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第7章 砂漠のエルフ(下)
第97話 人間の寿命
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「ダーク・メイジの中には人間もいるのか?」
オレはさっき見たローブの中の顔を思い出しながら言った。
「ああ、人間もいる。デーモンもいる。オークも僅かにいる。極めて稀にオークの中でも知性の高い者が生まれることがあるからな。そして、エルフやハーフ・エルフも……」
ゲネオスが驚いて言った。
「エルフも闇落ちすることがあるの?」
「ある。エルフが暗黒に圧迫されてからもう何百年も経つ。その間エルフの誇りを失ってしまった者もいる」
「けどどうしましょう? 明後日の朝には総攻撃をかけるみたいよ」
パマーダが言った。
「なんとかそれまでにエルフに接触したいけど、あの崖じゃあ……。オレたちもカタパルトで打ち上げてもらおうか?」
オレは冗談交じりに言ったのだが、ゲネオスは真面目に反論した。
「それは無理だよ。カタパルトは修理中だし、そもそもオーガーがいないとあのカタパルトは使えない」
オレは冗談だと言い訳するのはやめにして、次の提案をした。
「少なくとも今の時点ではオレたちはこのキャンプをフリーパスで動き回れる。少し情報を集めて、作戦を練ろう」
夜になった。
モンスター・キャンプに静寂は訪れない。なぜなら夜行性のモンスターも沢山いるからである。
一部の巨大な昆虫類が森の中に向かっているのは気配で感じた。その後森の中から動物たちの叫び声が聞こえてきたが、あまり深く想像しないことにした。
キャンプの中にもちょっとした飲食物を提供する場はあるようである。
オレたちはのその中で人間向けと思われる店を発見し、その端っこの方に居を構えた。
(その前にオーク用の店も見つけたが食欲を削がれる臭いがした)
隣のテーブルには先ほどのダーク・メイジがいた。その仕草から、おそらくデーモンの指示を直接受けていたメイジと思われた。
オレたちはそのダーク・メイジに話しかけた。
返答は少ないが、コミュニケーションは取ることはできた。
「この軍に入って長いの?」
パマーダが少し踏み込んだ質問をした。
「なぜ訊く?」
「……そうね。ちょっとワタシたちも転職を考えているの。いつまでも運送屋でいるわけにはいかないから」
「お前たちはイマミアンドから来たんだろ? イマミアンドからここへは相当の実力がないと踏破できない距離だ」
ちょっと都合の悪い話題になりそうだったので、パマーダは話を切り替えようとした。
「まあそれもそうだけど、後学のために。あなたたちも各地を転戦してきたんでしょ?」
「私たちは司令官の指示するところに向かうだけだ。軍に入ってもう15年になるが、そのうち10年はこの砂漠にいる。ただこの辺りの風景は故郷を思い出させるな」
ダーク・メイジはキャンプ周辺の森に目をやりながらそう言った。
この店はテーブルと椅子があるだけで天井も壁もない。周りの景色がよく見えた。
「どうしてその、、、暗黒の手先、いや軍に入ることにしたの?」
ダーク・メイジは黙ってしまった。そして初めは独り言のように、再び話し始めた。
「暗黒の手先か、、、しかしそうとも言い切れるかな?」
ダーク・メイジは続けた。
「確かに暗黒の支配下に入れば、私たち人間はモンスターのエサにされることもある。しかしそれは運の悪い一部の者だ。何もしなくてもモンスターに街が襲われることもある。そうすれば人々は全滅だ。人の寿命は30歳に過ぎない。しかし暗黒の支配下に入れば40歳まで生きられる。この世界では実力が認められばさらに長生きすることもできる。例えば魔法使いとしての才能を磨くなどして」
ダーク・メイジは席を立ち、店を後にした。
オレたちもその後は長居をせず、モンスター・キャンプを離れた。
キャンプから離れる途中、マスキロが口を開いた。
「人の寿命が30歳だと。そんなことはない。エルフほどの長命は得られぬが、人間はもっと長生きできる。モンスターさえいなければな。あれは暗黒の詭弁だ」
オレはさっき見たローブの中の顔を思い出しながら言った。
「ああ、人間もいる。デーモンもいる。オークも僅かにいる。極めて稀にオークの中でも知性の高い者が生まれることがあるからな。そして、エルフやハーフ・エルフも……」
ゲネオスが驚いて言った。
「エルフも闇落ちすることがあるの?」
「ある。エルフが暗黒に圧迫されてからもう何百年も経つ。その間エルフの誇りを失ってしまった者もいる」
「けどどうしましょう? 明後日の朝には総攻撃をかけるみたいよ」
パマーダが言った。
「なんとかそれまでにエルフに接触したいけど、あの崖じゃあ……。オレたちもカタパルトで打ち上げてもらおうか?」
オレは冗談交じりに言ったのだが、ゲネオスは真面目に反論した。
「それは無理だよ。カタパルトは修理中だし、そもそもオーガーがいないとあのカタパルトは使えない」
オレは冗談だと言い訳するのはやめにして、次の提案をした。
「少なくとも今の時点ではオレたちはこのキャンプをフリーパスで動き回れる。少し情報を集めて、作戦を練ろう」
夜になった。
モンスター・キャンプに静寂は訪れない。なぜなら夜行性のモンスターも沢山いるからである。
一部の巨大な昆虫類が森の中に向かっているのは気配で感じた。その後森の中から動物たちの叫び声が聞こえてきたが、あまり深く想像しないことにした。
キャンプの中にもちょっとした飲食物を提供する場はあるようである。
オレたちはのその中で人間向けと思われる店を発見し、その端っこの方に居を構えた。
(その前にオーク用の店も見つけたが食欲を削がれる臭いがした)
隣のテーブルには先ほどのダーク・メイジがいた。その仕草から、おそらくデーモンの指示を直接受けていたメイジと思われた。
オレたちはそのダーク・メイジに話しかけた。
返答は少ないが、コミュニケーションは取ることはできた。
「この軍に入って長いの?」
パマーダが少し踏み込んだ質問をした。
「なぜ訊く?」
「……そうね。ちょっとワタシたちも転職を考えているの。いつまでも運送屋でいるわけにはいかないから」
「お前たちはイマミアンドから来たんだろ? イマミアンドからここへは相当の実力がないと踏破できない距離だ」
ちょっと都合の悪い話題になりそうだったので、パマーダは話を切り替えようとした。
「まあそれもそうだけど、後学のために。あなたたちも各地を転戦してきたんでしょ?」
「私たちは司令官の指示するところに向かうだけだ。軍に入ってもう15年になるが、そのうち10年はこの砂漠にいる。ただこの辺りの風景は故郷を思い出させるな」
ダーク・メイジはキャンプ周辺の森に目をやりながらそう言った。
この店はテーブルと椅子があるだけで天井も壁もない。周りの景色がよく見えた。
「どうしてその、、、暗黒の手先、いや軍に入ることにしたの?」
ダーク・メイジは黙ってしまった。そして初めは独り言のように、再び話し始めた。
「暗黒の手先か、、、しかしそうとも言い切れるかな?」
ダーク・メイジは続けた。
「確かに暗黒の支配下に入れば、私たち人間はモンスターのエサにされることもある。しかしそれは運の悪い一部の者だ。何もしなくてもモンスターに街が襲われることもある。そうすれば人々は全滅だ。人の寿命は30歳に過ぎない。しかし暗黒の支配下に入れば40歳まで生きられる。この世界では実力が認められばさらに長生きすることもできる。例えば魔法使いとしての才能を磨くなどして」
ダーク・メイジは席を立ち、店を後にした。
オレたちもその後は長居をせず、モンスター・キャンプを離れた。
キャンプから離れる途中、マスキロが口を開いた。
「人の寿命が30歳だと。そんなことはない。エルフほどの長命は得られぬが、人間はもっと長生きできる。モンスターさえいなければな。あれは暗黒の詭弁だ」
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