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いきなり戦闘開始なんですけど!?
しおりを挟む結論から言うと、私はどうやら召喚されたらしい。
ははは。
いやいやいや、んなわけないでしょ。小説じゃあるまいし。
私、駅のトイレにいたんですよ?トイレから異世界って、なんか間抜けじゃないの?科学的に見ても無理があるんじゃない?だって、トイレだよ?
トイレの鏡から白い手がにゅって、ホラーだよ!?
意識を手放そうかと思ったのだけど、何が起こるかわからない瞬間に、意識というのはよりはっきりするらしい。うかつに意識飛ばして、気がついたら死んでたとか、どこにいるかわからないとか、怖すぎる。手放さなくてもどこにいるかわからないのだけど、自己防衛はできる。ハズだ。
あまりのストレスで私、どうかしちゃったのかしら。
精神科にかかるかカウンセリング受けた方が良いの?やっぱり広告代理店ってブラックなの?ブラックって気がつかないで仕事してるの、私?
はっ!もしかして死んだ?
あ、死んでたら異世界転生になるのかしら。あんまり読まないからわかんないわ。もっと会社の女の子の話聞いとけばよかった。
「鏡から引きずり込まれるとか、めっちゃホラーです。どういう手段を使ったのか知りませんが、日本に帰ることを強く希望します」
「申し訳ないが、それはできない」
「や、申しわけないなんて、思ってないですよね?なにしてくれるんですか。これ、立派な犯罪ですよ。できないといえば諦めて、私があなた方の思い通りになるとでも?日本国内で堂々拉致って、国際犯罪ですよね?私みたいな一般人を攫ったってなんの得にもなりませんよ?」
「い、いえ、聖女様。我々の召喚に呼応したのが貴女であって、無理矢理に召喚したわけではないのです」
「ちょっと。同意してないって私が言ってるんだから、無理矢理でしょ。私がいつ呼びかけに答えたと?」
頭の隅に過去に聞いた異世界召喚の小説とか、ニュースで見た誘拐事件の記事が浮かんでは消え、今の状況を冷静に照らし合わせている自分が怖いと思いつつ、あたりを観察した。
どうみたって駅から降りてすぐの建物ではない。やっぱりトイレで麻酔薬でも嗅がされて、連れ出された可能性が高い。にしては、突っ立っていた場所がおかしいけど。
着物なんか着てるから、オー!ジャパニーズ・ビューティ!とか言って攫われちゃったとか?あれ、でも日本語が通じるってことは、やっぱり国内で…。あ、これドッキリ?ドッキリカメラなの?最近のコスプレはレベル半端ないっていうけど、この人達日本人だったらマジすごいレベルよ。
「ここはどこ?中東ですか、南米ですか。それともやっぱり日本国内…」
「ここはアジャスト神国。ダマスクス王国とリヴァイス共和国の中間にある聖地です」
「……あー…?」
横文字出た。アジャスト神国?だまくらかす王国?調整とか校正とか、ちょっと国名が安易すぎない?
「聖女様。我らの呼びかけに応じていただき感謝いたします。早速ですが、あなた様に受けてもらいたい仕事があるのです。どうぞこちらに」
「ちょっと、誰が聖女よ?私、まだ納得してないんですけど?」
「おお、これは失礼を。私はアジャスト神国の神官長ジャハール・スターライトと申します。急ぎで申し訳ないのですが、直ちに封じてもらいたい魔がいまして」
「神官?え?何教?ま?間?封じたい間?」
ジャハールと名乗ったおじさんは、目をパチクリさせて私を見た。
じっくり3秒間見つめ合う。
鏡から手出したのあんたよね。その白くて細い手でよく私を引きずり込んだわね。引きずり込まれたのは覚えてないけど、何かしらしたのはあんたよね?神官とか言って、悪人よね?
「魔といえば、魔。邪念や邪気を指しますが、聖女様は魔を知らないのですか?」
「魔って、魔王とか魔法とかの魔?悪魔の魔?」
「左様。ご存知でいらっしゃるのなら話は早い。さあさ、こちらに」
「ちょっと!こちらにってホイホイ行くわけないでしょ!除霊師じゃあるまいし!悪霊退散なんてできないわよ。っていうか、神官だったらエクソシストくらいできるんじゃないの!?そういうのが仕事でしょ?ん?あれは神父の仕事?でも神父も神官も同じよね?」
「除霊もできるのでしたら、それに越したことはありませんが。聖女様にはともかく魔を祓っていただきたく。お恥ずかしながら、私はアレを消し去るほどの力は持ち備えておりません。ああ、治療くらいならば私でもできますが、怨念までは払えないのです。魔導師どもが今は魔石を使って抑えておりますが、いつまで持つか。ですから勝手ながらお力を持つ聖女様を召喚したわけでして。」
魔導師?魔石?
私は魔法使いでも霊媒師でもないのよ!
このおっさん、ユーチューバーか何か?最近若い子の間で流行ってる、あれ?
それともゲーマー?VRとかなんかなの?ゲーマーの気持ちはわからないでもないけど、私にゲームにハマってるような時間はなかったのよ。アラサーに無理ゲーさせないでよ!
腕を引かれ、背中を押されて有無を言わせない雰囲気の中、連れ出されたところは神殿の外。
目の前に広がる森はスイスの山並みのように広大で清々しく————
————ない!
なにあれ!?どす黒い竜巻が渦巻いてるじゃない!ハイジのいそうな山の上に、巨大な竜巻が木々を巻き込んで向かって来ていた。
ちょ、ちょっと!あれでかくない?でかすぎない?
これ、絶対バーチャルリアリティの世界だわ。現実にありえない!
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