砕魔のミョルニル

松山さくら

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第9章 追憶

第163話 時の歪みの塔・10階ボス戦

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そう、実はオレたちは5人パーティになっていた。
あれは確か7階のボスを攻めあぐねている頃だったと思うが、
一人の人間の男が現れて、オレたちに声をかけてきたのだ。

「俺はリエースっていうんだ。何度か挑戦したがこのボスは通常の武器ではダメージが与えられないみたいなんだ」

実はこの言葉がきっかけとなって、リッチがアンデッドであることに気づいた。
そして次の戦いではパマーダの聖別武器セイクリッド・ウェポンを試し、オレたちは遂にリッチを倒すことができた。
リエースもその戦いに参加し、パマーダに聖別された武器で最初の一太刀を浴びせていた。
戦闘後、自然と行動を共にするようになり今に至る。

リエースはかなり強力な軽戦士フェンサーで、ほうっておくとオレたちが手を下す前に大方のモンスターを始末しているときがある。
これでは修行にならないということで、どうせならどんどん先に進んで強い敵を狙いにいこうと、その後は各フロアの探索もそこそこに、上また上のボス戦に挑んでいるのである。

「まず武器にかける魔法はマストだね。パマーダにしっかり魔法を唱えてもらってから突っ込もう」
「やつは一定の距離を保とうとすると、遠距離魔法を使ってくる。オレならいくら魔法をくらっても大丈夫だ」
オレはつい最近身につけた技能を、さも昔からあったかのように話した。
「魔法を食らったあとはどれくらい攻撃できる?」
「3人で3撃。いやリエースは2回いけるか。4撃だ」
リエースはうなずいた。
「ゲネオスはやつの直接攻撃に耐えられるか?」
ゲネオスはちょっと困った顔をした。
「う~ん、通常ダメージなら大丈夫だけど、クリティカルを食らうと厳しい。1発であの世が見えるレベルだから」
「じゃあ攻撃した瞬間距離を取れるか? おれなら2,3発なら耐えられると思う」
「それなら俺も1撃入れたあと離脱してもいいか?」
とリエースが訊いてきた。
「俺はゲネオスよりも耐久力がないんだ。もちろんチャンスがあれば2撃入れる」
「分かった。マスキロはどうする?」
「前の3人の魔法耐性は上げておく。あとは攻撃魔法をじゃんじゃん撃っていくから頑張ってよけてくれ」
愚問だった。オレが魔法攻撃を引き受けるというので、自身の防御のことを考えず、自由に球を撃てると思っているらしい。
「よし、じゃあいこう!」
ゲネオスの声にハドルが解けた。





そんなこんなでオレたちはヴァンパイア・ロードを倒すことができたのだが、ヴァンパイア・ロードは死に際にこんな言葉を残していった。

「ふふふ、そなたは1ヶ月以上もこの塔にいるのか。ん?そちらは半月も経たぬと? そうか、そんな短い間でこの10階まで来るとはな。しかし早く帰った方がいいのではないか? お前たちもこの塔での訓練の成果を早く見せたいだろう? 知っている人間に」
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