窓際の君

気衒い

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〜現代編〜

第十五話:お昼ご飯

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「あれ?」  

「どうした、優梨奈?」

「なんか最近、変な視線を感じるんですよね」

 昼休み。

 学食で飯を食っている最中、優梨奈が何やら不穏なことを言い始めた。

 ちなみに霜月はずっと静かに食べていた。

「怖いこと言うなよ」

「もしかして、私を狙っているストーカーさんがいたりして………………うわ~気味悪い。ストーカーなんて犯罪ですよ。今時、流行りません」

「全くだ!!」

「それをあなた達が言うのかしら?」

「「うっ」」

 俺と優梨奈は揃って、出所が不明の声を上げ、思わず飯を喉に詰まらせそうになった。

 急にこいつはなんてことを言い出すんだ。

「身に覚えがないとでも?」

 いえ、バリバリあります。

 その節はすんませんした!!

「まぁ、あなた達の場合は悪意や邪な気持ちがそこまでなかったから目を瞑るとして………………」

「「そうして頂けると非常に助かります」」

「話を変えるわね。葉月さん、今日あなたをお昼に誘ったのは私情からではないわ」

「えっ、そうなんですか!?私はてっきり、霜月先輩が私とお昼ご飯を食べたいのかと……………」

 そう言って、シュンとなる優梨奈。

 それに対して、霜月は慌てて、こう言い直した。

「べ、別にそれだけが理由ではないわ。もろちん、あなたともお昼を一緒したいっていうのもあるわよ。まぁ、ついでたけど」

「そうなんですか!良かった~」

 その瞬間、パァッと表情が明るくなる優梨奈。

 本当にこの子はコロコロと表情が変わるねぇ~。

「こほんっ。それで葉月さん、あなたに用とは」

「はい」

「とある友人の相談に乗って欲しいのよ」

「友人?」

「ええ。その友人には好きな人がいるんだけど、その相手がどうやら学園でも超がつくほどの人気者で高嶺の花らしく、なかなかお近付きになれないそうなの」

「へぇ~そうなんですか。その方、勇気がありますね」

 俺は心の中で優梨奈と全く同じ反応をした。

 へぇ~そんな奴がね~まぁ、それは勇気じゃなくて無謀…………ん?ちょっと待て。

 こいつに友人なんていたか?それになんか相談の内容がごく最近、身近で行われたもののような…………って!!

"おい、霜月!!"

 俺は思わず、優梨奈に聞こえないよう小声で霜月へと問いかけた。

"何?"

"その友人って俺のことだろ!!優梨奈にバラす気なのかよ!!"

"安心して。その友人はあなたのってことにするから"

"おい、まさか圭太を巻き込む気か?"

"いいえ。誰でもいいから、クラスメイトを友人ってことにすればいいわ。どうせ、話の中だけの登場人物だし。葉月さんに会わせなければ、どうってことないわ"

"そうまでして、どうして…………"

"あなたの目は節穴だから分からないでしょうけど、葉月さんはとても優秀よ。この子の協力があれば、あなたの目的達成も夢じゃないわ"

"くっ…………言い方は気に食わないが、目的が達成されるともなれば、是が非でもお願いしたいな"

 そこまで言って、会話をやめる俺達。

 小声だった為、自然と距離が近くなっていたようですぐに身体も離した。

「二人とも、コソコソ話はもう終わりましたか?」

 そして、それを見逃す優梨奈ではなかった。

 何故だろう?笑顔なのにそこはかとないプレッシャーを感じる。

「本当に二人は付き合ってないんですよね?」

「あ、当たり前だろ!!」

「怪しい……………でも、まぁ今はいいです。それよりもそのご友人の相談に乗る方が大事ですし」

「ほっ」

「霜月先輩、一つお聞きしてもいいですか?」

「何かしら?」

「その方は想い人とどういった関係なんですか?」

「そうね。一言で言えば、完全な片想い。去年も同じクラスになっていたにも関わらず、話した回数は片手で数えられる程。挨拶をされたぐらいで舞い上がるくらいよ」

「ふぇ~…………その方は非常に奥手、言い方を悪くすると消極的な方なんでしょうか?」

「いいえ、そんなことはないわ。それどころか時々、とんでもない行動力を見せる時があるわ。でも、こと好きな人に対してはてんで駄目。挙動不審になって、気が付けば相手がいなくなってしまっているのが現状ね」

「う~ん。なんか取り付く島がないって感じですね」

 俺は彼女達の容赦ない言葉によって、ボディブローを何回も決められてテーブルに突っ伏した状態になっていた。

 優梨奈に至っては一切の悪気がないのが余計に効く。

 霜月は内心、小馬鹿にしているだろうから、後で覚えとけよ。

「はっきり言って、その方は相手にとって100%眼中にないと思います」

「ぐはっ!?」

「拓也先輩!?」

「ぷぷっ」

 俺は遂に最後の一撃を加えられ、仰け反ってから顔をテーブルへと押し付けた。

 その際に霜月が笑いを堪えているのが見え、腹が立ったのは言うまでもない。

「大丈夫ですか!?」

「あ、ああ……………それで?優梨奈としてはその無謀な友人はどうしたらいいと思う?」

「こんな時でも人の心配をするなんて、拓也先輩は流石です!!」

「やめて!!そんな純粋な瞳で俺を見ないで!!」

「ぷぷっ」

「そこ、笑うな!!」

 その後、"少し考えさせて下さい"と言って頭を悩ませ始めた優梨奈は約五分後、思いもよらない提案をしてきたのだった。

「まずは仲良くなることが大事です。なので………………みんなで旅行みたいなことをしてはいかがでしょう?」





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