砕魔のミョルニル

松山さくら

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第7章 砂漠のエルフ(下)

第100話 エルフの城

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ここは不思議な空間だった。
階段は崖にきざまれているのだから、その角度は当然相当急なはずだ。
なのに階段は一つ一つの段が少し高いかなという程度で、普通に歩ける程度の傾斜しかない。
オレは岩肌を削って作ったと思われる階段を一歩一歩登っていった。

しばらく進んでから、オレはハッとして後ろを振り返った。みんなはどうしているのだろう?
当然オレからみんなは見える。しかしその見え方はかすみがかかったような、半透明のような、何か薄いヴェールを通して見ているような感覚がした。
それにちょっとしか登っていないように感じていたが、結構上の方まで来ていることに驚いた。
オレは近くにモンスターがいないことを確かめてから、下の仲間に向かって大きく手を振った。しかしゲネオスたちから特に反応はなかった。
しばらくするとみんなは崖に向かって動き出した。オレは止まって待つことも考えたが、そのままゆっくり目のペースで進んでいくことにした。

かなり時間が経ってから、みんながオレに追い付いてきた。
「待っててくれればよかったのに」とパマーダが言った。
「いや、みんなが登ってくるのを見てからかなりペースを落としていたんだが」
オレももっと早くに追い付かれると思っていたので、おかしいと感じていたのだ。
パマーダは単に首を傾げた。
「それで、外からはどんなふうに見えた?」とオレが訊いた。
「ああ、サルダドが崖の階段に足をかけた瞬間、サルダドの姿が薄まっていき、すぐにまったく見えなくなったんだ」とゲネオスが答えた。
やはりこの階段は不思議な力に覆われているようだ。

「なんだかおかしな空間ね。階段自体は凄く狭くて急なはずなのに、私たちだけでなくミラヤも何の問題もなく登っていける」
オレたちはその後も一列に並んで上へ上へと進んでいった。
時々下の方に目をやると、モンスターたちがまばらに下の道を通過して行くのが見えた。しかしどのモンスターも崖に隠された階段や、オレたちの姿は見えないようだ。

急に外に出た。
いや、元々崖の階段は外にあったのだが、外に出たと言うのはおかしい。しかし、外に出たとしか形容できないほど、明らかに周囲の雰囲気が変わった。
体にまとわりつくような半透明のヴェールが消え去った。
そこに広がっていた風景は驚くべきものであった。
真っ青な空のもと、目に映ったのは、城壁、城壁、城壁。
明らかにオレたちは崖の上に来ていた。そして崖の縁に沿って重厚な城壁が築かれている。そしてその内側にも二重に城壁が築かれ、その中に石造りの塔と館が建てられていた。
オレはノトスの街の廃墟を思い出していた。ここにある城壁の出来映えはそれに勝るとも劣らない。山の上に築かれた分、ノトスよりも高度な技術が必要とされたはずだ。
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