記憶にございません

里見知美

文字の大きさ
上 下
11 / 13

11. 怒涛の展開

しおりを挟む
 私も大きな口きいてたけど、将来は不安だった。いつ結婚しろって言われるかビクビクしてた。大人になったら家を出て、一人でやっていけるのかアル様に会えなくなるのかと思うと、寂しかった。でも、アル様は次期国王だから、私は平民だから。いえなかった。

 好きです、なんて。

 小説のように、処刑されてしまうかもしれないと思って。それでも、一生に一度の恋なら、これで死んでも、いいかもなんて考えて。

「私も、アル様と一緒に生きたい、です」
「ナリエッタ……!」
「でも、やっぱり死にたくないです」
「死なせるもんか!よし、今すぐ結婚しよう!」
「えっ!?ちょ、ちょっとそれは早すぎっ」
「いや、待てない!だってお前、家に帰ったら婚約の手続きが待ってる!エドが仕入れた情報だから絶対だ!」
「ええっ!?さては、あのセクハラ親父!」
「お前はもう15歳で成人だ。だから親の承認はいらないだろう?結婚しよう!」
「そういうわけにはいかないでしょう!アル様まだ王族でしょう!?それに婚約者!公女様はどうなったんですか?」
「しまった!まだ、それがあったか!」
「忘れてた!?」
「エド!学園に行くぞ!婚約破棄だ!近衛もよべ!」

 はっと振り返ると、エドヴァルド様が額を手を押さえて頭を振っていた。ずっとそこにいらしたのですか!?気が付かなかった!一世一代の告白も聞かれてた!


 その後、思い立ったが吉日とばかり、婚約を破棄でも白紙でもなく、無効にし、王位継承権を返上した上で、その日のうちに婚姻届を出してしまったアル様と私。

 目まぐるしさで何が起こったのかわからないまま、王宮に連れて行かれて危うく初夜まで済まされるところで、王妃様のストップが入った。濁流に飲まれた感じでちょっと溺れかけてました、私。王妃様、ありがとう。

 女性の結婚をなんだと思っているのかと雷を落とされ、自分の意思はしっかり持てと私まで雷を落とされたものの、結婚自体は認められた。結婚式は二年後、それまでは初夜もなし、王族としての最低限の教育は受けてもらうと言われ、アル様は泣いていた。

 いや、結婚はもうしてるから、心配しなくてもと慰めていたら、王族は離婚ができないんだと聞かされて、私もなんか腑に落ちない気分になった。

 まあ、結婚したばかりで離婚とか考えてないからいいんだけど。王宮に部屋を用意されて、お風呂でしっかり磨かれた。やっぱり臭かったのか、私?!

 それでも信じられないほどフッカフカのベッドを用意されて、搾りたてのオレンジジュースとクロワッサンとオムレツを夜食にいただいて。

 王位継承権を放棄しても王族は王族だもんね、とかのんびり考えていた翌日。

「エルドランに王位継承権はない」
「どういうことですか、父上!」

 王様の私室(!)に呼ばれて伺ったら、家族会議が始まっていた。

 両陛下、アル様、第二王子殿下、公爵令嬢に公爵様ご夫妻、エドヴァルド様。

 それに加えて、真ん中で土下座をしているのは、誰かしら?

「エルドランは私の子ではない」
「う、嘘だ!」

 げ。断罪の真っ最中だった!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。

あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。 「君の為の時間は取れない」と。 それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。 そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。 旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。 あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。 そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。 ※35〜37話くらいで終わります。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。

ふまさ
恋愛
 楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。  でも。  愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。

【完結】愛することはないと告げられ、最悪の新婚生活が始まりました

紫崎 藍華
恋愛
結婚式で誓われた愛は嘘だった。 初夜を迎える前に夫は別の女性の事が好きだと打ち明けた。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

夜会の夜の赤い夢

豆狸
恋愛
……どうして? どうしてフリオ様はそこまで私を疎んでいるの? バスキス伯爵家の財産以外、私にはなにひとつ価値がないというの? 涙を堪えて立ち去ろうとした私の体は、だれかにぶつかって止まった。そこには、燃える炎のような赤い髪の──

処理中です...