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新たな地へ9

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「白紙…」

 クラリスがそう呟いたその時、部屋の隅でガタリ、という物音がした。全員がそちらへ視線を向ける。それは、部屋の隅に立てかけてあった杖が倒れた音だった。元々不安定な状態で立てられていたのだろう。別段驚く事はない――そう思い、一同が本へ視線を戻したその時、

「えっ…?」

 全員が声を上げる。先ほどまで白紙だったその本に、いつの間にかびっしりと文字が浮かび上がっていた。

「…お師匠様のイタズラですね」

 クラリスは、微笑みながら小さくため息を吐く。

「イタズラ…ですか?」

 安鶴沙がクラリスの顔を覗き込んだ。

「はい。お師匠には、きっと私がこの本を開く事が分かっていたのでしょう。私が本を持つと、その魔力に反応して部屋の隅の杖が倒れる。そして目を戻すと本に文字が浮かび上がっている…そんな仕掛けです。でも、そのおかげで確信が持てました。この本に書かれている事は…今、私達が必要としている内容です」

 クラリスは本に視線を落とし、文字に目を向ける。そこに書かれているのは古代文字だった。この場で古代文字が読める人間は、クラリスとルカしかいない。クラリスはアレクシアと安鶴沙にも内容を伝えるため、声に出して本の内容を読み始めた。

「親愛なる愛弟子クラリスへ。私が今まで集めた情報が、この工房にはある。けれど全てを伝えようとすると…きっと、何十年もかかってしまうだろう。だから、今あなたに必要な情報だけをここに記す。まずは、『スキルを共有するスキル』について――」
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