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第9章 追憶
第158話 帰還魔法
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その日の夕方にはゲネオスも目覚めた。
これはその日の夜、まだ横たわったままのゲネオスが教えてくれたことだ。
敵のグレーター・デーモンがファイヤーボールを放ったとき、オレはなすすべもなく立ち尽くしていた。
先頭にいたオレはファイヤー・ボールをまともに受けることになったからだ。
しかし炎がオレに触れそうになった瞬間、オレの髪の毛の中で何かがキラリと光り、前方にバリアーが形成されたのだという。
「アクリスだ……」
オレはすぐに分かった。実はマスキロによって脚の欠けたコオロギに変えられたアクリスは、普段はオレの髪の中に隠れているけれど、オレと二人きりになったときは髪の中から抜け出して、すぐ近くに佇んでオレの方をじっと見つめていることがあった。
アクリスも元はハーフエルフ。しかもかなり上位のエルフ族である。コオロギとなった後も習い覚えた魔法は使うことができたのかもしれない。
しかしそのバリアーはファイヤーボールの威力を僅かに軽減してくれたものの、オレはほぼ真っ黒焦げになってしまった。顔も唇が焼き切れて歯が剥き出しの状態だったという。
後方の三人もオレほどのダメージは避けることができたが、いずれも半死半生の状態だった。
ゲネオスもオレほどではないがかなりのほぼ致命傷のダメージを受けていて、もう少しで意識を失うというところだったが、そんな中でも呪文を唱えようとしていた。
しかしその最中に悲鳴を上げ、それ以上詠唱を続けられなくなった。
マスキロもかなりのダメージを受けていたが、そのゲネオスを見てこう言った。
「ゲネオス。恐れるな。おぬしが魔法を使いこなせないのはマナの絶対量が足りないだけだ。今はこれを使え」
そう言うとローブの隠しから、これまた人の頭くらいのサイズのマナ・ストーンを取り出し、ゲネオスに向けて放り投げた。
「今は石の力を借りればよい。皆を救ってやってくれ。頼むぞ」
そう言うとマスキロも地面に突っ伏してしまった。
ゲネオスは転がってきたマナ・ストーンを拾い上げると、呪文の詠唱を再開した。
詠唱はモンスターたちの前衛(多くがファイヤー・ボールに巻き込まれて死んでいた)がオレたちに到達する前に完成した。
「帰還!」
これはその日の夜、まだ横たわったままのゲネオスが教えてくれたことだ。
敵のグレーター・デーモンがファイヤーボールを放ったとき、オレはなすすべもなく立ち尽くしていた。
先頭にいたオレはファイヤー・ボールをまともに受けることになったからだ。
しかし炎がオレに触れそうになった瞬間、オレの髪の毛の中で何かがキラリと光り、前方にバリアーが形成されたのだという。
「アクリスだ……」
オレはすぐに分かった。実はマスキロによって脚の欠けたコオロギに変えられたアクリスは、普段はオレの髪の中に隠れているけれど、オレと二人きりになったときは髪の中から抜け出して、すぐ近くに佇んでオレの方をじっと見つめていることがあった。
アクリスも元はハーフエルフ。しかもかなり上位のエルフ族である。コオロギとなった後も習い覚えた魔法は使うことができたのかもしれない。
しかしそのバリアーはファイヤーボールの威力を僅かに軽減してくれたものの、オレはほぼ真っ黒焦げになってしまった。顔も唇が焼き切れて歯が剥き出しの状態だったという。
後方の三人もオレほどのダメージは避けることができたが、いずれも半死半生の状態だった。
ゲネオスもオレほどではないがかなりのほぼ致命傷のダメージを受けていて、もう少しで意識を失うというところだったが、そんな中でも呪文を唱えようとしていた。
しかしその最中に悲鳴を上げ、それ以上詠唱を続けられなくなった。
マスキロもかなりのダメージを受けていたが、そのゲネオスを見てこう言った。
「ゲネオス。恐れるな。おぬしが魔法を使いこなせないのはマナの絶対量が足りないだけだ。今はこれを使え」
そう言うとローブの隠しから、これまた人の頭くらいのサイズのマナ・ストーンを取り出し、ゲネオスに向けて放り投げた。
「今は石の力を借りればよい。皆を救ってやってくれ。頼むぞ」
そう言うとマスキロも地面に突っ伏してしまった。
ゲネオスは転がってきたマナ・ストーンを拾い上げると、呪文の詠唱を再開した。
詠唱はモンスターたちの前衛(多くがファイヤー・ボールに巻き込まれて死んでいた)がオレたちに到達する前に完成した。
「帰還!」
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