追放された少年は『スキル共有スキル』で仲間と共に最強冒険者を目指す

新たな地へ10

　魔術の祖メルランによれば、人間というのは3つの異なる要素の組み合わせから成り立っている。すなわち、肉体と精神と魂だ。肉体はその名の通り人の体を構成し、そこから練気プネウマが生じる。精神は人の心を生み出し、そこから魔力が発生する。そして魂は肉体と精神を結合させ人間という存在を現世に保つ性質を持つ。そして、魂から生まれるのが天質スキルだ。

　天質スキルとは、それぞれの魂に固有の…すなわち、それぞれの人間に固有の特別な力。生まれながらにして持っているものだが、それが発現する時期はさまざまだ。一生その存在に気がつかないまま一生を終える事もある。さらに、後天的に天質スキルを伸ばす事も出来る。まあ、これは一般的な『才能』と一緒だ。例え絵を描く才能があっても、実際に描かなければその才能に気がつけないし努力すれば才能は伸びる。とまあ、この辺りはあなたにはわざわざ説明する必要がなかったかな？クラリス。けれど、私の予想ではこの本を読んでいる時、あなたの横にはルカ・ハークレイ君とその仲間がいるはずだからね。一応記述しておくよ。

　さて、前置きはこの辺りにして本題である天質スキルを共有する天質スキルについて説明しよう。この天質スキルについては、理論だけが提唱されていた。すなわち、他者の魂と共鳴する天質スキルの持ち主であれば、他の人間と天質スキルを共有する事が出来るのではないか…とね。しかし、200年生きた私もそんな人物を見た事がなかった。ルカ・ハークレイ君と出会うまでは。