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1章 イグニドル

8話 『ピンチの序章』

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ステラの所持している武器は普通の短剣だった。


俺は武器自体を持っていない。


しかし、この世界は剣だけが取り柄の世界ではないということを俺は知っている。


剣よりも魔法。


それがこの世界の基本となっているのだ。


実際はその両方を完璧に使いこなせばいいのだが、二度目の異世界はまだ、始まったばかりだ。


俺の使える魔法は限られている。


それは、レベルが1だからというのもあるが、それだけではない。


この世界には冒険者と大まかに言っても色々な職種がある。


剣を主に使う【剣騎士《ナイト》】や魔法を主に使う【】魔法騎士《マジック・ナイト》】がある。


その他にも色々とあるのだが、これらはこの世界で生まれた瞬間に適性が決まってくる。


俺は5年前に来た時も今回の時も同じで【剣騎士《ナイト》となっている。


ナイトは特に接近戦を得意とする。


そのせいか、武器にかける魔法が多い。


俺はレベル1なので、そこまで多くはないがそれが得意となる。


今の俺に使える攻撃魔法と言ったら第2級までだろう。


第2級というのは魔法の階級を意味する。


この世界の魔法は初級、中級、上級がある。


そして、それぞれの中には第何級と割り振られている。


一番弱い、初級が第1級と第2級。


中級が第3級と第4級。


上級が第5級と第6級となっている。


俺はまだ、初級までしか使えないが、グルルントス一体なら平気だろう。


しかし、やはり俺よりも攻撃力の高いのはステラの攻撃だろう。


俺はそのサブでしかない。


そんなことを考え俺はまず、ステラの持っている短剣に魔法をかけることにした。


「【第2級付与魔法 ウィンド・アウター】」


俺がそう唱えるとステラの持っていた剣がいきなり光り出す。


「……す、すごいです。軽くなった」

「だろ?俺の属性は風だからな」


俺の魔法のほとんどは素早くしたりする。


このウィンド・アウターもその中の一種だ。


じっと睨み合っていたグルルントスとステラはグルルントスが動き始めたことにより戦闘が開始される。


まず最初にステラはグルルントスの上の方に斬撃をいれる。


グルルントスは毒を持っている。


それよりも、危険なことがある。


それは、グルルントスの肌は予想以上に硬かったということ。


ステラの斬撃は見事に跳ね返される。


見た限りでは一切、攻撃は食らっていないように見える。


俺は遠くから魔法を唱える。


「【ウィンド・テイク】」


俺の手のひらには風の塊。


いや、小さな台風の目のようなものができた。


それをグルルントスに向けて放つ。


まっすぐ飛び、グルルントスに直撃する。


俺の魔法は実体がない。


そのため、炎属性の技やステラのような剣技では硬く、砕けなかった皮膚を砕かずに攻撃することができる。


その通りでグルルントスは「うーーーー」と唸った。


その瞬間を狙ったようにステラは剣技の魔法を唱える。


「【第2級剣技 ファルター・ヒィクス】」


ステラは足に力を入れ、グルルントスを上から狙おうと思ったらしい。


そして、ステラは空からグルルントスに向けて攻撃を放った。


すると、グルルントスの硬くて丈夫だった皮膚は破壊された。


そして、それに続くようにステラは斬撃を放った。


その斬撃が直撃したグルルントスは、灰となった。


「はぁ……やっと終わったな」

「は、はい」


俺自身はそこまで何もしていないのだが、体力だけは削られていた。


それは、レベルが低いからだろう。


俺たちの成果により、グルルントスは倒された。




その後、俺たちはおなじことを繰り返してグルルントスを倒し続けた。




グルルントスを5体倒した俺たちはクエストクリアとなった。


「終わったな……」

「は、はい。じゃあ、ギルド協会に行きましょう」

「あぁ……」


俺たちは森を降り、クエスト報酬を貰うためにギルド協会へ向かった。


ギルド協会に着くと俺たちは躊躇なく、その扉を開ける。


そして、入るといつもと違うということに気がつく。


それは、いつもいるはずの執事服の青年が扉前に立っていないということが始まりだった。


ギルド協会の中を一通り見回すと客はほとんどいなかった。


それどころか、店員たちは慌てている様子。


俺は近くにいた従業員にこの状況について聞く。


「……何か、あったんですか?」


俺たちの存在に気がついた従業員は慌てながら説明をしてくれた。


「はい。この街の門のあたりに異様な魔力を感知しまして」

「異様な……魔力?」

「はい。ひとつひとつは大したことないのですが、その数の膨大さが」

「多くの魔力? どういうことだ」

「分かりません。なので、この街にいる全員の冒険者に緊急クエストという名で出ています」

「それは……相当な事態だな」

「はい」


俺が知る限り、緊急クエストが出たことなどない。


それは、こんな形で異様な魔力が感知されるなんてことはなかなか無いのだ。


「あなた方も門にお集まりください」

「分かりました」

「は、はい」


俺たちは冒険者としてクエストに参加することになった。


やはり、一難去って一難。


この世界ではゆっくり出来ないようだ。
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