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透明な雨空‐4
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後半には、私発案のコーナーをひとつ入れた。
『ここでお悩み相談、助けて保科先輩のコーナーです。ラジオネーム、鳥獣戯画さんから。片想いしている年女子の先輩が僕のことをまったく視界に入れてくれません、助けてください。……とのことです。短いのに切実さがすごいな。どうしたものかなー。これってたぶん、かっこいいところ見せようとすると空回るよね。でも視界に入らなきゃならないもんな。ひとつ自分の中で目標設定して、それを達成できたらいっぺんデート誘ってみたら? 成長した自分だったら自信もつくだろうし、相手に響くものもあるかもよ。でも俺年上好きになったことないしなー。とりあえず頑張れ鳥獣戯画、応援してるよ!』
若干投げやりな答えに笑いをこらえていたら、いつのまにか家の最寄り駅に着いていた。あわてて立ち上がり、電車を降りた。
翌日登校すると、まだ人がまばらな教室の中で桐谷くんが既に自分の席にいた。突っ伏してすやすや寝ている。
あれ、朝余裕持って来てるのめずらしい。戸のあたりで瞬きしながら桐谷くんの後ろ姿を見ていると、保科くんがにやにやしながらこちらに来た。
「灯が学校早いのレアって思ってるでしょ」
「うん。いつも喫茶店の手伝いでギリギリのイメージ」
「それもそうなんだけど、元々朝弱いんだよ。店ある日は手伝って、ない日は寝坊寸前まで寝てるから結局ほぼ毎日遅刻すれすれ。そんな灯が早く来た理由、絶対に」
保科くんはそこで言葉を止めると、無言で私を手のひらで示した。
「え、私?」
「うん、俺来たときもう寝てたから聞けなかったけど、ユズ受けるかどうかの話を伝えるために早く来たんだと思う。だから起こして灯と話してみたらいいよ。ほい、いってらっしゃい」
軽く肩を押され、そのまま自分の席に向かう。机に荷物を置き、横にそっと立って様子をうかがった。机の上で組んだ腕の隙間から閉じたまぶたと長めの睫毛が見えて、心のすみがどぎまぎする。推しの寝顔なんて、そうそう見れるものじゃない。
「桐谷くん」
控えめに声をかけると、眠たそうに顔を上げた。
「久住」
「寝てるところごめんね、おはよう」
「あー」
寝起き直後のせいか、声に張りがない。自分からユズの話を振ってもいいかと迷っていると、だんだんと目が覚めてきた桐谷くんから口を開いた。
「聴いたよ、ラジオ。保科の良さが良く出てて面白かった。それで、インタビュー受けてみようって決めた」
「ほんと!」
驚いて声が大きくなる。迷いはないというように、桐谷くんはうなずいた。
「学校以外の場で努力している人のことを伝えたいっていう、久住の思いは本物だから。でも、新聞には店の名前は出さないでほしい。それが条件」
「わかった。約束する」
桐谷くんはもう一度うなずき、電源が切れたように再び机に突っ伏して寝息を立て始めた。
「話せた? あはは、また寝てる」
保科くんが近づいてきて、桐谷くんを見て笑った。
「うん。インタビュー受けてくれるって。保科くんのいろいろ協力してくれたおかげだよ、ありがとう」
「どういたしまして」
保科くんが桐谷くんの髪の毛をいじって遊んでいる。私は椅子に座り、微笑ましく横からその様子を眺めた。
『ここでお悩み相談、助けて保科先輩のコーナーです。ラジオネーム、鳥獣戯画さんから。片想いしている年女子の先輩が僕のことをまったく視界に入れてくれません、助けてください。……とのことです。短いのに切実さがすごいな。どうしたものかなー。これってたぶん、かっこいいところ見せようとすると空回るよね。でも視界に入らなきゃならないもんな。ひとつ自分の中で目標設定して、それを達成できたらいっぺんデート誘ってみたら? 成長した自分だったら自信もつくだろうし、相手に響くものもあるかもよ。でも俺年上好きになったことないしなー。とりあえず頑張れ鳥獣戯画、応援してるよ!』
若干投げやりな答えに笑いをこらえていたら、いつのまにか家の最寄り駅に着いていた。あわてて立ち上がり、電車を降りた。
翌日登校すると、まだ人がまばらな教室の中で桐谷くんが既に自分の席にいた。突っ伏してすやすや寝ている。
あれ、朝余裕持って来てるのめずらしい。戸のあたりで瞬きしながら桐谷くんの後ろ姿を見ていると、保科くんがにやにやしながらこちらに来た。
「灯が学校早いのレアって思ってるでしょ」
「うん。いつも喫茶店の手伝いでギリギリのイメージ」
「それもそうなんだけど、元々朝弱いんだよ。店ある日は手伝って、ない日は寝坊寸前まで寝てるから結局ほぼ毎日遅刻すれすれ。そんな灯が早く来た理由、絶対に」
保科くんはそこで言葉を止めると、無言で私を手のひらで示した。
「え、私?」
「うん、俺来たときもう寝てたから聞けなかったけど、ユズ受けるかどうかの話を伝えるために早く来たんだと思う。だから起こして灯と話してみたらいいよ。ほい、いってらっしゃい」
軽く肩を押され、そのまま自分の席に向かう。机に荷物を置き、横にそっと立って様子をうかがった。机の上で組んだ腕の隙間から閉じたまぶたと長めの睫毛が見えて、心のすみがどぎまぎする。推しの寝顔なんて、そうそう見れるものじゃない。
「桐谷くん」
控えめに声をかけると、眠たそうに顔を上げた。
「久住」
「寝てるところごめんね、おはよう」
「あー」
寝起き直後のせいか、声に張りがない。自分からユズの話を振ってもいいかと迷っていると、だんだんと目が覚めてきた桐谷くんから口を開いた。
「聴いたよ、ラジオ。保科の良さが良く出てて面白かった。それで、インタビュー受けてみようって決めた」
「ほんと!」
驚いて声が大きくなる。迷いはないというように、桐谷くんはうなずいた。
「学校以外の場で努力している人のことを伝えたいっていう、久住の思いは本物だから。でも、新聞には店の名前は出さないでほしい。それが条件」
「わかった。約束する」
桐谷くんはもう一度うなずき、電源が切れたように再び机に突っ伏して寝息を立て始めた。
「話せた? あはは、また寝てる」
保科くんが近づいてきて、桐谷くんを見て笑った。
「うん。インタビュー受けてくれるって。保科くんのいろいろ協力してくれたおかげだよ、ありがとう」
「どういたしまして」
保科くんが桐谷くんの髪の毛をいじって遊んでいる。私は椅子に座り、微笑ましく横からその様子を眺めた。
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