23 / 29
降臨した少女
しおりを挟む
「それでは、行って参ります」
メリアンがそう言うと、全員が神妙な顔になり頷いた。
亜空間にしまう書類は全て準備が整い、すでに録音、録画された魔石と共にジャックの手の中にあった。
「<解錠>」
と短い一言で宙に闇が浮かび上がり、その中に書類を入れる。
巻き戻った後すぐに放送される魔石は、ジャックの魔力でスピーカーに繋げられ、巻き戻ったジャックが起動させる事で発表される手筈になっている。もちろん初めての試みなのでうまくいくとは限らないが。
「これがうまくいったら画期的発明だなあ」
「遠隔ですものね。スピーカーさえ取り付けられれば、僻地でも王都のニュースがすぐに伝えられるんだもの。情報伝達が格段に速くなるわ」
「理論ではうまくいくはずだが、なにせ巻き戻ると言うのがな。しかもその後で俺たちは覚えていないと言うから何か腑に落ちない」
ライオットとジャクリーンがなんともいえない顔でぶつぶつ言っているのを、横目で聞きながらメリアンはジャックに向かって大きく頷いた。
「もしこの件が成功して、戻って来たらわたくし魔導士の試験を受けますわ」
「ああ。是非一緒に画期的な発明をしよう。神なんていなくても世界が回っていくように」
「楽しみですわ」
ふふっと笑ったメリアンは、きゅっと顔を引き締め、いざティアレアの待つ黒部屋へと向かった。
扉を開けると、魔導士のマントにくるまったティアレアが部屋の隅にうずくまっていた。
ゴクリ、と喉を上下させメリアンはするりと部屋の中に入り込む。ずしりと圧迫感を感じたが、これは黒部屋の環境がそうさせるのだろう。さりげなく魔力を練ろうとしたがうまくいかなかった。この中でも、きっとティアレアは神聖魔法を使うことができるのだろうが、メリアンは丸腰だ。心もとない気持ちを振り払い、一歩前へ進み入れると、ティアレアがの頭がゆっくりと上がりこちらを見据えた。
大きな金色の瞳には涙が溢れ、ずっと泣いていたのか頬が紅潮している。儚げで、今すぐにも抱きしめたくなるようなティアレアの風貌にメリアンはヘニョリと眉を下げた。
――これは……。確かに抗い難いわね。
どちらが声を発するでもなく、立ちすくんでいると、最初に沈黙を破ったのはティアレアだった。
「わからないの」
嗚咽を我慢しながら、ひくっひくっと肩が上がる。
「あんなこと、したいわけじゃなかったの」
「……あんなこと?」
「神々の雷……、あんなの知らなかったの」
「そう、ね。あなたは<慈愛の雨>を使いたかったのよね?」
「そう、なのに。なんであんな、ひどい……っ」
前回とは違って、今回のティアレアは落ち着いていた。これなら、いけるかも知れない。話し合いに持ち込んで、時間を巻き戻らなくては。メリアンはゆっくりとティレアに近づいてその隣にしゃがみ込んだ。
「ねえ、ティアレア。わたくしあなたの力になりたいの。覚えていることを教えてくれないかしら」
「お、覚えてること?」
「そう、どうやってこの世界に落ちて来たのか、覚えてるかしら?」
「どう、やって…?」
ティアレアはメリアンの言葉を理解しようと首を傾げた。
――この子は、まるで何も知らないんだわ。幼子のように無垢で、なんでも素直に聞き入れる。
「わからないの。でも、突然空に投げ出されて、肉体を持ったわ。それが窮屈で、重たくてどんどん沈み込むような感じで。気がついたらここにいたの。そしたら、いっぱい人に囲まれて、怖かった」
「そう、そうよね。怖かったのよね……。こんな知らないところに投げ込まれて、いきなり大勢に囲まれたんだもの」
「でもね、キラキラした人は優しかった。守ってくれるって言った。だから、守ってもらったの。なのに、みんな怖い顔をして、あたし……やっぱり、怖くてっ」
ポロポロと涙をこぼすティアレアに、メリアンはそっと寄り添いその背をゆっくり撫でた。
「それで、みんな怖い顔、するからっ、優しい気持ちになるようにって思って」
――慈愛の雨を使ったの。
「その後は?」
「……真っ白になって…。気がついたらまた空に浮かんでて、元いた場所に戻りたかったのにっ、帰れなくて」
――つまり神々の雷の後は何も残らなかった、と言うことかしら。おそらくティアレア自身も消えてしまった、と考えられる。そして時間が戻って。
「わたくしね、女神様から正しい道を選ぶようにって時間を巻き戻されたの」
「女神様…?」
「ええ。たぶん。ただ、わたくし、神とか悪魔とか信じてなくて。だからそれが女神だったのか、悪魔だったのかはわからないの。でもね、こうやって貴方と話し合う前に、何度もやり直しをしたわ。本当にうんざりするほどね」
「あ、あたしもそれはわかったわ。何度も何度も、空から落ちてくるの。無限に続くんじゃないかって、すごく怖かったの!それに毎回ここに着くと違うことが起こるから、あたしどうなっちゃうのかなって。優しかったキラキラした人が現れなくて、代わりに黒い服を着て、顔も見えない人ばかりに囲まれて、どうしてって」
魔導士達だ。殿下は顔を出すなと伝えて、騎士も聖騎士も現れず、黒マントを羽織った人たちが顔も見せずに取り囲んで。
「それは、悪かったわ。……ごめんなさいね」
威圧感で怖気付いて、ひどい目にあったって思われても仕方がない。
「……貴女のことは覚えてた。とても綺麗な銀の髪で、私の知っている誰かに似ていて。懐かしいと思ったの。でも貴女はものすごく怒ってて、持ってる力がひどく禍々しくて。だから消えてしまえって思ったの。それが、いけなかったのかも知れない」
「ま、禍々しい……?わたくしの、魔力が?」
ティアレアはじっとメリアンをみると、ふるふると頭を横に振った。
「今も、肩から頭の辺りに黒い魔力が渦巻いてる。でも、それって貴女の魔力じゃないみたい」
「……!」
――それは。
「ティアレアには、それがわかるのね?」
「うん。貴女が本来持ってる魔力は暖かくて優しい。強くて眩しい力。あたしの知ってるチカラ……」
ティアレアの知っている力。魔力。それは聖魔力の事だろうか。黒い魔力というのは、メリアンの記憶を隠している何か、邪悪なチカラ?もしかして、ティアレアならば。
「この黒い魔力、消すことはできる?」
「えっ…」
「わたくしね、子供の頃の記憶がないの。神殿で何かあったのだと思うのだけど」
「神殿……」
「7歳より前の記憶を思い出そうとすると頭痛がして思い出せないのよ。それがもし、その黒い魔力に覆われているから、なのだとしたら。その黒い魔力を消して仕舞えば、記憶が戻るかも知れないと思うの」
「……わ、わかんない。だって、もし失敗したらまた、」
「ふふ。そうしたら、また時間が戻るだけよ。貴女には悪いけど、また天から降りてくるところから始まるんだわ」
「……いやよ」
「ティアレア」
「だって!あたしはここにいるの!貴女と話もできた!貴女のそばにいたら、きっとあたし、ここで生きていける!そうでしょ!?怖い人のいないところで、一緒に生きて!ね!?できるよね?」
ティアレアから漏れる魔力が部屋を揺らした。メリアンは圧力を感じてぐっと腹に力を入れる。魔法が使えないから、自力で踏ん張るしかないが、それを淑女に求めるのは間違っているだろう。メリアンの体は部屋の端まで吹き飛び壁に激突した。
「ごふっ」
血を吐き出して床に落ちる。骨が折れたか、内臓破裂か。これで死んでらまた戻るだけだけど、痛い。
「くぅ……っ」
「あっ!……っああっ!また、あたし…!」
ティアレアは慌ててメリアンに駆け寄り、上半身を無理やり抱き上げた。
「グゥッ……ま、まって」
肋骨が折れているのか体を動かすと激痛が走る。この様子はきっとジャック達はどこかの部屋で見ているはずだ。どうか殴り込んでこないで、とメリアンは頭のどこかで冷静にそう願う。
「ティアレア、ち、治癒魔法使えるかしら?」
「知らない、わかんない!どうすればいいの?」
「わたくしが、いう通り、……魔法陣を、描いてみて?」
「うん、わかった」
メリアンが震える手で、治癒の魔法陣を宙に描く。本来なら、魔法陣を使わず聖魔力で治すのだが、ティアレアの魔力は未知だ。魂まで浄化されそうで怖い。だから簡素魔法陣を伝える。子供でも使える魔法陣。擦り傷や捻挫を治す程度の魔法だ。これならたぶん、大丈夫。
そしてティアレアがその魔法陣をなぞる。その指から金の魔力が溢れ、キラキラとメリアンに降り注ぐ。
――黒部屋にいながら魔法が使えるんだもの、ほんと規格外だわ。
「ふぅ……」
呼吸が楽になり痛みが消えた。簡易治癒どころか、完全治癒。
やはりこの子は、女神が遣わした聖女なのかも知れない。
「ありがとう…ティアレア」
「よ、よかった…出来た」
「素晴らしい力だったわ…。子供騙しの魔法陣だったのに、完璧ね…」
吐いた血の跡だけが、起こったことを如実にしているが、メリアンはにこりと微笑んだ。
メリアンがそう言うと、全員が神妙な顔になり頷いた。
亜空間にしまう書類は全て準備が整い、すでに録音、録画された魔石と共にジャックの手の中にあった。
「<解錠>」
と短い一言で宙に闇が浮かび上がり、その中に書類を入れる。
巻き戻った後すぐに放送される魔石は、ジャックの魔力でスピーカーに繋げられ、巻き戻ったジャックが起動させる事で発表される手筈になっている。もちろん初めての試みなのでうまくいくとは限らないが。
「これがうまくいったら画期的発明だなあ」
「遠隔ですものね。スピーカーさえ取り付けられれば、僻地でも王都のニュースがすぐに伝えられるんだもの。情報伝達が格段に速くなるわ」
「理論ではうまくいくはずだが、なにせ巻き戻ると言うのがな。しかもその後で俺たちは覚えていないと言うから何か腑に落ちない」
ライオットとジャクリーンがなんともいえない顔でぶつぶつ言っているのを、横目で聞きながらメリアンはジャックに向かって大きく頷いた。
「もしこの件が成功して、戻って来たらわたくし魔導士の試験を受けますわ」
「ああ。是非一緒に画期的な発明をしよう。神なんていなくても世界が回っていくように」
「楽しみですわ」
ふふっと笑ったメリアンは、きゅっと顔を引き締め、いざティアレアの待つ黒部屋へと向かった。
扉を開けると、魔導士のマントにくるまったティアレアが部屋の隅にうずくまっていた。
ゴクリ、と喉を上下させメリアンはするりと部屋の中に入り込む。ずしりと圧迫感を感じたが、これは黒部屋の環境がそうさせるのだろう。さりげなく魔力を練ろうとしたがうまくいかなかった。この中でも、きっとティアレアは神聖魔法を使うことができるのだろうが、メリアンは丸腰だ。心もとない気持ちを振り払い、一歩前へ進み入れると、ティアレアがの頭がゆっくりと上がりこちらを見据えた。
大きな金色の瞳には涙が溢れ、ずっと泣いていたのか頬が紅潮している。儚げで、今すぐにも抱きしめたくなるようなティアレアの風貌にメリアンはヘニョリと眉を下げた。
――これは……。確かに抗い難いわね。
どちらが声を発するでもなく、立ちすくんでいると、最初に沈黙を破ったのはティアレアだった。
「わからないの」
嗚咽を我慢しながら、ひくっひくっと肩が上がる。
「あんなこと、したいわけじゃなかったの」
「……あんなこと?」
「神々の雷……、あんなの知らなかったの」
「そう、ね。あなたは<慈愛の雨>を使いたかったのよね?」
「そう、なのに。なんであんな、ひどい……っ」
前回とは違って、今回のティアレアは落ち着いていた。これなら、いけるかも知れない。話し合いに持ち込んで、時間を巻き戻らなくては。メリアンはゆっくりとティレアに近づいてその隣にしゃがみ込んだ。
「ねえ、ティアレア。わたくしあなたの力になりたいの。覚えていることを教えてくれないかしら」
「お、覚えてること?」
「そう、どうやってこの世界に落ちて来たのか、覚えてるかしら?」
「どう、やって…?」
ティアレアはメリアンの言葉を理解しようと首を傾げた。
――この子は、まるで何も知らないんだわ。幼子のように無垢で、なんでも素直に聞き入れる。
「わからないの。でも、突然空に投げ出されて、肉体を持ったわ。それが窮屈で、重たくてどんどん沈み込むような感じで。気がついたらここにいたの。そしたら、いっぱい人に囲まれて、怖かった」
「そう、そうよね。怖かったのよね……。こんな知らないところに投げ込まれて、いきなり大勢に囲まれたんだもの」
「でもね、キラキラした人は優しかった。守ってくれるって言った。だから、守ってもらったの。なのに、みんな怖い顔をして、あたし……やっぱり、怖くてっ」
ポロポロと涙をこぼすティアレアに、メリアンはそっと寄り添いその背をゆっくり撫でた。
「それで、みんな怖い顔、するからっ、優しい気持ちになるようにって思って」
――慈愛の雨を使ったの。
「その後は?」
「……真っ白になって…。気がついたらまた空に浮かんでて、元いた場所に戻りたかったのにっ、帰れなくて」
――つまり神々の雷の後は何も残らなかった、と言うことかしら。おそらくティアレア自身も消えてしまった、と考えられる。そして時間が戻って。
「わたくしね、女神様から正しい道を選ぶようにって時間を巻き戻されたの」
「女神様…?」
「ええ。たぶん。ただ、わたくし、神とか悪魔とか信じてなくて。だからそれが女神だったのか、悪魔だったのかはわからないの。でもね、こうやって貴方と話し合う前に、何度もやり直しをしたわ。本当にうんざりするほどね」
「あ、あたしもそれはわかったわ。何度も何度も、空から落ちてくるの。無限に続くんじゃないかって、すごく怖かったの!それに毎回ここに着くと違うことが起こるから、あたしどうなっちゃうのかなって。優しかったキラキラした人が現れなくて、代わりに黒い服を着て、顔も見えない人ばかりに囲まれて、どうしてって」
魔導士達だ。殿下は顔を出すなと伝えて、騎士も聖騎士も現れず、黒マントを羽織った人たちが顔も見せずに取り囲んで。
「それは、悪かったわ。……ごめんなさいね」
威圧感で怖気付いて、ひどい目にあったって思われても仕方がない。
「……貴女のことは覚えてた。とても綺麗な銀の髪で、私の知っている誰かに似ていて。懐かしいと思ったの。でも貴女はものすごく怒ってて、持ってる力がひどく禍々しくて。だから消えてしまえって思ったの。それが、いけなかったのかも知れない」
「ま、禍々しい……?わたくしの、魔力が?」
ティアレアはじっとメリアンをみると、ふるふると頭を横に振った。
「今も、肩から頭の辺りに黒い魔力が渦巻いてる。でも、それって貴女の魔力じゃないみたい」
「……!」
――それは。
「ティアレアには、それがわかるのね?」
「うん。貴女が本来持ってる魔力は暖かくて優しい。強くて眩しい力。あたしの知ってるチカラ……」
ティアレアの知っている力。魔力。それは聖魔力の事だろうか。黒い魔力というのは、メリアンの記憶を隠している何か、邪悪なチカラ?もしかして、ティアレアならば。
「この黒い魔力、消すことはできる?」
「えっ…」
「わたくしね、子供の頃の記憶がないの。神殿で何かあったのだと思うのだけど」
「神殿……」
「7歳より前の記憶を思い出そうとすると頭痛がして思い出せないのよ。それがもし、その黒い魔力に覆われているから、なのだとしたら。その黒い魔力を消して仕舞えば、記憶が戻るかも知れないと思うの」
「……わ、わかんない。だって、もし失敗したらまた、」
「ふふ。そうしたら、また時間が戻るだけよ。貴女には悪いけど、また天から降りてくるところから始まるんだわ」
「……いやよ」
「ティアレア」
「だって!あたしはここにいるの!貴女と話もできた!貴女のそばにいたら、きっとあたし、ここで生きていける!そうでしょ!?怖い人のいないところで、一緒に生きて!ね!?できるよね?」
ティアレアから漏れる魔力が部屋を揺らした。メリアンは圧力を感じてぐっと腹に力を入れる。魔法が使えないから、自力で踏ん張るしかないが、それを淑女に求めるのは間違っているだろう。メリアンの体は部屋の端まで吹き飛び壁に激突した。
「ごふっ」
血を吐き出して床に落ちる。骨が折れたか、内臓破裂か。これで死んでらまた戻るだけだけど、痛い。
「くぅ……っ」
「あっ!……っああっ!また、あたし…!」
ティアレアは慌ててメリアンに駆け寄り、上半身を無理やり抱き上げた。
「グゥッ……ま、まって」
肋骨が折れているのか体を動かすと激痛が走る。この様子はきっとジャック達はどこかの部屋で見ているはずだ。どうか殴り込んでこないで、とメリアンは頭のどこかで冷静にそう願う。
「ティアレア、ち、治癒魔法使えるかしら?」
「知らない、わかんない!どうすればいいの?」
「わたくしが、いう通り、……魔法陣を、描いてみて?」
「うん、わかった」
メリアンが震える手で、治癒の魔法陣を宙に描く。本来なら、魔法陣を使わず聖魔力で治すのだが、ティアレアの魔力は未知だ。魂まで浄化されそうで怖い。だから簡素魔法陣を伝える。子供でも使える魔法陣。擦り傷や捻挫を治す程度の魔法だ。これならたぶん、大丈夫。
そしてティアレアがその魔法陣をなぞる。その指から金の魔力が溢れ、キラキラとメリアンに降り注ぐ。
――黒部屋にいながら魔法が使えるんだもの、ほんと規格外だわ。
「ふぅ……」
呼吸が楽になり痛みが消えた。簡易治癒どころか、完全治癒。
やはりこの子は、女神が遣わした聖女なのかも知れない。
「ありがとう…ティアレア」
「よ、よかった…出来た」
「素晴らしい力だったわ…。子供騙しの魔法陣だったのに、完璧ね…」
吐いた血の跡だけが、起こったことを如実にしているが、メリアンはにこりと微笑んだ。
0
あなたにおすすめの小説
辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~
香木陽灯
恋愛
「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」
実の父と妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。
「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」
「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」
二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。
※ふんわり設定です。
※他サイトにも掲載中です。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです
みゅー
恋愛
シーディは前世の記憶を持っていた。前世では奉公に出された家で竜帝に気に入られ寵姫となるが、竜帝は豪族と婚約すると噂され同時にシーディの部屋へ通うことが減っていった。そんな時に病気になり、シーディは後宮を出ると一人寂しく息を引き取った。
時は流れ、シーディはある村外れの貧しいながらも優しい両親の元に生まれ変わっていた。そんなある日村に竜帝が訪れ、竜帝に見つかるがシーディの生まれ変わりだと気づかれずにすむ。
数日後、運命の乙女を探すためにの同じ年、同じ日に生まれた数人の乙女たちが後宮に召集され、シーディも後宮に呼ばれてしまう。
自分が運命の乙女ではないとわかっているシーディは、とにかく何事もなく村へ帰ることだけを目標に過ごすが……。
はたして本当にシーディは運命の乙女ではないのか、今度の人生で幸せをつかむことができるのか。
短編:竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました
を長編にしたものです。
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
死に戻りの元王妃なので婚約破棄して穏やかな生活を――って、なぜか帝国の第二王子に求愛されています!?
神崎 ルナ
恋愛
アレクシアはこの一国の王妃である。だが伴侶であるはずの王には執務を全て押し付けられ、王妃としてのパーティ参加もほとんど側妃のオリビアに任されていた。
(私って一体何なの)
朝から食事を摂っていないアレクシアが厨房へ向かおうとした昼下がり、その日の内に起きた革命に巻き込まれ、『王政を傾けた怠け者の王妃』として処刑されてしまう。
そして――
「ここにいたのか」
目の前には記憶より若い伴侶の姿。
(……もしかして巻き戻った?)
今度こそ間違えません!! 私は王妃にはなりませんからっ!!
だが二度目の生では不可思議なことばかりが起きる。
学生時代に戻ったが、そこにはまだ会うはずのないオリビアが生徒として在籍していた。
そして居るはずのない人物がもう一人。
……帝国の第二王子殿下?
彼とは外交で数回顔を会わせたくらいなのになぜか親し気に話しかけて来る。
一体何が起こっているの!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる