窓際の君

気衒い

文字の大きさ
上 下
24 / 140
〜現代編〜

第二十四話:相談

しおりを挟む

「お二人とも、ご心配をおかけしてすみませんでした。お言葉に甘えて、何があったのか話させて頂きます」

 お互いを名前で呼び合うという青春の一コマのような時間を過ごしていた俺達だったが優梨奈の一言により、ハッと我に返った。

「…………無理はしなくていいんだぞ?」

「いいえ。お二人にはぜひ知って頂きたいんです。その……………お友達ですから」

「そうか」

「………………か、かわいい」

 顔を赤くしながら言う優梨奈。

 それに対して、横で何か聞こえたような気がするが……………まぁ、いいだろう。

「じゃあ、改めて訊くぞ。あの日、何があった?」

「はい。実は」

 それから優梨奈は今まで隠してきたことを話してくれた。

 本人にとっては思い出したくもない、その上、現在進行形で辛い思いをしているにも関わらず、全てを語り終えた時には非常にスッキリとした顔をしていた。

 おそらく、溜まっていたものを吐き出したかったのだろう。

 いくら元気で優しい彼女でもストレスが溜まることもあるだろうし、マイナスの感情に陥ることもある。

 それが人間ってものだ……………あれ?俺は一体誰目線なんだ?

「本当よ。あなた、一体何様なの?」

「聞こえてたのか!?」

「あなたのうるさい顔がそう言ってるの」

「なるほど。顔を見れば、心の声が分かるほど、お二人は仲良しさんなんですね」

「っ!?そ、そんな訳ないじゃない!!」

「そうだ!俺には未だにクレアの心の声が聞こえないぞ!」

「それは単にあなたが鈍いだけじゃない?」

「ふふふ」

 俺達のそんな他愛もないやり取りを優しい顔で見守る優梨奈。

 そこにはさっきまでの暗く沈んだ彼女はもういなかった。

「で、今後どうするかだが」

「そうね。何かしらの対策は必要ね」

「えっ!?」

「ん?何を驚いているんだ?」

「まさか、この状態をずっと放置しておく気なの?」

「いえいえ!ですが、あの人は何か危険です!もしも、お二人の身に何かあったら……………」

「それを言ったら、優梨奈もだろ?お前が俺達のことを心配してくれているように俺達もお前に何かあったらと心配なんだ……………な?クレア」

「べ、別に私はそんな……………」

「あ、ありがとうございます拓也先輩!クレア先輩!!」

「ちょっと!私は心配だなんて一言も……………」

「さてと……………じゃあ、どうするか話し合いますか」

「ですね」

「はぁ…………」

「クレア先輩」

「何?」

「素直じゃないですね」

「…………あなたに比べたらね」

「ふふふ。でも、そんなクレア先輩も私は好きですよ」

 そこでふっと微笑んだクレアは小さな声でこう言った。

「全く……………よく言うわ」





        ★





「くっそ~!あいつら、ちょこちょこ固まりやがって!!僕だけの優梨奈なのに!!」

 学食にて、楽しそうにしている拓也達を遠目に見ながら苛立ちを露わにする男がいた。

 男は特に何かを注文するでもなく、誰かと待ち合わせているといったこともなく、ひたすら水だけを飲んでいる為、周りからは奇異の目で見られていた。

 それでなくとも双眼鏡でどこかを見ながら、ブツブツと独り言を言っている為、完全に不審者扱いをされてしまい、彼の周りの空間だけがポッカリと穴が空いてしまっていた。

 だが、それでもこの場を追い出されることがないのは彼が学園の制服を着ているからだろう。

「特にあの如月とかいう男が邪魔だな!!全く!優梨奈は清純で明るい元気な女の子なんだ!!それが何だって、男なんかと!!これはあれだな…………完全に浮気だ!!」

 加速度的になっていく独り言はとうとう彼の周囲、半径一メートルから人気をなくした。

 学食のおばちゃんも思わず、男の方を引いた目で見ている。

「……………」

 と、そんな中、男のことを意味ありげな表情で見る女子生徒がいた。

 しばらく、そのままでいた女子生徒は昼休み終了五分前のチャイムを聞いた途端、その場から姿を消した。

 当然、その頃には学食からほとんどの生徒がいなくなっていたが、例の男だけは相変わらず独り言を呟いていたのだった。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

おしがま女子をつける話

りんな
大衆娯楽
透視ができるようになった空。 神からの司令を託され、使うことに......って、私的に利用しても一緒でしょ!

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

【完結】碧よりも蒼く

多田莉都
青春
中学二年のときに、陸上競技の男子100m走で全国制覇を成し遂げたことのある深田碧斗は、高校になってからは何の実績もなかった。実績どころか、陸上部にすら所属していなかった。碧斗が走ることを辞めてしまったのにはある理由があった。 それは中学三年の大会で出会ったある才能の前に、碧斗は走ることを諦めてしまったからだった。中学を卒業し、祖父母の住む他県の高校を受験し、故郷の富山を離れた碧斗は無気力な日々を過ごす。 ある日、地元で深田碧斗が陸上の大会に出ていたということを知り、「何のことだ」と陸上雑誌を調べたところ、ある高校の深田碧斗が富山の大会に出場していた記録をみつけだした。 これは一体、どういうことなんだ? 碧斗は一路、富山へと帰り、事実を確かめることにした。

処理中です...