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〜現代編〜
第八十八話:会合3
しおりを挟む「ほ、本当にすまなかった!!」
客室に大きな謝罪の声が響く。
頭を下げ……………というよりも皆…………特に葉月家と皐月家に向かって土下座をしているのはこの中で最も意外な人物だった。
「頭を上げて下さいよ、重吾さん」
「そうですよ。別に実害が出た訳ではないんですから」
葉月家と皐月家の当主が揃って、それを制す。
しかし、弥生重吾は頑なに頭を上げることはなかった。
「けっ。普段偉そうに他人に対して、上から目線で言ってるから、こうなる。そういう奴はな、いつか自分に返ってくるんだよ」
「ち、ちょっと卯月さん!飲み過ぎですよ!」
「うるせぇ!お前もあの時、聞いてただろうが!偉そうに俺に講釈垂れやがって……………何が、子供達には背負わさずに自由に生きて欲しいだよ。他人の教育方針に口出しやがって。その癖、自分のところは自由にやらせた結果、甘やかされてわがままに育ってんじゃねぇか………………それが今回の発端なんじゃねぇのかよ。えぇ?おい」
「卯月さん!!」
「皐月、いいんだ。卯月の言う通りだ。今回のことは私に全て責任がある」
「重吾さん…………」
「私は常日頃から十二家と娘を関わらせないよう、細心の注意を払い生活してきた。その為ならば、娘の望みは何でも叶えてきた。結果、娘は自分の思い描いたことは望みは何でも叶うと勘違いし、わがままに育ってしまった。だから、周りからは人が離れていき、親しい友人など一人もいなかったのだろう。私には隠していたつもりのようだが、時折遠くを見るような目をすることがあり、娘は満たされていないのだと悟った……………それがどうしたことか、最近ではとても生き生きとするようになり、毎日が楽しそうだった。そう。娘が本当に欲しかったのは物ではなかったんだ。娘は遂に本当に欲しかったものに巡り会えた…………………私はそれが嬉しかったんだ」
「……………弥生さん。娘さんがあんなことをしたのは本当にうちの娘のことが気に食わなかったからなんでしょうか?話を聞く限りではとてもそうは……………」
「それはそうでしょうね」
と、その時。
そんな声と共に突然襖が開け放たれ、そこからとある人物達が姿を現した。
「重吾さんの娘さんは出会ったばかりの大切な二人に唆されて、今回このようなことをしてしまった。そして、その二人に入れ知恵をしていたのは………………水無月さん、文月さん………………あなた達ですね?」
師走柚葉、霜月家の面々、さらには神無月家。
これ以上ない程の猛者だった。
「っ!?な、何を根拠に……………」
「そ、そうですよ!あれは娘達が勝手にやったこと!言い掛かりはよして頂きたい!!」
「前々から、あなた達の行動には不信感を持っていました。だから、今回のことにも非常に納得がいったのですが……………そうですか。しらばっくれる気ですか」
「し、証拠を出せ!!」
「そ、そうだ!!こ、こんな失礼な態度をとりおって!名誉毀損で訴えてやるぞ!!」
「どうぞ。ご勝手に……………ただし、その時は」
そこで口火を切った師走柚葉を筆頭に霜月家・神無月が二人に対して、睨みを効かせた。
「私達全員がお相手致しますが」
「「ひっ!?」」
「あ、それが卑怯というのなら、皐月家に事の真偽を調べて頂きましょうか?ちょうど証拠が欲しそうでしたし」
「師走さん。もう調べてありますよ」
「あら?仕事が早いですね~……………で?どうします?」
「「す、すみませんでした!!」」
「あなた達には追って処分を下します………………で、いいですよね、ソフィアさん?」
「ですね。ただ、いつもそうですが子供達は何も悪くありません。むしろ、被害者です。私達、大人の事情によって常に振り回されてしまっています。なので、この処分が子供達にとって辛くならないものにしなければなりません」
「「霜月さん……………」」
「あ、かといって軽くはしませんよ?……………私達は重吾さんのように甘やかしはしませんから」
「「ガーーーン!!」」
「ぐっ。何も言い返せん」
「「「「「あははははっ!!!!!」」」」」
客室中に笑いか響き合う。
少し前までであれば、このような空気はあり得なかっただろう。
そう。
何も変わっていたのは子供達だけではなかったのだった。
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