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学園編
生徒会2
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「わざわざご説明いただき、ありがとうございます。ですが、リンダ先輩。私に様はつけないでくださいまし。アニーと呼んでくださって結構ですわ。学園では私の方が先輩方から教えを乞う立場にありますから」
そうアンナルチアが言うと、アマリアが両手を胸の前で握りしめ立ち上がり、感極まる吐息を吐いた。
「まあっ!まあっ!なんて可愛い子なのかしら。アレックス、この子は絶対生徒会に入れるべきですわ。なんなら私の下につけたいくらいです。貴女、アンナルチアさん、違ったわ、アニーさん、会長補佐の仕事を任されませんこと?」
「いやいや、アマリア、落ち着いて。新入生にそれは無理だよ。それこそ学年が違う」
暴走気味のアマリアを見てアレックスが慌てて口を出す。
「ああ、そうね、そうだったわ。残念だわ、ここが学園でなければ私の侍女にしますのに…!」
「いや、仮にも彼女伯爵令嬢だから、侍女はないでしょ」
「何よ、王子妃になれば無理ではないでしょ?悪いようにはしないわ」
王子妃の侍女。給金レベルはどうだったかな。単なる王宮侍女よりはいいはずだ。護衛騎士の道も開けるかもしれない。それはそれで、悪くないかもしれないとアンナルチアの眉がピクリと動く。いや、待てよ。王子妃とは言え第二王子ということは侯爵家に入ってしまうということか。そうなると数年で仕事にあぶれてしまう。それは良くない。
「いや、私は侯爵家に婿入りする予定だし、君は侯爵夫人になるんだろう?」
「…そうだったわね。奨学金制度の利用者は三年は王宮勤め必須だし。アレックスが王太子だったら良かったのに」
「やめてくれよ。兄上に勝とうなんて天地が逆さになっても無理だ」
「不甲斐ないわね」
不敬とも取れるやり取りに、冷や汗をかきながら笑顔を貼り付けドキマギしていると、ルークが苦笑しながらアンナルチアの肩をポンと叩いた。
「ごめんねアンナルチア嬢。気を悪くしないでほしい。アマリアはよく暴走するんだよ。可愛くて賢い女の子が大好きだからね。リンダの時も酷かったんだ。これはもう恒例の儀式として受け取ってもらうしか仕方ない」
まあ、とアマリアが頬を膨らまして怒ったふりをした。美人は何をやっても美人なんだ、とアンナルチアは頭の隅で考える。
「私の入学時はフロイド様と当時のご婚約者のナターリエ様にずいぶん扱かれましたわ。私の暴走なんて可愛いものでしてよ」
「ああ、あの頃も僕らは兄上たちに翻弄されたよね」
どうやらアレックス第二王子殿下とアマリア侯爵令嬢はもちろんの事、ルーク様も一年生の時から生徒会に入っていたようだ。ソル様とリンダ様はタイとリボンの色から現在二年生で、王太子殿下の時代にはいなかったので「幸いだったわ」と呟いて、肩をすくめるだけだった。
ちなみにフロイド第一王子は学園時代に立太子され、年末に婚約者だった隣国の姫君であるナターリエ様とご成婚された。アンナルチアは知らなかったが、学園へはおそらく留学という形でいらしていたのだろう。聞く限りご兄弟の仲はいいし、アレックス第二王子は王太子ご夫妻にお子が生まれたらランドール侯爵へ入婿になるようだ。でも王太子ご夫妻は仲睦まじくきっとすぐにもお子が生まれるだろうと期待されている。我が国は将来も安泰らしい。
「それでは生徒会諸君、アニー、ことアンナルチア嬢を生徒会役員として正式にお願いしても大丈夫かな?」
アレックスが声をかけると、皆が賛成の意を唱えた。
「ではアニー、私たちは共に切磋琢磨する仲間だ。これからは呼び捨てで構わない。学園を清く正しく導こうではないか」
「はい。不束者ですが、どうぞよろしくお願いします」
頭を下げようと思ったら、アレックスに手を差し出された。少し躊躇したが、仲間ということで握手を求めたのだろう。アンナルチアがおずおずと手を出すと、ぎゅっと握りしめられた。
仲間。なんて素敵な響きなんだろう。領地では一応伯爵令嬢として扱われ、勉学に励んでいたこともあって友達と呼べる人もともに目標を目指すような人もいなかった。いたのは人生の教師となり得る両親と図書館の司書たちと働き者の領民たちだけ。仲間意識はあったけれど、仲間とは言い難い関係だった。
それが入学もまだなのに、既に仲間ができたことにアンナルチアは浮き足だった。
頬を少し赤らめて瞳をキラキラさせてはにかんだアンナルチアを、上級生たちは微笑ましく見守った。
「困ったことがあれば、なんでも相談するようにね」
そう言ってルークがポンと頭を撫でた。突然アンナルチアの世界に兄姉ができたようで、アンナルチアは初めて13歳の子供らしく微笑んだ。
「はい。ありがとうございます。ええと…ルーク、先輩」
ちょっと照れてしまったが、それを見たアマリアが「私の妹とは大違いだわ!なんて可愛いの!」と撫でくりまわしてきたので、すっかり緊張も溶けてしまった。
それまですっかり影を潜めていた学園長がよかったよかった、とアンナルチアの肩を叩き、入学式の段取りを説明した。朝会で生徒解放の挨拶の後、アンナルチアが新入生の宣誓をすること、クラスルームの後で生徒会室に集合すること、奨学金制度の書類に両親のサインが必要なことなどを簡単に説明してくれた。また奨学金制度の見直しは毎年あり、年に3回ある試験の結果も監査の対象になる。その時に特定レベルに足りなければ容赦なく奨学金は取り下げられ、自腹で学園に通うか自主退学するかを求められるらしい。生徒会で活動することは有望枠に入れられ、将来の職業斡旋も王宮だけではなく幅が広がるらしい。
ますます頑張らねば、とアンナルチアは気合を入れ直した。
そうアンナルチアが言うと、アマリアが両手を胸の前で握りしめ立ち上がり、感極まる吐息を吐いた。
「まあっ!まあっ!なんて可愛い子なのかしら。アレックス、この子は絶対生徒会に入れるべきですわ。なんなら私の下につけたいくらいです。貴女、アンナルチアさん、違ったわ、アニーさん、会長補佐の仕事を任されませんこと?」
「いやいや、アマリア、落ち着いて。新入生にそれは無理だよ。それこそ学年が違う」
暴走気味のアマリアを見てアレックスが慌てて口を出す。
「ああ、そうね、そうだったわ。残念だわ、ここが学園でなければ私の侍女にしますのに…!」
「いや、仮にも彼女伯爵令嬢だから、侍女はないでしょ」
「何よ、王子妃になれば無理ではないでしょ?悪いようにはしないわ」
王子妃の侍女。給金レベルはどうだったかな。単なる王宮侍女よりはいいはずだ。護衛騎士の道も開けるかもしれない。それはそれで、悪くないかもしれないとアンナルチアの眉がピクリと動く。いや、待てよ。王子妃とは言え第二王子ということは侯爵家に入ってしまうということか。そうなると数年で仕事にあぶれてしまう。それは良くない。
「いや、私は侯爵家に婿入りする予定だし、君は侯爵夫人になるんだろう?」
「…そうだったわね。奨学金制度の利用者は三年は王宮勤め必須だし。アレックスが王太子だったら良かったのに」
「やめてくれよ。兄上に勝とうなんて天地が逆さになっても無理だ」
「不甲斐ないわね」
不敬とも取れるやり取りに、冷や汗をかきながら笑顔を貼り付けドキマギしていると、ルークが苦笑しながらアンナルチアの肩をポンと叩いた。
「ごめんねアンナルチア嬢。気を悪くしないでほしい。アマリアはよく暴走するんだよ。可愛くて賢い女の子が大好きだからね。リンダの時も酷かったんだ。これはもう恒例の儀式として受け取ってもらうしか仕方ない」
まあ、とアマリアが頬を膨らまして怒ったふりをした。美人は何をやっても美人なんだ、とアンナルチアは頭の隅で考える。
「私の入学時はフロイド様と当時のご婚約者のナターリエ様にずいぶん扱かれましたわ。私の暴走なんて可愛いものでしてよ」
「ああ、あの頃も僕らは兄上たちに翻弄されたよね」
どうやらアレックス第二王子殿下とアマリア侯爵令嬢はもちろんの事、ルーク様も一年生の時から生徒会に入っていたようだ。ソル様とリンダ様はタイとリボンの色から現在二年生で、王太子殿下の時代にはいなかったので「幸いだったわ」と呟いて、肩をすくめるだけだった。
ちなみにフロイド第一王子は学園時代に立太子され、年末に婚約者だった隣国の姫君であるナターリエ様とご成婚された。アンナルチアは知らなかったが、学園へはおそらく留学という形でいらしていたのだろう。聞く限りご兄弟の仲はいいし、アレックス第二王子は王太子ご夫妻にお子が生まれたらランドール侯爵へ入婿になるようだ。でも王太子ご夫妻は仲睦まじくきっとすぐにもお子が生まれるだろうと期待されている。我が国は将来も安泰らしい。
「それでは生徒会諸君、アニー、ことアンナルチア嬢を生徒会役員として正式にお願いしても大丈夫かな?」
アレックスが声をかけると、皆が賛成の意を唱えた。
「ではアニー、私たちは共に切磋琢磨する仲間だ。これからは呼び捨てで構わない。学園を清く正しく導こうではないか」
「はい。不束者ですが、どうぞよろしくお願いします」
頭を下げようと思ったら、アレックスに手を差し出された。少し躊躇したが、仲間ということで握手を求めたのだろう。アンナルチアがおずおずと手を出すと、ぎゅっと握りしめられた。
仲間。なんて素敵な響きなんだろう。領地では一応伯爵令嬢として扱われ、勉学に励んでいたこともあって友達と呼べる人もともに目標を目指すような人もいなかった。いたのは人生の教師となり得る両親と図書館の司書たちと働き者の領民たちだけ。仲間意識はあったけれど、仲間とは言い難い関係だった。
それが入学もまだなのに、既に仲間ができたことにアンナルチアは浮き足だった。
頬を少し赤らめて瞳をキラキラさせてはにかんだアンナルチアを、上級生たちは微笑ましく見守った。
「困ったことがあれば、なんでも相談するようにね」
そう言ってルークがポンと頭を撫でた。突然アンナルチアの世界に兄姉ができたようで、アンナルチアは初めて13歳の子供らしく微笑んだ。
「はい。ありがとうございます。ええと…ルーク、先輩」
ちょっと照れてしまったが、それを見たアマリアが「私の妹とは大違いだわ!なんて可愛いの!」と撫でくりまわしてきたので、すっかり緊張も溶けてしまった。
それまですっかり影を潜めていた学園長がよかったよかった、とアンナルチアの肩を叩き、入学式の段取りを説明した。朝会で生徒解放の挨拶の後、アンナルチアが新入生の宣誓をすること、クラスルームの後で生徒会室に集合すること、奨学金制度の書類に両親のサインが必要なことなどを簡単に説明してくれた。また奨学金制度の見直しは毎年あり、年に3回ある試験の結果も監査の対象になる。その時に特定レベルに足りなければ容赦なく奨学金は取り下げられ、自腹で学園に通うか自主退学するかを求められるらしい。生徒会で活動することは有望枠に入れられ、将来の職業斡旋も王宮だけではなく幅が広がるらしい。
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