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おまけ:女神の小言
しおりを挟むそよそよと吹くそよ風に銀の髪を靡かせながら、一人の女神がため息をついた。
「はぁ~~、インテンスだったわぁ。このまま無限ループだったらどうしようかと思っちゃった、もー」
花粉がいけないのよ、花粉が。
そもそも姉様の世界の真似事をして、天界に擬似世界なんか作るからいけなかったのだ。私のせいだけど!
女神は無菌室にいるようなものだ。環境汚染に弱かった。
手折れば枯れてしまう様なきれいなお花に花粉があるなんて思いもしなかった。
思えば、その過去にも姉様の世界の勇者なんてモンがかっこいいと思い、自分の世界にもと思ったのがいけなかった。物事は全て陰と陽、表と裏がある。善がいれば悪がいるのは世界の理だ。それを忘れて勇者と賢者と聖女となんて作ったものだから、悪が生まれ、愚者が生まれ、魔女が生まれた。
そして戦争が起こり、正義を振りかざす勇者が驕り高ぶり、悪が寄せ集まって魔王になり、愚者はますます愚者になり自堕落になった。魔女達が額を寄せ合わせ魔族ができ、賢者は我が道を行って精霊になってしまった。それからというもの核分裂を繰り返す細胞達はあっという間に増えて、世界にそれぞれの秩序を造ったまでは良かったのだけど。
世界は案外狭かった。
いや、皆が私を信仰してくれればまだ良かった。でも私を信仰する人が皆無!ここ大事!皆無って何!?
その間に悪さをして命を落とした魔族が、伝道師になって女神の良さを人々に伝えるっていうから輪廻の輪に入れてあげたのに全然チャンネル合わせてくれないし、そう思ってため息をついた隙に思いっきり道外してるし!魔族(の生まれ変わり)は周りを巻き込んで坂道を転がるように愚者になり、ますます悪さをした。なんで魔族なんかに私の信仰を任せたのか、自分で自分がわからない。
あのクソ悪魔。トイレ掃除300年でも足りないわ。早いとこ連れ戻して清浄しないと私の世界が汚れまくっちゃう。最後にもう一人クソ悪魔の軌道訂正をさせようと、魔族の魂4分の1と私のまつ毛を練って併せて二で割った魂に後追いさせたら、まんまと飲み込まれて小蝿の様になってるし、もー!ほんとに、もー!!悪魔は業が強すぎた!二度と輪廻に入れてやらない!
その上、私の爪の垢で作った可愛い分身ちゃんを探しても探しても見つからないから、どこに行ったのかと思って覗き込んだら、くしゃみ暴発。しまった、と思った時には下界へぽっちゃん。おかげで私の分身ちゃん見つけられたけど、何あれ!汚されてるじゃないの!あれもあのクソ悪魔のせい!?もー許せない!
ちょっと!分身ちゃんに与えた私の魔力どこ行っちゃったのよ、あんな死にそうな魔力しか残ってないじゃないの!これじゃ浄化もままならないわ。
そうだ、リセット!
姉様の世界でそんなのがあったわ。げえむとかいうやつ。何度死んでも蘇るしプレイするたび選択肢が変えれるから面白い。終わらせても失敗してもリセットすればまた初めからスタートできちゃう、そんなすごいのがげえむといってた。
じゃあ、それポチッとな。
そうそう、思い通りに動いてちょうだいね。ついでに今死にそうだから、パワーアップさせとくわ。後お助けくんの君にもちょっとお裾分け、と。チームバランスって大事よね。
ちょっと、何また死んでるのよ、あんた何回死ねば気がすむの!?いい加減怒るわよ。いや、ダメダメ、私が怒ったら世界飛んじゃう。もー、しょうがないからもうちょっとだけ手助けね。はい飛んで飛んで、はい回収~。よくできました。じゃ後はお好きにどうぞ。
あ、「飛翔の翼」は返してもらうわね~、まだ新種族は欲しくないから。……ああ、でも竜人とか鳥族とかいても楽しいかも……。
まあ、クソ悪魔、それで懺悔してるつもり?悪態ついてるじゃないの!全然反省の色なしね。やっぱり500年トイレ掃除の罰ね。え?増えてる?誤差よ、誤差!その後はしょぼい畑の地虫に転生させよう。ちょっとは私の世界に役立ちなさいよっ!
さて、私の分身ちゃん。ようやく綺麗になったみたいね。良かったわ。これからもうちょっと役に立ってもらわなくちゃ。お助け君も無事リンクできたし。そう言えば、精霊になった賢者の群れがいたわねぇ。あれももうちょっと役に立ってもらおう。
手始めに北の大陸から始めましょうか。ちょっと魔力の無駄遣いしてて、チカチカドンパチ鬱陶しいのよね。クソ悪魔が増長したのもこいつらのせいみたいだし。この辺の加護はもう全部外しちゃおっと。コレからは自力で生きなさいな。
ああ、でもこの世界の人たちちょっと休ませるとあっという間に年取って死んじゃうし。手助けが必要になるかしらねぇ。分身ちゃんに私のこと広めてもらおっかな。
とっとと神託おろしちゃえ。
「メリアン、メリアン。聞こえますかー?」
-- FIN --
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