砕魔のミョルニル

松山さくら

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第5章 砂漠のエルフ(上)

第48話 キャラバン

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テント群の周りはそのままバザールになっていた。
「何か面白いものが売っているかもしれない。のぞいていこうよ」
パマーダが駆け出した。
「おいおい、ふっかけられるぞ」
軽く注意したつもりだったが、その後オレは別の意味でバザールをのぞいたことを後悔することになる。
街の武器屋で買ったシミターがもっと安く売られていたからだ。

しかしバザールの中は楽しかった。
見慣れない文様、色彩、造形。
オレ達の故郷の感性とも、プエルトの開放的な雰囲気から生まれるセンスとも違う。
全ての品物が面白かった。

バザールのお店を一通り冷やかして、嫌そうな目で見られながらも、パマーダは気にすることなく旅の商人に話しかけた。
「みんなはどこから来たの?」
「砂漠の向こう」
「砂漠の旅は大変なんじゃない?」
「こいつがあれば大丈夫さ」
そう言って商人は近くで休んでいた駱駝らくだをポンポンと叩いた。
「それに途中でオアシスの街がある」
「その街には城はありましたか?」
ゲネオスが急に口を挟んできた。
「城? 城壁には囲まれていたが、城はなかったな」
「城壁……」
「かなり大きな街なんだ。元々エルフの女王様が治めていたはずなんだが、今は人間の女が首領になっていた。エルフ達はどこに行ったんだろうな」
商人は話を続けた。
「なんだか妙な雰囲気だったんで、ほとんど商売はせずにオアシスを後にしてきたんだ。ノトスの街はいいなあ」

商人はここで一呼吸置いて、琥珀こはく色の飲み物をすすった。
「せっかく遠くまで珍しいモノを運んできたんだ。何か買っていってくれよ」
「じゃあその駱駝を売ってください」
ゲネオスが言った。
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