サルダドは +3 ウォーハンマー《星砕きのミョルニル》を手に入れた

マツノポンティ さくら

文字の大きさ
上 下
137 / 198
第8章 海峡の男

第137話 二つの塔

しおりを挟む
「ようこそ、高地の街へ!」
街に入ったオレたちに最初の街人まちびとが声をかけてきた。
「そうか、ここは高地の街というのか。そのままだな」
オレが言うと、
「いや、正式な名前はほかにあるのかもしれないよ。高地の街はただのニックネームなのかも」
とゲネオスが返した。

しかし愛想が良かったのは最初の街人だけで、その後すれ違う街人は皆オレたちのことをジロジロ眺めてきた。
宿屋の場所を尋ねても、
「宿屋はここにはないよ。旅人が来ないからね」
とそっけない返事だった。
「仕方ない。せっかく街に来たけど、一旦外に出てまた野宿だな」
とオレが言うと、
「あ~あ、久しぶりにベッドで寝られると思ったのに」
パマーダは空を見上げて嘆息たんそくした。

「旅の方、よろしければ私の家に逗留とうりゅうなさいませんか?」
なんとはなしに街の中をぶらぶらしていると、男が一人、オレたちに声を掛けてきた。
「私の家は広くはありませんが、両親が他界したので空きのベッドがあります。皆さんが泊まることくらいはできるはずです」
それを聞いてパマーダの顔がパッと輝いた。
「それは有り難いんですが、ボクたちのような旅の者が急にお世話になっても構わないんですか?」
ゲネオスが尋ねると、
「全然構いません。宿代も結構です。ただ、、、一つお願いしたいことがあるのです」
そのときオレたちは久々に屋根のあるところで泊まれそうだったので、少々のお願いなら聞く気になっていた。
「オレたちでできることならなんなりと!」

男の家はごく普通の住宅という感じがした。石造りの家が軒を連ねている一画の中にあり、家は2階建になっていた。
2階にはこの男のベッドルームと、おそらくは彼の両親が使っていたベッドルームがあった。1階はほぼ全てがリビングで、小さなキッチンが付属していた。
極めてシンプルな造りだが、リビングの中央に家のサイズの割りには巨大な暖炉が鎮座ちんざしているが唯一目を引いた。
「そういえば名前を聞いてなかったな」
オレが尋ねると男は答えた。
「私ですか? 私の名前はムイースと言います」
オレたちもそれぞれ自己紹介をした。

「街の外の塔はご覧になりましたか?」
「ああ、見たよ。あれはやはり塔なのか?」
「私は塔と呼んでいます。ただ塔として使われていたのかどうかは分かりません。私には別の考えもあります」
どうもあの建造物が今回の依頼に関係しそうだ。
「実は塔はもう一つあるんです。海峡の向こう側に」
「海峡???」
こんな海から離れた高地で海峡の名前が出てくるとは思わなかったので、オレたちは思わず聞き返した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシャリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

処理中です...