サルダドは +3 ウォーハンマー《星砕きのミョルニル》を手に入れた

マツノポンティ さくら

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第8章 海峡の男

第133話 デルタ地帯

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パランクスの山城を後にして、エルフたちの指示に従って道を進むと、最初に来たときとは全く異なる場所に出た。
森の中に枯れ葉が積もっているのは同じだが、足元をちょろちょろと水が流れ、全体的に空気がしっとりとしているように感じる。
水の流れはやがて小川になり、横切るのに一苦労しそうなところも出てきた。
差し当たりオレたちは川に沿って歩いたが、目指す先である東を考えると、川は横切っていった方がよさそうだ。
流れの浅いところを選んでは渡河とかをし、しばらく歩いてまた別の流れに出会うと、そこも渡河することを繰り返した。
「このエルフがくれたブーツは良いね」
ゲネオスが言った。オレも全く同じことを思っていた。
パランクスを出る前、エルフはオレたちにブーツをプレゼントしてくれた。
このブーツで川に足を踏み入れても、全く水が通らない。たまに深みにはまって水がブーツの中に入り込んでくることもあったが、川を出てしばらくすると、あっと言う間にブーツの中も乾いてしまうのだ。
オレたちはこうした湿った土地を歩いているにしては、快適な旅を続けることができた。

さらに進むと、一見して徒歩では渡れないと分かるような、流れの深い河に突き当たった。
しばらく河の流れにそって北上したが、流れがやや西寄りになったところで、オレたちは互いに顔を見合わせてうなずいた。
オレはふところから小さく縮んだ満ち欠けのボートを取り出すと、それを河に浮かべ、エレミアから教わった呪文を唱えた。
満ち欠けのボートはうっすら輝くと、すぐにぐぐぐっと大きくなり、やがて人が乗れるサイズのボートになった。
オレたちはボートに乗り込み、しばし流れを利用しながら対岸へと渡った。
ボートの中にはかなり沢山の食料と水が積み込まれていた。
食料に関してはビスケットのようなものが大半だったが、一口かじるととても美味しく、そして驚いたことにちょっとの量でお腹が膨れた。
「エルフが作るものは全てが驚かされるな」とオレはつぶやいた。
それを聞いてマスキロは言葉を続けた。
「確かにそれはそうだが、大きな事を成し遂げるのがエルフとは限らん。むしろ短命モータルの人間こそが……」
最後の方はもごもごとくぐもっていたのでハッキリ聞こえなかった。

元来た道を振り返ると、山城のあった山岳地帯はもうだいぶ遠くなった。
山岳地帯から真っ直ぐ北へ、断崖絶壁が伸び、それは海の方向まで続いていた。
断崖絶壁の手前、つまりオレたちのいるところは低い土地になっていて、木々も多く、河や湿地帯も多い。
オレたちはこのようにしてデルタ地帯の旅を続けた。
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