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1章 学園1
08 START
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「ローザさんっ!俺たちに不利のように働いてませんか?」
「どうして、そう思うんだ?」
「俺たちはまだ、会ったばかりです。それなのに、よりによってリンと副会長って」
「……まぁ、そうだな。でもさ、ナツくんにはこれが一番、必要だと思ったんだよ」
「それは………」
俺が理由を聞こうとした瞬間、ローザさんは俺の言葉を遮る。
「では、準備が出来たようだ。第一実技室に向かおうか」
「はい」
レーナはしっかりと返事をする。俺はさっき誤魔化されたようにも思えてローザさんに問おうとする。しかし、
「ナツくん。君は前に進まなければならない。そして、周りを見なければ分からないことだらけだ」
「それは………どういうことですか?」
「自分で考えな。それがナツくんのためだから」
ローザさんは学園長室のドアをゆっくりと開け、外に出る。そして、それに続いて俺たちも外に出る。ローザさんの言っていることは分かるようで分からなかった。
俺たちは学園長室のある第一教育棟にいた。そして、今から行くのは実技室が幾つかある第二教育棟だ。その二つはこの敷地内に大きく陣取っている。
「………でけー」
「そ、そうですね」
「そりゃあ、そうだよ。この中には実技施設が充実しているからね」
「はぁ……」
俺とレーナは目隠しと手錠をされてこのヴァレッヂ学園に連れてこられた。そのためか、この学園の大きさに感動する時間がなかった。敷地面積、世界トップクラスを誇っているだけのことはある。
そして、第二教育棟は俺たちがいた第一教育棟よりも遥かに大きかった。この棟の中の充実性がうかがえた。
「では、感動しているところ悪いが、中に入るぞ」
「は、はい」
「はい」
俺たちは中に入っていく。中には玄関があり、この棟全体が土足厳禁になっているらしい。俺たちは用意されていたスリッパを履き、中に上がった。
その中での俺やレーナの驚きはすごかった。最新の肉体マシーンや精神を鍛えるトレーニング機まで最前線のそれそのものだった。その機器たちは俺がいた頃とは比べ物にならないほど進化していた。
「団体戦を行うのはここの二階にある実技室の一つだよ」
「そうなんですか………」
俺たちは玄関の正面に設置されている階段を上ると、下からでは見ることのできなかった上の状況が露わになる。それはさっきとはまた、違う意味で驚きを隠せなかった。
「すごい数の……部屋」
「そ、そうですね」
一階にはトレーニング機が多くあった。しかし、二階にはそういった機器はなく、ズラーッと部屋が並ぶだけだった。その圧倒される数に俺たちは驚いていた。
その中のたくさんの実技室の中には『使用中』というプレートが貼ってある。俺たちが使うことになっている第一実技室は『未使用』となっているため、誰も使っていないということなのだろう。
「では、入るか」
「は、はい」
「はい」
俺たちはローザさんの後に続き、その第一実技室に入っていく。その中も驚くべき対象だった。
真っ白で何もないその部屋は実技をするといった感じが全くと言ってもいいほどしなかった。
「じゃあ、そこで少し待ってて」
「はい」
俺たちはその白い部屋で待っているように指示された。ローザさんが向かったのはこの部屋に一つしかない階段。そこを上ると上にあるモニタールームに行くのだという。俺たちは少しだけ緊張しながらローザさんの指示があるのを待っている。すると、
『そこに宝箱があるのが見える?』
モニタールームからのスピーカーの声が俺たちに届く。俺たちはローザさんの指示を聞いて辺りを見渡す。すると、俺たちがいるところを少し歩くとその宝箱が見えた。
「はい、あります」
リズ・マクラウドが答える。それに応答したようにローザさんは
『そうか。じゃあ、それを開いてくれ』
「は、はい」
その宝箱は全部で3つあった。俺たちはその宝箱を何の躊躇もせずに開いた。その中には数種類の武器が入っている。そして、
『平等にするためこの武器で戦ってもらう。どの武器を選んでもらっても構わない』
「分かりました」
そう言われると俺たちは真剣に武器を選び出す。勝負は実力が全てではない。武器の選択や戦術などで勝つことも負けることも多々ある。
しかし、俺は一切悩まず、すぐにその中にあった武器を手に取った。
「俺はこの武器にします」
その武器は短剣。
短剣の特徴はスピードと攻撃回数だ。俺にはそれが一番合っていると思っている。
しかし、俺がリンと合わなくなってから数年経っている。能力値も高くなっているに違いない。しかも、俺はここ数年、ほとんど魔法に関わっていない。
正当にやっても勝てる気がしない。
全員が選び終えるとローザさんが指示をする。
『では、今から10分後に団体戦を始める。制限時間は30分だ。この10分は作戦会議の時間とする。考えろ。自分のやるべき役割を』
「はいっ!」
そして、俺の負けることの許されない試合が始まろうとしていた。
「どうして、そう思うんだ?」
「俺たちはまだ、会ったばかりです。それなのに、よりによってリンと副会長って」
「……まぁ、そうだな。でもさ、ナツくんにはこれが一番、必要だと思ったんだよ」
「それは………」
俺が理由を聞こうとした瞬間、ローザさんは俺の言葉を遮る。
「では、準備が出来たようだ。第一実技室に向かおうか」
「はい」
レーナはしっかりと返事をする。俺はさっき誤魔化されたようにも思えてローザさんに問おうとする。しかし、
「ナツくん。君は前に進まなければならない。そして、周りを見なければ分からないことだらけだ」
「それは………どういうことですか?」
「自分で考えな。それがナツくんのためだから」
ローザさんは学園長室のドアをゆっくりと開け、外に出る。そして、それに続いて俺たちも外に出る。ローザさんの言っていることは分かるようで分からなかった。
俺たちは学園長室のある第一教育棟にいた。そして、今から行くのは実技室が幾つかある第二教育棟だ。その二つはこの敷地内に大きく陣取っている。
「………でけー」
「そ、そうですね」
「そりゃあ、そうだよ。この中には実技施設が充実しているからね」
「はぁ……」
俺とレーナは目隠しと手錠をされてこのヴァレッヂ学園に連れてこられた。そのためか、この学園の大きさに感動する時間がなかった。敷地面積、世界トップクラスを誇っているだけのことはある。
そして、第二教育棟は俺たちがいた第一教育棟よりも遥かに大きかった。この棟の中の充実性がうかがえた。
「では、感動しているところ悪いが、中に入るぞ」
「は、はい」
「はい」
俺たちは中に入っていく。中には玄関があり、この棟全体が土足厳禁になっているらしい。俺たちは用意されていたスリッパを履き、中に上がった。
その中での俺やレーナの驚きはすごかった。最新の肉体マシーンや精神を鍛えるトレーニング機まで最前線のそれそのものだった。その機器たちは俺がいた頃とは比べ物にならないほど進化していた。
「団体戦を行うのはここの二階にある実技室の一つだよ」
「そうなんですか………」
俺たちは玄関の正面に設置されている階段を上ると、下からでは見ることのできなかった上の状況が露わになる。それはさっきとはまた、違う意味で驚きを隠せなかった。
「すごい数の……部屋」
「そ、そうですね」
一階にはトレーニング機が多くあった。しかし、二階にはそういった機器はなく、ズラーッと部屋が並ぶだけだった。その圧倒される数に俺たちは驚いていた。
その中のたくさんの実技室の中には『使用中』というプレートが貼ってある。俺たちが使うことになっている第一実技室は『未使用』となっているため、誰も使っていないということなのだろう。
「では、入るか」
「は、はい」
「はい」
俺たちはローザさんの後に続き、その第一実技室に入っていく。その中も驚くべき対象だった。
真っ白で何もないその部屋は実技をするといった感じが全くと言ってもいいほどしなかった。
「じゃあ、そこで少し待ってて」
「はい」
俺たちはその白い部屋で待っているように指示された。ローザさんが向かったのはこの部屋に一つしかない階段。そこを上ると上にあるモニタールームに行くのだという。俺たちは少しだけ緊張しながらローザさんの指示があるのを待っている。すると、
『そこに宝箱があるのが見える?』
モニタールームからのスピーカーの声が俺たちに届く。俺たちはローザさんの指示を聞いて辺りを見渡す。すると、俺たちがいるところを少し歩くとその宝箱が見えた。
「はい、あります」
リズ・マクラウドが答える。それに応答したようにローザさんは
『そうか。じゃあ、それを開いてくれ』
「は、はい」
その宝箱は全部で3つあった。俺たちはその宝箱を何の躊躇もせずに開いた。その中には数種類の武器が入っている。そして、
『平等にするためこの武器で戦ってもらう。どの武器を選んでもらっても構わない』
「分かりました」
そう言われると俺たちは真剣に武器を選び出す。勝負は実力が全てではない。武器の選択や戦術などで勝つことも負けることも多々ある。
しかし、俺は一切悩まず、すぐにその中にあった武器を手に取った。
「俺はこの武器にします」
その武器は短剣。
短剣の特徴はスピードと攻撃回数だ。俺にはそれが一番合っていると思っている。
しかし、俺がリンと合わなくなってから数年経っている。能力値も高くなっているに違いない。しかも、俺はここ数年、ほとんど魔法に関わっていない。
正当にやっても勝てる気がしない。
全員が選び終えるとローザさんが指示をする。
『では、今から10分後に団体戦を始める。制限時間は30分だ。この10分は作戦会議の時間とする。考えろ。自分のやるべき役割を』
「はいっ!」
そして、俺の負けることの許されない試合が始まろうとしていた。
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