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プロローグ:ロシナンテ・ナンチャッテの苦難
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目の前に星が散って、膝をついた。
最愛の妻、ドルシネアに殴られたのだと気づくのに数秒。
なぜ。一体何が起こったのだ。
「あなたが不貞をしてこんな大きな子供までいるなんて!見損ないましたわ!私を愛していると言ったくせに!!」
実家に帰らせていただきます!と往復ビンタをかましてあっという間に出て行ってしまったドルシネア。追いかけなければと焦るものの、俺の頭の中に膨大な情報が送り込まれてパニックに陥った。
「こ、ここは、どこだ!?俺はいったいどうなった!?」
「ハイ旦那様、お気を確かに!たった今奥様から雷属性付きの往復ビンタを食らわされ、膝をついたところでございます」
「そうじゃない!」
そんなことはわかっている!そうじゃなくて、俺は旦那様などと呼ばれるような立場にはいない。俺は、俺は……本日付で課長に昇進して、一課で打ち上げパーティを開いてもらってヘベレケに飲み、それから…。それから、記憶がない。
「お、俺は、一体…」
俺は、ロシナンテ・ナンチャッテ。次第に混乱した意識が晴れていく。
嘘みたいな名前だろう。ロシナンテナンチャッテって、なんだ!
いや、この国では普通によくある名前のはずだが。
そうだ。俺はグラニュート王国の、曰く付きの一男爵。ナンチャッテ男爵。泣けてくるほどふざけた名前だが。親父が男爵だったから跡を継いだだけの、何も成し遂げていない若造…。いや、もう33歳になるから若造とはいえない。最愛のドルシネアに首ったけになり、口説いて口説いてようやく豪商のフロランテ商会から花盛りのドルシネアを貰い受け、3年。これからというところで。
そんなバナナ、なんて親父ギャグが炸裂しそうになったところで邪魔が入った。
「ねーおじさん、アタシここにいてもいーの?」
目の前にポツンと佇んでいる少女、名前はラズ、8歳、ぐらいだと思う。
これはお前の娘だと、全く見覚えのないボロボロの服装の女が置いていった。執事のカルトロが銀貨を数枚渡して、女は嬉しそうにさっさと退散した。
「お前……本当に俺の子か…?」
「あの人がそう言ったから、そうなんじゃないの?」
「あの人……って、お前の母親だろう?」
「さあ?」
「さあ……って、」
「旦那様。ひとまずこの少女には湯浴みをさせてもよろしいでしょうか」
カルトロが半眼無心の表情で口を挟んできた。
ラズは確かにひどい格好で、髪は絡み垢だらけで、なんか酒場の裏路地ような、濡れてそのまま乾いた雑巾のようなすえた匂いがする。ションベン臭くて正直耐え難い。市井、というよりも貧民街に近いところで住んでいたのだろう。
……まさか、俺の不貞を軽蔑して、そんな目で見たわけではあるまい。違うよな?
「……わかった。ここにいても外聞が悪い。湯浴みと食事を。しばらくはメイド服でも着せとけ。それから…取り敢えず一階の小部屋をあてがってくれ」
「かしこまりました。奥様はいかがなさいますか?」
「……すぐに手紙を出す。早馬の用意を」
ラズと名乗った少女は、風呂にはおとなしく入り、メイドに何度か湯を変えて洗い流して貰い、適当な下働きのメイド服を着せると多少は見られるようになった。緩やかにカールする薄い桃色の髪にぱっちりした赤みの強い桃色の瞳。ちょっと痩せすぎではあるが、これはこの国の聖女様と同じ色合いではなかっただろうか。そんなことを思いながら眺めていると、袖で鼻を拭った。
「おじさん、お腹すいた」
拭った鼻の跡がほおまで伸び、メイドが慌ててハンカチで顔を拭き、汚れた袖口を見てため息をついた。
「鼻はハンカチを使って拭くように」
「袖も綺麗だよ?」
「袖が汚れるだろう?」
「ハンカチはいいの?」
「ハンカチはそのためにあるんだ」
「金持ちってわかんないね」
「……食事を与えてくれ」
貧民の子供にハンカチの話をしても不毛だったので、俺は話を切り上げ、メイドに食堂で適当に見繕うように言い、執務室へと向かった。
「いや、待て。俺の娘、…?」
若い頃、ドルシネアに出会う前は、確かに遊んだこともあった。ブイブイいわせて貴族だということを自慢したい年頃だったのもある。だが、あの子供は8歳くらいだろう。
冷静になって考えてみれば、俺が25から27歳の頃に遊んだのは娼館の女くらいなもので、子供ができるはずはない。無駄に見境なく遊んだのは学生の頃、15か16かそのくらいだ。その頃に出来た子供なら既に二十歳に近いはず。
そう気づいて、俺は椅子に深く腰掛けた。ハーッと息を吐く。
「騙された…」
よくあることだ。金に困った平民が子供をよく似た毛色の貴族に売りつけるような事。後ろ暗い過去のある貴族は一瞬狼狽え、つい金を渡してしまうのだ。……先ほどの俺のように。いや、全然毛色は違うけども。
そして子供は孤児院に送られるか、奴隷商に売られてしまう。親が直接奴隷商に売らないのは、貴族に売った方が金になるからだ。子供にとっても、あわよくば貴族の暮らしを送れるかもしれないと一攫千金を夢に見る。宝くじより確率は高いだろうが。
「………まずは教会に連絡をして、俺の無実を証明しよう。ドルシネアに手紙を書かなくては…」
ドルシネアは3年前に嫁いできた俺の可愛い可愛い最愛の嫁だ。5年ほど前に商会を通じて知り合い、それから手を替え品を替えようやく手に入れた。気の強い女だが、愛情深く妖艶で、もう少しの間蜜月が欲しくて、子供を作らなかった。だが、こんなことになるなら一人くらい儲けておくべきだった。子供がいたら、速攻で実家に帰るなどと言わなかったかもしれない。
「ドルシネアァ~……離婚だけは勘弁してくれ…っ」
前世では多分家族がいた。少なくとも妻と子供が一人はいたと思う。あまり記憶にないが、そうでなければ課長に昇格なんてできない世代だったはずだ。家庭も守れない男に会社の部下を任せられない、とかなんとか、仕事とプライベートを一緒にするなってんだ。まあそれはともかく、妻はいた。だが、あまり愛しているとはいえなかったかもしれない。だって、俺、仕事三昧で必死だった。いや、あれは家のローンとか、車のローンとか、子供の進学ローンとかそんなので必死だった、のか?俺が死んで保険が下りただろうから、生活は俺がいた頃より楽かもしれないな。
まあ、過去、と言うか前世などはどうでもいい。今の俺ロシナンテ・ナンチャッテは、若妻のドルシネアをひどく愛している。彼女なしでは生きていけないほどに、だ。
だってだって、あんなに美人で若いのに、11も上の俺なんかを選んでくれた。ふざけた名前でも可愛いと言ってくれた。「ロシナンテ」には「影の実力者」という意味も併せ持っているのよ、なんて。ちょっと的を得過ぎて、ぎくりとしたが。体の相性もバッチリで、毎晩のように満足…いや、それはどうでもいい。どうでも良くないが、今はそこじゃない。股間がやばくなるから、考えないようにしなくては。
ベソをかきたくなる気分を抑えて、手紙を綴り早馬で送った。ドルシネアの性格はよくわかっている。一度怒ると手に負えない。誰も近づけない鬼気迫るものがあるのだ。物は投げるし、雷も物理で落とす。ドルシネアは雷の魔力持ちなのだ。下手をすれば包丁とかも投げてくる。命中率も高いから、鎧をつけねば命に関わる。いや、鎧をつけると雷の魔法がすかさず落ちて、感電死は免れない。
今度、真面目にゴム素材を探そう。
だから会うのは最短でも明日。今晩は寝ずに仕事をしよう。ドルシネアのいないベッドなんて、書類のない執務机と同じだ。
一応、カルトロに言って、ちゃんと実家に帰ったかどうかだけは確認させなければ。人妻とはいえ、変な男にたぶらかされても敵わないからな。……いや、マジで大丈夫だよな?後でこっそり見にいった方がいいか?ああ、心配になってきた!
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「あなたが不貞をしてこんな大きな子供までいるなんて!見損ないましたわ!私を愛していると言ったくせに!!」
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「お、俺は、一体…」
俺は、ロシナンテ・ナンチャッテ。次第に混乱した意識が晴れていく。
嘘みたいな名前だろう。ロシナンテナンチャッテって、なんだ!
いや、この国では普通によくある名前のはずだが。
そうだ。俺はグラニュート王国の、曰く付きの一男爵。ナンチャッテ男爵。泣けてくるほどふざけた名前だが。親父が男爵だったから跡を継いだだけの、何も成し遂げていない若造…。いや、もう33歳になるから若造とはいえない。最愛のドルシネアに首ったけになり、口説いて口説いてようやく豪商のフロランテ商会から花盛りのドルシネアを貰い受け、3年。これからというところで。
そんなバナナ、なんて親父ギャグが炸裂しそうになったところで邪魔が入った。
「ねーおじさん、アタシここにいてもいーの?」
目の前にポツンと佇んでいる少女、名前はラズ、8歳、ぐらいだと思う。
これはお前の娘だと、全く見覚えのないボロボロの服装の女が置いていった。執事のカルトロが銀貨を数枚渡して、女は嬉しそうにさっさと退散した。
「お前……本当に俺の子か…?」
「あの人がそう言ったから、そうなんじゃないの?」
「あの人……って、お前の母親だろう?」
「さあ?」
「さあ……って、」
「旦那様。ひとまずこの少女には湯浴みをさせてもよろしいでしょうか」
カルトロが半眼無心の表情で口を挟んできた。
ラズは確かにひどい格好で、髪は絡み垢だらけで、なんか酒場の裏路地ような、濡れてそのまま乾いた雑巾のようなすえた匂いがする。ションベン臭くて正直耐え難い。市井、というよりも貧民街に近いところで住んでいたのだろう。
……まさか、俺の不貞を軽蔑して、そんな目で見たわけではあるまい。違うよな?
「……わかった。ここにいても外聞が悪い。湯浴みと食事を。しばらくはメイド服でも着せとけ。それから…取り敢えず一階の小部屋をあてがってくれ」
「かしこまりました。奥様はいかがなさいますか?」
「……すぐに手紙を出す。早馬の用意を」
ラズと名乗った少女は、風呂にはおとなしく入り、メイドに何度か湯を変えて洗い流して貰い、適当な下働きのメイド服を着せると多少は見られるようになった。緩やかにカールする薄い桃色の髪にぱっちりした赤みの強い桃色の瞳。ちょっと痩せすぎではあるが、これはこの国の聖女様と同じ色合いではなかっただろうか。そんなことを思いながら眺めていると、袖で鼻を拭った。
「おじさん、お腹すいた」
拭った鼻の跡がほおまで伸び、メイドが慌ててハンカチで顔を拭き、汚れた袖口を見てため息をついた。
「鼻はハンカチを使って拭くように」
「袖も綺麗だよ?」
「袖が汚れるだろう?」
「ハンカチはいいの?」
「ハンカチはそのためにあるんだ」
「金持ちってわかんないね」
「……食事を与えてくれ」
貧民の子供にハンカチの話をしても不毛だったので、俺は話を切り上げ、メイドに食堂で適当に見繕うように言い、執務室へと向かった。
「いや、待て。俺の娘、…?」
若い頃、ドルシネアに出会う前は、確かに遊んだこともあった。ブイブイいわせて貴族だということを自慢したい年頃だったのもある。だが、あの子供は8歳くらいだろう。
冷静になって考えてみれば、俺が25から27歳の頃に遊んだのは娼館の女くらいなもので、子供ができるはずはない。無駄に見境なく遊んだのは学生の頃、15か16かそのくらいだ。その頃に出来た子供なら既に二十歳に近いはず。
そう気づいて、俺は椅子に深く腰掛けた。ハーッと息を吐く。
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よくあることだ。金に困った平民が子供をよく似た毛色の貴族に売りつけるような事。後ろ暗い過去のある貴族は一瞬狼狽え、つい金を渡してしまうのだ。……先ほどの俺のように。いや、全然毛色は違うけども。
そして子供は孤児院に送られるか、奴隷商に売られてしまう。親が直接奴隷商に売らないのは、貴族に売った方が金になるからだ。子供にとっても、あわよくば貴族の暮らしを送れるかもしれないと一攫千金を夢に見る。宝くじより確率は高いだろうが。
「………まずは教会に連絡をして、俺の無実を証明しよう。ドルシネアに手紙を書かなくては…」
ドルシネアは3年前に嫁いできた俺の可愛い可愛い最愛の嫁だ。5年ほど前に商会を通じて知り合い、それから手を替え品を替えようやく手に入れた。気の強い女だが、愛情深く妖艶で、もう少しの間蜜月が欲しくて、子供を作らなかった。だが、こんなことになるなら一人くらい儲けておくべきだった。子供がいたら、速攻で実家に帰るなどと言わなかったかもしれない。
「ドルシネアァ~……離婚だけは勘弁してくれ…っ」
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まあ、過去、と言うか前世などはどうでもいい。今の俺ロシナンテ・ナンチャッテは、若妻のドルシネアをひどく愛している。彼女なしでは生きていけないほどに、だ。
だってだって、あんなに美人で若いのに、11も上の俺なんかを選んでくれた。ふざけた名前でも可愛いと言ってくれた。「ロシナンテ」には「影の実力者」という意味も併せ持っているのよ、なんて。ちょっと的を得過ぎて、ぎくりとしたが。体の相性もバッチリで、毎晩のように満足…いや、それはどうでもいい。どうでも良くないが、今はそこじゃない。股間がやばくなるから、考えないようにしなくては。
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今度、真面目にゴム素材を探そう。
だから会うのは最短でも明日。今晩は寝ずに仕事をしよう。ドルシネアのいないベッドなんて、書類のない執務机と同じだ。
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