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第5章 砂漠のエルフ(上)
第66話 エルフの館
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アクリスがいるという屋敷は、街の東の端にあった。
屋敷の入り口には先ほどの少年がおり、オレ達が近付いてくるのに気付くと、門番に何やら話しかけた。
「ゲネオス様のご一行ですね? お入りください」
門番はこう言って道を開けた。
門をくぐるとすぐに石造りの屋敷が見えた。
「城壁と同じ石でできているね。街の建物とは作りが違う」
建物の入り口は木でできた重々しい扉で閉ざされていた。
扉は特に彩色や上塗りはなく自然の木材を生かしたものであったが、ただこれまでの重ねてきた年月ゆえに濃い茶色に変色していた。
左右2枚の扉で、高さは2メートル以上、横幅もそれぞれ1メートル程度ある。
「これは凄いな。この扉には木目の境目がないぞ」
オレは思わず声を出した。
「これはまさか一枚板なのか? だとしたらどれほどの巨木からこの扉は切り出されたんだ……」
「もしくはエルフの細工技術をもって、そのように見せているのかもしれない。確かここは元々エルフの女王の住まいだったのよね?」
パマーダも不思議そうに扉を見つめた。
扉が開くと、屋敷の中は板張りの部屋になっていた。
入り口を入ってすぐのホールは絨毯が敷き詰められている。
「この絨毯は砂漠を越えて運ばれてきたものかしら?」
色も形も大きさも様々であったが、雑然としているように見えて一定の調和と組合せの美しさを誇っている。
「これもエルフのセンスなのか……、とてもオレ達人間には思い付きそうにない」
そこへメイドと思しき女性が近付いてきた。
「いらっしゃいませ、お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
メイドに従ってホールの奥の扉を抜けると、そこは回廊になっていた。
回廊に沿って建物を回り込むと、その先には湖が広がっており、城壁の切れ目を越えて街の外に繋がっていた。
砂漠の中にいることを忘れさせるほどの豊かな水量である。
水面は穏やかであったが、強い太陽の光を受けて気怠げに揺らめいていた。
回廊の終点には別の扉があり、メイドが扉を開くとオレ達はその中に入った。
中は居室になっていた。
素朴な調度品がいくつか置かれていたが、近付いて見てみると木製の調度品には継ぎ目に一切の隙間がなく、細かい細工が見えないとこまでしっかりと施されていた。
「こちらでお待ちください。主が参ります」
部屋の奥は扉ではなく、美しい刺繍の施された布が幾枚も垂らされ、部屋を区切っていた。
メイドはその布をはねのけて奥へ消えた。
しばらくするとまたメイドが現れ、一枚の仕切り布を手で支えて人が通れる空間を作った。
その空間を通って現れたのは、一人の少女であった。
「皆様、ようこそお越しくださいました」
屋敷の入り口には先ほどの少年がおり、オレ達が近付いてくるのに気付くと、門番に何やら話しかけた。
「ゲネオス様のご一行ですね? お入りください」
門番はこう言って道を開けた。
門をくぐるとすぐに石造りの屋敷が見えた。
「城壁と同じ石でできているね。街の建物とは作りが違う」
建物の入り口は木でできた重々しい扉で閉ざされていた。
扉は特に彩色や上塗りはなく自然の木材を生かしたものであったが、ただこれまでの重ねてきた年月ゆえに濃い茶色に変色していた。
左右2枚の扉で、高さは2メートル以上、横幅もそれぞれ1メートル程度ある。
「これは凄いな。この扉には木目の境目がないぞ」
オレは思わず声を出した。
「これはまさか一枚板なのか? だとしたらどれほどの巨木からこの扉は切り出されたんだ……」
「もしくはエルフの細工技術をもって、そのように見せているのかもしれない。確かここは元々エルフの女王の住まいだったのよね?」
パマーダも不思議そうに扉を見つめた。
扉が開くと、屋敷の中は板張りの部屋になっていた。
入り口を入ってすぐのホールは絨毯が敷き詰められている。
「この絨毯は砂漠を越えて運ばれてきたものかしら?」
色も形も大きさも様々であったが、雑然としているように見えて一定の調和と組合せの美しさを誇っている。
「これもエルフのセンスなのか……、とてもオレ達人間には思い付きそうにない」
そこへメイドと思しき女性が近付いてきた。
「いらっしゃいませ、お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
メイドに従ってホールの奥の扉を抜けると、そこは回廊になっていた。
回廊に沿って建物を回り込むと、その先には湖が広がっており、城壁の切れ目を越えて街の外に繋がっていた。
砂漠の中にいることを忘れさせるほどの豊かな水量である。
水面は穏やかであったが、強い太陽の光を受けて気怠げに揺らめいていた。
回廊の終点には別の扉があり、メイドが扉を開くとオレ達はその中に入った。
中は居室になっていた。
素朴な調度品がいくつか置かれていたが、近付いて見てみると木製の調度品には継ぎ目に一切の隙間がなく、細かい細工が見えないとこまでしっかりと施されていた。
「こちらでお待ちください。主が参ります」
部屋の奥は扉ではなく、美しい刺繍の施された布が幾枚も垂らされ、部屋を区切っていた。
メイドはその布をはねのけて奥へ消えた。
しばらくするとまたメイドが現れ、一枚の仕切り布を手で支えて人が通れる空間を作った。
その空間を通って現れたのは、一人の少女であった。
「皆様、ようこそお越しくださいました」
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