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悪夢
しおりを挟む『ああ、ジャハール様。私のここに杭を刺して。もっと深く、もっと激しく。はあっ、あん、ああん』
『ああ、聖女様。いけません、これ以上は、私は…』
『やめないで、ほら。こんなに濡れてるのよ。見て。私を見て。』
『ああ、神よ……』
手のひらに収まりきらず溢れる乳肉を恍惚と見つめ、赤く尖った乳首を口に含んで、激しく吸い上げる。面白いように形を変える乳房を夢中になって揉みしだいては吸い付き、赤い痕を散らす。聖女は嬌声をあげ、ジャハールを誘うように股を広げた。ヒクヒクと蠢く赤い花びらを凝視すると、ジャハールは我慢ならず己の熱杭を晒した。せり上がったそれは赤黒く脈打っている。聖女は期待をはらんだ獰猛な目でそれを見つめ、舌なめずりをした。その様子が欲情を誘い、熱に浮かされたように蜜口に当てがうと、聖女はそれを握り締め上下に扱きあげる。
『ああ、だ、ダメです!そんなに…!』
『早く、早く来て、ジャハール様。あたし、もう待てないのっ!』
ジャハールは熱い吐息を吐きながら、誘われるがままグチュグチュと熱い沼地へ肉棒を沈めていく。だが、その途中で喘ぎ声が止まり、聖女が動きを止めた。
『ああ、ダメね。あなたの小さ過ぎる』
『え……?』
景色が暗転し、ジャハールは暗闇に落ちていく感覚に身体を強張らせた。
「うわああああぁぁ!」
ガバッと飛び起きたジャハールは汗だくになっていた。己の手を見て、夢の感触を振り払うように握りしめる。
「はっ、ハァ……なんだ、今のは。こ、この私があんな破廉恥な夢を見るなんて一体……」
ふと股間に違和感を感じて見れば、寝間着が濡れそぼり、夢精していたことに気がついてますます青ざめる。
「神よ……!!」
ベッドから飛び上がり、大慌てでシャワーを浴び、着ていた寝着は魔法で焼却した。本来ならば洗えばいい物だが、神官としてあまりにもふしだらな夢でその証拠たるものを消してしまいたかったのだ。
この腕の中で前聖女を貪るように喰らい尽くした。そんな卑猥な夢は今までに見たことはない。まだその掌に唇に、股間にまでも感触が残っている気がする。前聖女に対してそんな感情を持ったことなど、一度たりともないというのに、なぜ。
「疲れているのだろうか…」
ミミ様が現れて以来、怒濤の波に飲まれるかのように時が動き始めた。全てが一斉に動き始め、息つく暇もないというのが本音だ。ほんの数ヶ月前は、その日の食べ物がと悩んでいたのが、国をひっくり返す騒動にまでなっている。土壌と井戸の浄化から、スラム街の解体に、作物の植え付けから採取まで一気に進み、子供達は神殿と教会で受け入れた上で、教育にまで手を伸ばしている。領地で隠れていた貴族たちがこぞって改革に同乗し、念魔の出現が極端に減り、魔獣が減った。森に野生が戻り、水源である泉に水が溢れかえったと聞いた。
全てミミ様が現れてからで、私が手を貸すよりも早く車輪が回り始めた。その本人が深い眠りについている間にも浄化の力は大地に広がっていった。そしてそれに反比例するように、ミミ様の力が急激に失われつつある今。
私とムスターファは極秘に王子妃殿下コーネリア様と話し合い、これから起こるであろうことをお伝えした。王子妃殿下は隣国ダマスクス王国の王女で、このアジャスト神国の監視目的で嫁いできた聡明な方だ。第一王子が淫魔に変わり果てた時に、私に連絡を取ってきた唯一のまともな存在で、今回の王子の誕生パレードの件でもお力を借りた。
ミミ様が倒れ目覚めないのにもかかわらず、隣国を呼んで1週間ものパレードなど不謹慎だと王子妃殿下からのお言葉で、パレードは取り消しとなった。国王も王子も渋々ではあったものの、王子妃の後ろ盾に恐れをなし中止を認めた。幸い隣国はくだらないことに興味がなかったと見えて特に問題にもならなかったが。
コーネリア様はこの国はもうダメだと見越している。だが月三神に守られたこの国を攻め入るような国はどこにもいない。月神の力はそれほど恐れられているし、信じられている。そのためコーネリア様は国改革を画策しているのだ。そのことはもちろんムスターファの率いる王国魔導師団にも伝わっていて、ダマスクス王国と近い未来のことについても話し合いがなされている。神殿と国を完全に分け独立させるのか、王家をそっくりそのまま挿げ替えるのかについては、まだ決まっていなかった。
ムスターファのこの数年の働きとミミ様のお力で、それが急に現実味を帯びてきた。辺境の地はすでに土地改革がなされ食物にも物流にも滞りがない。辺境と王都の間に分散していた少ない各領地の方も、次第に良い兆しが見えてきた。ミミ様が土壌浄化をし始めて水問題も回復し、スラム街を改善したことから国民の生活も活気付いてきた。このまま進めば、この国は豊かな国となり、国境も開通し外交も再開するだろう。
だがミミ様はまだこの地に根を下ろしていないのが現実で、ムスターファに全てがかかっているのも事実。ムスターファ以上の力を持つミミ様を引き止める術はない。それがたとえ10年かかると言ってもミミ様は帰りたいと仰るのだ。ムスターファは全身全霊で尽くしているが、効果はまだわからない。
赤月神の季節も半ばになって、或る日突然ミミ様は目覚められた。
その後のムスターファの行動は決して褒められたものではなかったが、寝たきりだったミミ様の部屋に入れたのはムスターファ以外誰一人としていなかった。幸い、あいつは医療の知識も問題ないことから甲斐甲斐しくミミ様のお世話をしていたものの、次第に憔悴していく奴を見るのは心配でもあったから、不埒な真似も見なかったことにしてしまった。
それがいけなかったのだろうか。
その頃から私は何か、私ではなくなってきているような、或いは自分ではない何かが私の中で蠢くような、そんな違和感がある。たまに意識が途切れていることもある。何をしていたのか思い出せないのだ。気がつくと神殿の奥深くでうずくまっていたり、ベッドで横になっていたり、朝になっていたりする。そんな時はいつも魔力に歪みがあるのだ。
何かが私を蝕んでいるのではないだろうか。大神官ともあろう者が、今この大事な時にこんな体たらくでどうするというのだ。
そうこうしているうちに、ムスターファは前聖女を引きずり出してきた。危険だと私もコーネリア様も訴えたが、ミミ様がいなくなってから慌てても遅いと言い、これから聖女教育をしろと私に押し付けてきた。ミミ様が異世界へ戻るというのなら自分もついていくとまで豪語し、そのためにここに一人聖女を残しておかなければならないからだと。
だが、コーネリア様はまだミミ様にお会いしていないというのに、すでに崇拝している。あの方が銀月神の遣わした使徒だと信じて疑わないのだ。それほど、土壌の浄化は強烈に印象付けられた。だからか、コーネリア様はミミ様を逃してはいけないと警告し、前聖女は捨て置けとまで言った。
そうでなければ、この国をダマスクス王国は攻め落とし、国民は奴隷となる。たとえそうなった時でもどうせお前はこの国にいないのだろうから問題はないだろう、とコーネリア様は黒く微笑み、ムスターファは言葉を失った。
これまで国民のために精魂を費やしてきたムスターファに、この国を見捨てることができるのか。
「ミミ様のためなら命でも捨てそうだからな、あの男は」
結論の見えない問題に、私は大きくため息をついた。ミミ様さえ、ここに居てくだされば全てが丸く収まるのだが。
最近の私は、ミミ様を見るたびに心が疼く。あの方を手に入れたいと願い、ねっとりとした視線で眺めては妄想し、ムスターファと共にいるところを見ては嫉妬する。それに気がつき慌てて神に祈る。そんなことの繰り返しだ。愛だの恋だのとは無縁の立場にあり、これまでだって考えたこともなかった。ムスターファにあてられたのだろうか。
祈りの時間も増やしたし、修行を厳しくしても見た。なるべく近づかないように、訓練は特務3課のカリンとアイダに任せ、ムスターファの体力訓練の時は遠くから見るだけに抑えている。魅了防御の魔法の質も上げたし、自主規制もしているはずなのに。
挙げ句の果てに、前聖女と睦みあう夢まで見るとは。誰かに相談するべきなのだろうか。いや、大神官がそんな夢を見るなんておぞましくて口にも出せない。
神よ。どうか私の不埒な心に咎を与え戒めてください。私の願いは心の平穏と皆の幸福です。
朝日が高く昇る頃、茜はようやく目を覚ました。確かに服を着ていたはずなのに、いつの間にか全裸でシーツは乱れている。ところどころシミができているのを見ると、どうやらかなり蜜をこぼしたらしい。胸元には鬱血した後まで付いている。
「夢じゃなかった……?」
枕を持ち上げるとそこには石板が寝る前においたように収まっていた。枕の下において想像するだけでいいってジャハールさんは言っていたよね?
「やだ。これ、もしかしてエッチな召喚石板?」
ジャハール様が私に渡してくれたのって、そういうことだったのね!大神官だもの、エッチは大っぴらに出来ないから?素敵!!寝直そうっと!
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