上 下
5 / 7

5

しおりを挟む
 え?マウロ、知らなかったのでしょうか。

「そもそも妹は14歳、学園に通うとしても来年からだが、我が家の方針で、妹は貴族学園には通わないことになっている。そんな妹がなぜ君の通う学園で、そんな無駄なことをしなければならないのか聞きたい」
「「……14歳?」」

 マウロと二人でハモってますが、ちょっと。短期間とはいえ婚約者だったのに、私の歳すら覚えていなかったと?

「私も学園には通ったが、学生以外の人間はそうそう学舎に入ることはできないだろう?もしそれが可能ならば王国に報告しなければならないな。貴族学園の警備はどうなっているのかと」
「い、いえっ!あの、その…っ。わ。わたし、しらなくてっ!」
「知らなかった?つまり妹が学園に忍び込んだという事実はなく?」
「は、はいっ!でもあの、カフェテリアで見た事がっ!」
「納品や請求書の受け渡しの使いに出ることは何度かあったからな」
「でも、食事や甘味は出されても食べていません、兄様!」
「……わかってる」

 よかった。これだけはしっかり言わなければ、怒られてしまいますからね。

「君はカフェテリアでたまたま見かけた我が妹が、通ってもいない学舎に忍び込み、君を池に落とし、君のロッカーから靴を盗み、教室に入り君の机を探し出し、教科書を破いたと?」
「い、いえ、あの、それは、その」
「つまり冤罪をかけたというわけだな?そして未成年の妹を脅し、我が商会から金を引き出そうとし、それどころか水道使用料を踏み倒そうとした上、その権利までもぎ取ろうとしたのだな」

 さすがハロルド兄様、一を知って十を知ると言うか、理解が早くてありがたいです。

「ち、ちが…っ」
「この件については、未成年恐喝罪に加えて、詐欺未遂、商業法違反と強奪罪を適用させてもらう」

 メロドラマ様は息も絶え絶え、真っ白になって口をパクパクしています。その横でマウロは少しずつ距離をとっているようですが、逃げられませんよ?この国、奴隷制度が廃止になって以来、未成年保護法はかなり厳しいのです。恐喝や強奪、強制労働などは少なくとも十五年の刑罰を与えられますから、父様も家族とはいえ、その辺は注意しています。

「マウロ君、君には心底がっかりだ。君と妹の婚約破棄については了承した、が。こちらから遠慮させてもらう事にする。伯爵には私の方から話をしよう」
「ま、待ってください!違う!ちがうんだっ!俺はこいつメラドンナに騙されてっ!」

 真っ青になったマウロが私を凄い目で見て、なんとかしろ、助けろと訴えてきますが、無視ですね。私より100倍マシなメロドラマ様をコイツとか呼んでますし。

「ハロルド兄様、マウロ・オーランド伯爵令息は『俺の方から婚約を破棄する』と言いましたから、そのようにしましょう?」
「…お前はそれでいいのか?」
「もちろんです。契約書にしっかりその旨の条件も載っていますから」
「ああ、うん。そうか」

 ええ。体裁や面目より、慰謝料のほうが大事です。それに。

「私は家族から疎まれているそうです」
「は?」
「『捨て猫のように痩せギスで目ばかりでかくて可愛げがなく、家族からも疎まれるような女』だそうです。とても傷つきました」
「俺の可愛い妹にそんなことを言ったのか…」
「それからメロドラマ様の方が、100倍もマシだと。あと、5歳のミラノにも食指が動いたみたいですよ」
「何!?」
「『五歳児なので色々足りないが、お前よりはマシだろう』と言われました」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女に巻き込まれた、愛されなかった彼女の話

下菊みこと
恋愛
転生聖女に嵌められた現地主人公が幸せになるだけ。 主人公は誰にも愛されなかった。そんな彼女が幸せになるためには過去彼女を愛さなかった人々への制裁が必要なのである。 小説家になろう様でも投稿しています。

お兄様がお義姉様との婚約を破棄しようとしたのでぶっ飛ばそうとしたらそもそもお兄様はお義姉様にべた惚れでした。

有川カナデ
恋愛
憧れのお義姉様と本当の家族になるまであと少し。だというのに当の兄がお義姉様の卒業パーティでまさかの断罪イベント!?その隣にいる下品な女性は誰です!?えぇわかりました、わたくしがぶっ飛ばしてさしあげます!……と思ったら、そうでした。お兄様はお義姉様にべた惚れなのでした。 微ざまぁあり、諸々ご都合主義。短文なのでさくっと読めます。 カクヨム、なろうにも投稿しております。

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

ゆるふわな可愛い系男子の旦那様は怒らせてはいけません

下菊みこと
恋愛
年下のゆるふわ可愛い系男子な旦那様と、そんな旦那様に愛されて心を癒した奥様のイチャイチャのお話。 旦那様はちょっとだけ裏表が激しいけど愛情は本物です。 ご都合主義の短いSSで、ちょっとだけざまぁもあるかも? 小説家になろう様でも投稿しています。

逆行令嬢は聖女を辞退します

仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。 死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって? 聖女なんてお断りです!

私、悪役令嬢ですが聖女に婚約者を取られそうなので自らを殺すことにしました

蓮恭
恋愛
 私カトリーヌは、周囲が言うには所謂悪役令嬢というものらしいです。  私の実家は新興貴族で、元はただの商家でした。    私が発案し開発した独創的な商品が当たりに当たった結果、国王陛下から子爵の位を賜ったと同時に王子殿下との婚約を打診されました。  この国の第二王子であり、名誉ある王国騎士団を率いる騎士団長ダミアン様が私の婚約者です。  それなのに、先般異世界から召喚してきた聖女麻里《まり》はその立場を利用して、ダミアン様を籠絡しようとしています。  ダミアン様は私の最も愛する方。    麻里を討ち果たし、婚約者の心を自分のものにすることにします。 *初めての読み切り短編です❀.(*´◡`*)❀. 『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも掲載中です。

王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~

石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。 食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。 そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。 しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。 何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。 扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

幽霊じゃありません!足だってありますから‼

かな
恋愛
私はトバルズ国の公爵令嬢アーリス・イソラ。8歳の時に木の根に引っかかって頭をぶつけたことにより、前世に流行った乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまったことに気づいた。だが、婚約破棄しても国外追放か修道院行きという緩い断罪だった為、自立する為のスキルを学びつつ、国外追放後のスローライフを夢見ていた。 断罪イベントを終えた数日後、目覚めたら幽霊と騒がれてしまい困惑することに…。えっ?私、生きてますけど ※ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください(*・ω・)*_ _)ペコリ ※遅筆なので、ゆっくり更新になるかもしれません。

処理中です...