最強の魔術師と最悪の召喚魔

ノイ

文字の大きさ
上 下
19 / 21
2章 教育

19 トラブル

しおりを挟む
「えー。では、これより、授業を始めます。まぁ、俺はそこまで筆記は教えないけどな」

「どういうことですか?」

「そうだな。まぁ、言っておこう。俺ははっきり言って筆記はいらないと考えている。それはなーーー」


俺はそれについての自分の意見を説明し始める。この世界では実力が全て。どんなに筆記が出来ても実技が出来なかったらそれは差別の対象でしかない。だからこそ、このクラスをなくさないためには試合に勝たなければならない。
3人の俺の生徒たちは「なるほど」と頷いている。

「分かったか?」

「「「はい」」」

「じゃあ、実技室にでも行くか?」

「それなんですが………」

その中の少女の一人が申し訳なさそうに説明する。その少女が言うにはこのクラスには実技室を使用する権利すらも貰えていないのだという。俺がここにいた時も差別はあった。しかし、それでもその権利くらいは得ていた。

「なるほどな……じゃあ、少し遠いけど高等部のを使うか」

「え………いいんですか?許可が必要なんでは」

「そうだな、じゃあ、電話してくるから少し待ってろ」

「だ、誰にですか?」

「誰って………ローザ学園長以外に誰がいるんだ?」

「直接なんですか?あなたは……何者」

「じゃあ、言ってくるから少し待ってろよ」

「「「はい……」」」

俺はそのクラスを出る。そして、ズボンのポケットから俺の携帯電話を取り出す。そして、連絡先を選択してローザさんに電話をかける。プルプルと2回鳴ったところで「もしもし」という声が電話の奥から聞こえてきた。

「もしもし、ローザさん?」

「ナツくん、どうしたの?」

「いや……高等部の実技室を使いたいんだけど」

「あぁ……あのクラスは使用権がないんだっけ?」

「そうそう、ローザさんに中等部のことは頼めないし高等部のを貸して欲しいんだけど」

「まぁ、いいけど。立会人がいないとな」

「あぁ……そうか。じゃあ、レイラさんを立会人にしてくれないか?」

「………レイラ・グラーニンのことか?」

「そうですけど」

「なるほどね………着替えをしてもらって結構、仲良くなったみたいで」

「いやいや、俺の知り合いで頼める人がローザさん以外にいなかったっていうだけだよ」

「まぁ………いいけど。間違いを起こすなよ。中学生にもレイラにも」

「んなわけあるかっ!じゃあ、頼んだよ。今から行くから」

「あぁ……分かった。手配しておく」

「じゃあ」

俺は電話を切ってポケットに携帯電話を入れた。そして、俺は教室に戻る。

「許可取れたから行くか」

「も、もう……ですか?」

「あぁ……立会人はちゃんとしているから」

俺たちは教室から出てから向かおうとする。しかし、俺は忘れ物を思い出したかのように3人の少女たちに言う。

「すまん。先に行っててくれ。少し用事を思い出した」

「は、はい。用事って何ですか?」

「まぁ、俺も一応雇われ教師だからな。それなりのことはしとかないといけないんだよ」

「へぇ………教師って大変なんですね」

「まぁ、新米だからな。気をつけて行けよ」

「大丈夫ですよ。行くって言ってもこの学園の敷地内ですから」

「そうか?でも、お前らは立場が少し違う」

「大丈夫ですよ」

「そうか、じゃあな」

俺は生徒たちとは逆方面、職員室方面に向かう。そして、俺は小声で、

「はぁ……それがあぶねーって言ってんだよ」

この学園の敷地面積は国内一で、しかも、世界でも上位に位置している。ここのクラスとは違い、エリートと呼ばれている人たちが多くいる。その中には残念なことに差別意識を持っている人もいるのが現状だ。そして、俺は歩き始めた。


###


「ナツ先生って何考えているか分からないね」

「だね………筆記はほとんどしないって言ったってテストがあるのにどうするのかね?」

「さぁ………考えがあるんじゃない?」

「そうかなぁ………」

この3人はとても仲良しだ。補習室という境遇なのにいつも明るく振る舞っている。しかし、ナツ・ヴァーンという未知の先生がやってきてこの3人は動揺を隠せない。

そして、この3人がこの補習室にいる理由の一つがもうすでにここに出ていた。勝ったことがないという理由には注意力が足りないなどがある。この時もそうだ。

3人で歩きながら話し込んでいるとドスンという音とともに嫌な気配だけが漂ってきた。3人とは比べ物にならないほど大きな魔力の量。3人は思わず後ろに一歩、後ずさる。

「何だてめーら。いてーじゃねーか」

「ひっ…………オルガ先輩」

「はっ、補習室の連中じゃねーか。お前らは誰にぶつかってんだ?」

「す、すいません。私たちの注意力が足りませんでした」

「へぇ………それだけで許されるとでも?この学園では強い方が優遇されるのはお前らも知っているよな?」

「も、もちろんです」

「じゃあ、ここで何やられても文句を言えないよな?」

「え………っ、」

オルガ先輩は拳を振り上げ、殴りかかろうとした。その拳には多くの魔力が注ぎ込まれている。もし、直撃したら相当なダメージを与えること間違いない。

頭ではそれが完璧に分かっている。しかし、それに身体はついていかない。恐ろしい状況に直面した3人は目を瞑る。その時だった。

「何をしている?」

「てめー、何者だ」

オルガ先輩に睨みを利かしているナツ・ヴァーンがそこにはいた。しかも、オルガ先輩の喉元には一本のナイフが突きつけられていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

ああ、もういらないのね

志位斗 茂家波
ファンタジー
……ある国で起きた、婚約破棄。 それは重要性を理解していなかったがゆえに起きた悲劇の始まりでもあった。 だけど、もうその事を理解しても遅い…‥‥ たまにやりたくなる短編。興味があればぜひどうぞ。

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【本編完結】実の家族よりも、そんなに従姉妹(いとこ)が可愛いですか?

のんのこ
恋愛
侯爵令嬢セイラは、両親を亡くした従姉妹(いとこ)であるミレイユと暮らしている。 両親や兄はミレイユばかりを溺愛し、実の家族であるセイラのことは意にも介さない。 そんなセイラを救ってくれたのは兄の友人でもある公爵令息キースだった… 本垢執筆のためのリハビリ作品です(;;) 本垢では『婚約者が同僚の女騎士に〜』とか、『兄が私を愛していると〜』とか、『最愛の勇者が〜』とか書いてます。 ちょっとタイトル曖昧で間違ってるかも?

処理中です...