83 / 175
第7章 砂漠のエルフ(下)
第83話 エルフの館、再び
しおりを挟む
エルフの館に着くと、メイドに簡単に事情を説明した。
主の死を聞いてショックを受けながらも、どこか安堵している様子が伺えた。
それはつまり、このメイドもオレ達が死ぬことに薄々気付いていたということになる。
「さて、ついては報酬を受け取りたいのですが」
ゲネオスが切り出すと、メイドは慌てて奥の部屋に引っ込んだ。
「サルダド」
オレは口を開いた。
「よく考えるとオレ達は警護のミッションをクリアーしていないよな」
「そもそも警護ではなかった上に、ボク達は大蠍のエサにされかかったんだから、まあ報酬を貰う権利はあるんじゃない?」
「それもそうか」
メイドが小箱を持って戻ってきた。
宝石箱のようだ。
施されたエルフ細工と象眼により、箱自体の価値も相当のものと思われた。
「主が報酬として宝石を示していたことは存じております。しかし私には宝石箱の開け方が分かりませんでした」
宝石箱には鍵穴は付いていない。しかし蓋はピッチリと閉じていて全く開かなかった。
「解錠」
マスキロがいきなり魔法を唱えた。
すると箱の一部が飛び出し、その後もあちらこちらから順番に突起物が現れた。
オレ達は目を見張った。
「箱に魔法はかかっておらんかった。エルフの細工だよ。もう箱は開いたはずだ」
オレ達は期待に胸を膨らませながら箱を開けた。
そこには指輪が一つだけ収められていた。
銀色の台座に大きな一粒の宝石が嵌め込まれている。
「金目の物はエルフ達が持ち出した後のようだな。おそらくこれはアクリスの私物だろう」
マスキロが言った。
「これだけ貰っておこうか。パマーダさん、どう?」
ゲネオスが言った。
オレの髪の毛の中でアクリスがガサガサと動いた。
パマーダは指輪を試していたが、しばらくして首を振った。
「これは多分男性用よ」
「じゃあサルダドが持ってたらどう?」
ゲネオスに促されて、オレは指輪を試してみた。
右手の人差し指にピッタリ収まった。
アクリスは静かになった。
エルフの館を後にして、ゲネオスとパマーダが話し始めた。
「命を賭けたミッションで指輪1個は安いね」
「そうね」
マスキロはオレだけに聞こえる声でこう言った。
「あの二人は、この指輪の価値を分かっておらん!」
パマーダが口を開いた。
「じゃあエルフの罪はエルフに請求するというのはどう?」
「ということは?」
次の行き先が決まった。
「山の城へ!」
主の死を聞いてショックを受けながらも、どこか安堵している様子が伺えた。
それはつまり、このメイドもオレ達が死ぬことに薄々気付いていたということになる。
「さて、ついては報酬を受け取りたいのですが」
ゲネオスが切り出すと、メイドは慌てて奥の部屋に引っ込んだ。
「サルダド」
オレは口を開いた。
「よく考えるとオレ達は警護のミッションをクリアーしていないよな」
「そもそも警護ではなかった上に、ボク達は大蠍のエサにされかかったんだから、まあ報酬を貰う権利はあるんじゃない?」
「それもそうか」
メイドが小箱を持って戻ってきた。
宝石箱のようだ。
施されたエルフ細工と象眼により、箱自体の価値も相当のものと思われた。
「主が報酬として宝石を示していたことは存じております。しかし私には宝石箱の開け方が分かりませんでした」
宝石箱には鍵穴は付いていない。しかし蓋はピッチリと閉じていて全く開かなかった。
「解錠」
マスキロがいきなり魔法を唱えた。
すると箱の一部が飛び出し、その後もあちらこちらから順番に突起物が現れた。
オレ達は目を見張った。
「箱に魔法はかかっておらんかった。エルフの細工だよ。もう箱は開いたはずだ」
オレ達は期待に胸を膨らませながら箱を開けた。
そこには指輪が一つだけ収められていた。
銀色の台座に大きな一粒の宝石が嵌め込まれている。
「金目の物はエルフ達が持ち出した後のようだな。おそらくこれはアクリスの私物だろう」
マスキロが言った。
「これだけ貰っておこうか。パマーダさん、どう?」
ゲネオスが言った。
オレの髪の毛の中でアクリスがガサガサと動いた。
パマーダは指輪を試していたが、しばらくして首を振った。
「これは多分男性用よ」
「じゃあサルダドが持ってたらどう?」
ゲネオスに促されて、オレは指輪を試してみた。
右手の人差し指にピッタリ収まった。
アクリスは静かになった。
エルフの館を後にして、ゲネオスとパマーダが話し始めた。
「命を賭けたミッションで指輪1個は安いね」
「そうね」
マスキロはオレだけに聞こえる声でこう言った。
「あの二人は、この指輪の価値を分かっておらん!」
パマーダが口を開いた。
「じゃあエルフの罪はエルフに請求するというのはどう?」
「ということは?」
次の行き先が決まった。
「山の城へ!」
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
鑑定能力で恩を返す
KBT
ファンタジー
どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。
彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。
そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。
この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。
帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。
そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。
そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる