窓際の君

気衒い

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私の生まれてきた意味〜未来編〜

第二話:精霊

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「どうぞ」

「すみません。失礼致します」

 放課後、とある一人を除いて誰もいない職員室。

 その扉をノックした私は中にいるその人物からの了承を得てから、ゆっくりと入っていった。

 とはいってもいきなりの訪問ではない。

 事前に話したいことがあると言って、わざわざ残っていてもらったのだ。

「この度は時間を取って頂き、ありがとうございます」

「別にいいわ……………そろそろ来る頃だと思っていたし」

 中にいたのは担任の師走柚葉先生だった。

 こうして、先生を訪ねたのには大きな理由があった。

「何故、そう思ったんですか?」

「如月ゆりさん………………あなた、超常現象研究部に所属しているわね?」

「よくご存知ですね」

「そりゃご存知よ。他ならぬ、如月さんのことだもの」

「?」

「あ、それと少し言い方を間違えたわね。所属以前に超常現象研究部はあなたが設立したのでしょう?」

「っ!?何故、それを……………」

「そんなの職員室にある資料を見れば、すぐに分かる」

「なぁんだ、それで……………」

「っていうのはあまりにも味気ない答えだから、ちゃんとした理由を言うわね」

「えっ!?」

「ふふふ。その反応、懐かしいわ……………本当にって似るのね………………ボソッ」

「先生?」

「今時、超常現象なんて研究する部ないもの。それで個人的に気になって調べたのよ」

「それじゃ、職員室の資料を見たのとあまり変わらないじゃないですか」

「全然違うわよ。だって、私は部そのものよりもあなたの方に興味があるもの。他の部活の生徒でそんなことを思う人はいないわ。だから、あえて誰がどこの部に所属しているかなんて調べない……………あなたは特別なのよ」

 先生の発する何ともいえないオーラに私は飲み込まれそうになる感覚に陥った。

 目の前にいる師走先生は教室内での様子とは全く違う。

 まるで別人のように感じられた。

「……………そもそも私が先生にお話を聞こうと思ったのは我が部の副部長からの進言があったからです」

「へぇ~……………あなた程の人が右腕とするなんて一体どんな人物なのかしら?」

「睦月暁子………………中学時代からの腐れ縁です」

「睦月……………」

 私がそう言った瞬間、先生は何やら考え込むような様子で腕を組んでどこか遠くを見始めた。

「そう……………やはり、因果ね……………」

「?」

 先生はさっきから、何を言っているのだろうか………………まぁ、そんなことはどうでもいいか。

 今は他にやらなければならないことがあるんだ。

「先生……………暁子はこう言っていました。先生は今までとある目的を持って各地を転々としており、それが一段落ついたから、蒼最学園にやってきたと」

「それは訂正と補足が必要ね」

「違うんですか?」

「私は、ついこの間までとある目的を持って各地を転々としていたわ。

 そして、キリのいいところで切り上げて、再びここへ戻ってきた。

 その理由は如月ゆりさん…………………あなたがいるからよ」

「っ!?わ、私ですか!?」

「ええ」

「さっきから何なんですか!私がどうとか!私はそんな特別な人間じゃないですよ!」

「いいえ。あなたは特別よ」

「はい?」

「その様子じゃ、ご両親からは何も聞いてないのね」

「えっ!?何でここでお父さんとお母さんが出てくるんですか?」

「………………ごめんなさいね。話が逸れたわ。で?如月さんは私とどんな話をしたいのかしら?」

「そのことについてなんですけど……………まずは私の話を笑わずに聞いて頂けますか?」

「?」

 そこで私は息を大きく吸ってから、こう言った。

「先生は……………精霊って見たことありますか?」








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