128 / 140
もう一つの世界線〜IF〜
第八話:文化祭
しおりを挟む「そういえば、拓也先輩のクラスは何の出し物をするんですか?」
学食で優梨奈がそう聞いてくる。
ちなみにクレアは今、ここにいない。
どうやら、文化祭の委員に選ばれてしまったとのことで昼休みも忙しくしているらしい。
おかげで今まで恒例だった三人での昼食がなくなってしまった為、優梨奈はちょっぴり寂しい思いをしているようだ。
「劇だ」
「劇?」
「ああ。それもロミオとジュリエット」
「へ~……………ちなみにロミオ役とジュリエット役は誰なんですか?」
「ロミオが長月でジュリエットが霜月だ。実はさ、全然気が付かなかったんだけど、夏休み中に演技の練習してたらしいぞ」
「えっ、そうなんですか!?」
「ああ。だから、台本をもらったのが夏休み明けにも関わらず、スムーズに役に入っていけているらしい」
「へ~それは凄いですね……………そういえば、ロミオとジュリエットは何か手を加えて、違うお話にするんですか?ほら、なんかこう…………自分達の色を出すみたいな」
「みたいだ。どうやら台本が少しアレンジされているらしい。でも、シチュエーションや台詞などは所々、変わっているだけで後はほぼほぼ原作に忠実通りだってさ」
「あの……………拓也先輩、ちゃんと自分のクラスに興味ありますか?」
「へ?」
「だって、さっきから"らしい"とか"みたい"とか、全て伝聞系じゃないですか。それじゃあ全然、主体性が感じられませんよ」
「えっ!?そうかな!?」
「そうですよ。拓也先輩はそんな人じゃないはずでしょう?何かが起きた時にはその中心にいるというか、もっと率先して周りを引っ張っていくタイプだと思うんですけど」
「……………あれ?そう考えれば、そうかもな」
「もしかして、自分のクラスのことだけではなく文化祭そのものに興味がなかったりして」
「いや、それはない!現に俺は優梨奈のクラスが何をやるのか気になってるし、出し物をするのなら絶対に行くつもりだから」
「えっ!?拓也先輩、来てくれるんですか!?」
「当たり前だろ。むしろ、それが楽しみなんだから」
その言葉通り、その日から俺は優梨奈の………………いや、優梨奈のクラスがどんな出し物をするのか、気になる日々を過ごした。
そして、あっという間に文化祭の当日を迎えるのだった。
★
ついに文化祭当日がやってきた。
蒼最祭と呼ばれるうちの学園の文化祭は計三日間行われる。
来場者の多くは地元の人や卒業生達だ。
皆、各クラスや各部活動の出し物を非常に楽しみにしており、中でも飲食系が人気だった。
どんなイベントもやっぱり、まずは食。
食あってのイベントという共通認識がある程だ……………知らんけど。
だから、だろう。
飲食系の出し物をしているところは軒並み、気合いが入りまくっていた。
現にこうしている今も威勢のいい呼び込みの声が聞こえてくる。
「いらっしゃいませ~!!」
そして、その中に混じって響く綺麗な声。
あぁ、何て可愛くて健気なのだろうか。
清純なメイド服に身を包んだ優梨奈を見て、俺はそう思った。
ここはメイド喫茶。
そう。なんと優梨奈のクラスの出し物だった。
「がるるるる~っ!!!」
「「「ひぃっ~~~!!!」」」
俺は他の下衆共を威嚇すると同時にその汚らわしい視線に晒さないよう、優梨奈を専属メイドとして指名し、独占していた。
これは普段の関係性を使った完全な職権濫用である。
だが、これは致し方ないことなのだ!
優梨奈のような純粋無垢な少女をあんな化け物達のいる野に解き放ってはいけない。
全く………………メイド喫茶なんて一体誰が提案したのだろうか。
おかげで優梨奈が危険な目に………………って、あのメイドさんの服装、際どくないか?
全く……………け、けしからんな。
「拓也先輩~?私を指名しておきながら、どこの誰を見ているんでしょうか~」
「ひっ!?ゆ、優梨奈さんっ!?」
「知ってますか?人って、やましいことがある時、敬語になるらしいですね」
「い、いや、これは……………」
「あれ?冗談を言ったつもりなのにどうしたんでしょう?もしかして、自覚がおありとか」
「そ、それは………………あっ!優梨奈、もう交代の時間じゃないか?いや~お勤めご苦労様だな!!あ、あはは」
「そうですね……………じゃあ着替えてきますので待っていて下さい」
優梨奈は俺を汚物を見るような目で睨んだかと思うと裏に引っ込んでいった。
まさか、彼女にこんな一面があるなんて………………ゆ、優梨奈さん、マジ怖いっす………………あ、ちなみにこの後は優梨奈と色々な出し物を見て回ってから、そのままの流れで一緒に帰宅しました。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
【完結】碧よりも蒼く
多田莉都
青春
中学二年のときに、陸上競技の男子100m走で全国制覇を成し遂げたことのある深田碧斗は、高校になってからは何の実績もなかった。実績どころか、陸上部にすら所属していなかった。碧斗が走ることを辞めてしまったのにはある理由があった。
それは中学三年の大会で出会ったある才能の前に、碧斗は走ることを諦めてしまったからだった。中学を卒業し、祖父母の住む他県の高校を受験し、故郷の富山を離れた碧斗は無気力な日々を過ごす。
ある日、地元で深田碧斗が陸上の大会に出ていたということを知り、「何のことだ」と陸上雑誌を調べたところ、ある高校の深田碧斗が富山の大会に出場していた記録をみつけだした。
これは一体、どういうことなんだ? 碧斗は一路、富山へと帰り、事実を確かめることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる