくらいでいい気になるな。これから、お前らはもっとヤバい奴らに」
「話、長い」
直後、風が吹いた。その風に乗って強烈な鉄の臭いがする。近くには折り重なるようにして横たわる骸達。遠くには夕立ちが通り過ぎた後の乾き切っていない地面がちらほら見える。時折、焦げた木材に水が滴る音がはっきりと聞こえる様から、この一帯が静けさに包まれていることが窺える。この異様な場に生者はたったの2人だけ。その内の一人。先程から一言も発さずに事の成り行きを見守っていた彼女……アスカはようやく口を開くとこう言った。
「まさに祇園精舎の鐘の声…………ですね」
「?……まだ、鐘は、鳴らないはず」
「そういう意味ではありません」
「??」
より深くなった夜の道を進み、帰路に就く。頭にハテナを沢山浮かべたドワーフとどこか納得顔をした人間の少女が手を繋ぎながら。
「9番隊隊長"闇医者"ダドク!」
「8番隊隊長"撃墜"のキルス!」
「7番隊隊長"魔女"メルザ!」
「6番隊隊長"預言"のリンド!」
「4番隊隊長"撹乱"のルッツ!」
「3番隊隊長"熊爺"ゴロン!」
「2番隊隊長"剛力"のレウルス!」
「1番隊隊長"鬼"のランド!」
「そして、クランマスター"鉄壁"のガンドル!占めて10名が今、貴様に戦いを………」
「うるさい」
「な……」
「ぐべらっ」
「ぐはっ」
「リンド、ダドク、ブーケ!」
いつの間にか、隊長達の近くまで忍び寄っていたノエがハンマーを振るった。それで3人は吹き飛び、絶命してしまった。ハンマーという武器は破壊力に重きを置き、その分、動きは非常にゆっくりとなるはずであった。愚狼隊の面々もその予備動作に攻撃のチャンスを見出し、仕掛けようと考えていたぐらいだ。しかし、その淡い期待はいとも簡単に打ち砕かれた。相手は普通ではなかったのだ。というより、常軌を逸していた。あそこまで重い武器を担ぎながら、自分達に知覚できないほどのスピードで側まで近付く。この動きができる時点で既に勝敗は決していると言っていいだろう。だが、勝ち負けなどではなく、殲滅のみを頭に思い描いている者に白旗を挙げたところで止まるはずがない。となると彼らの選択肢はたった一つしかない。それは
「テメェ、よくも………絶対に許さねぇ!」
決死の覚悟で立ち向かうことのみである。どこかに逃げたり、やり過ごそうとするなど愚の骨頂。仮にそれをしたところで彼女が諦める理由などない。しかし、
「それは、こっちの、台詞」
「くそが~~」
「…………視界が真っ赤……あはっ」
「こ、こんなの情報にな………」
「しっかりしろ!キルス、メルザ、ルッツ!」
いかんせん実力差がありすぎる。こうしている間にも3人失い、残りはクランマスターを入れて4人となった。
「嬢ちゃん、ちと手加減してくれんかの?年寄りにはきつ」
残り3人。
「こいつぁ、早まっただで………でも、おいらは負け」
残り2人。
「わ、私は最後の最」
あと1人。
「お前で、最後」
「私が何と言われているのか先程、言ったであろう。固有スキル"鉄壁"発動!!」
「無駄」
「ぐはっ………な、なぜだ」
「あ、耐えた………すごい」
「…くっ………よし、分かった。小娘、一体何が欲しい?金か?地位か?それとも名誉か?今、私を見逃してくれたら、いくらでもくれてやろう」
人間、恐怖に支配されすぎるとおかしくなるというもの。彼女がそ・の・程・度・の・も・の・を欲するはずがない。彼女の目的は彼らの殲滅。それを完遂するまでは絶対に止まらない。そんなことは相対した彼らなら、誰もが分かっていた。振われる鎚から伝わるのは絶対に許さないという強い意志。彼女達にとって、家族特にシンヤは最も大事でそれを傷つけようとする者など地の果てまで追いかけ、天罰を加えねば、明日の飯もおちおち食えやしない。それほどの重要案件。ましてや、今回はノエ自ら参戦したのだ。だとするのなら、最後まで責任を持って、良い報告ができるよう努めたいと思うのは必然だろう。
「リーダーが、それ、言っちゃ、おしまい」
「うるさい、化け物!!隊員は皆死亡。これではリーダーもへったくれもないではないか!!お前さえ、いなければ私達は今頃」
「それこそ、無意味」
「は?」
「私は、下から、2番目」
「ま、まさか………う、嘘だと言ってくれ」
「ほんと」
「……………元々、勝ち目などなかったということか。なんと愚かな」
「遺言、終わり?」
「いや、最期に忠告だ…………我々を倒したくらいでいい気になるな。これから、お前らはもっとヤバい奴らに」
「話、長い」
直後、風が吹いた。その風に乗って強烈な鉄の臭いがする。近くには折り重なるようにして横たわる骸達。遠くには夕立ちが通り過ぎた後の乾き切っていない地面がちらほら見える。時折、焦げた木材に水が滴る音がはっきりと聞こえる様から、この一帯が静けさに包まれていることが窺える。この異様な場に生者はたったの2人だけ。その内の一人。先程から一言も発さずに事の成り行きを見守っていた彼女……アスカはようやく口を開くとこう言った。
「まさに祇園精舎の鐘の声…………ですね」
「?……まだ、鐘は、鳴らないはず」
「そういう意味ではありません」
「??」
より深くなった夜の道を進み、帰路に就く。頭にハテナを沢山浮かべたドワーフとどこか納得顔をした人間の少女が手を繋ぎながら。
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