窓際の君

気衒い

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私の生まれてきた意味〜未来編〜

第五話:推測

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「まず、これまでに起こったことを一つずつ整理していきましょう」

 あの職員室での一件から明けて、次の日。

 世間ではゴールデンウィークとなっており、例に漏れず蒼最学園も休みに入っている中、私は師走先生の家に赴いていた。

 善は急げということで早速、話し合いをしようということになった為だ。

「まず一つ目。あなたの父、如月拓也君の両親の事故についてだけど、これは呪いと見て間違いないわ。そして、ここからは私の仮定や推測も入るんだけど大昔、神リジオンの怒りを買いながらも結果的に助かった初代如月とその赤子の二名………………これは奇しくも事故で亡くなった拓也君の両親の数と一致する。ここから導き出されることとして、例えば、十二家の誰かが何らかの理由で命の危機から助かったとする。しかし、それは本来失われているはずの命だとしたら、同じ十二家の誰かがそれを補填させられるんじゃないかと」

「っ!?それって、つまり」

「そう。おそらく拓也君のご両親はそれによって亡くなられた………………事実、私を含めた十二家の人達は皆、拓也君のご両親が亡くなられた日にとある声を聞いてるの………………"因果は回る"と。今思えば、それは神の声だったのではないかと」

「そんな………………それじゃ、絶対に避けられない死の運命ってことですか!?先生の考えすぎってことは………………」

「如月さん……………ここからはゆりさんと呼ばせて頂くけど、あなたの気持ちもよく分かるわ。でも、次の件が私の推測をより正確なものとしてくれるわ」

「次の件?」

「ええ。ゆりさんに昨日話したのは何が起きたのかだけで詳しい中身についてはまだだったわね………………実は加害者側のリムジンには事故当時、何の異常も見られなかったの」

「えっ!?」

「運転手曰く、突然ブレーキが効かなくなったそうよ。まるで得体の知れない何かによって、阻まれているかのように………………事実、乗車前の点検でも何の異常もなかったみたい」

「………………」

「そして、驚くことはもう一つあるわ。そのリムジンに乗っていたのが何を隠そう、葉月優梨奈さんの祖母………………葉月千影さんなの」

「えっ…………そんな偶然が………………」

「リムジンは彼らの車に衝突しなければ、本来は海の中だったそうよ。だから結果的に千影さんはゆりさんの祖父母のおかげで命を拾ったのよ………………でも、彼女はその数年後に原因不明の高熱で亡くなってしまった。同じく孫の優梨奈さんも原発不明癌で……………」

「っ!?ま、まさか」

「そう。それもおそらく補填……………つまり、因果でしょうね。犠牲となったゆりさんの祖父母の分と考えれば、一応数は合うわ」

「…………初代如月と赤ちゃんの分を私の祖父母が……………それでその分を葉月さん達が…………あれ?事故って結局、私の祖父母が葉月さんの身代わりとなったんですよね?でも、祖父母は初代如月と赤ちゃんの方の補填で………………となるとそこが重複してませんか?…………………うわ~なんか、頭が混乱してきたかも」

「見ようによってはそうだけど、リジオンの考える因果はそうではないんでしょう。誰かが誰かの補填をして、またその誰かを誰かが………………と」

「えっ、それじゃあ葉月さん達の分の因果がまだ残ってるってことですか?」

「多分………………現に優梨奈さんが亡くなってからはそういったことが一度もない。つまり、このままだといつの日か誰かが因果の対象となってしまうことは避けられないということ」

「そんな……………」

「大丈夫、安心して……………とまでは断言できないけど、私はこんなことをもう繰り返させない為に今まで動いてきたわ。その結果、この因果を断ち切れるかもしれない方法を見つけたの」

「っ!?」

「今からその方法を教えるわ」








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