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レオンハルト・ツヴァイク襲撃事件2
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近衛総長、レオンハルト・ツヴァイクが王都を離れる事はめったにない。例え離れる事があったとしても、それは国王に随行しての事。その際は多数の近衛たちを引き連れての移動という事となる。近衛はレオンハルト直々に鍛えた者達ばかりであり、その中には皆伝や奥伝といった位階の剣士も存在する。そんな中でレオンハルトを襲撃するのは不可能に近い。
だが、レオンハルトには数年に一度ほど、ひとりきりになってどこかの森や洞窟に籠って己の剣を見つめ直すという習慣があった。この習慣があるからこそ、レオンハルトは老齢となった今も全盛期と変わらぬ力を保持する事ができている。しかし、レオンハルトがどこに森に、いつ出かけるのかというのは近衛の中でも一部の者しか知らされる事はない。
そんな一部の者しか知るはずのない情報を、6人の襲撃者にもたらした者がいた。その男の名は――、
「確かエリュクスと言ったか…あの男」
禿頭の男が言う。その言葉に頷くのは、背の高い老人。
「うむ。そう名乗っておったのう。かかか、誠にあの伝説のエリュクスかどうかは知らんがな」
「あたしらに情報を持ってきたあいつが何者かなんてどうでもいいさ。大事なのは、本当にレオンハルト・ツヴァイクがここにいるかどうか…そうじゃないかい?」
体格のいい女のその言葉に、
「そう、だな」
「ひゃは、その通り」
と落ち窪んだ目の男と顔に刺青のある青年が同意する。彼らは、いわゆる闇社会の住人だ。要人の暗殺や、盗賊団の用心棒といった表沙汰には出来ない仕事を生業としている者ばかり。
落ち窪んだ目の男は、ランサラト流皆伝剣士キルセモ・ウェルボーン。
禿頭の人物は、アルトゥース流皆伝剣士ゲリッケ・メイヒュ。
体格のいい女性は、ガーヴァーン流皆伝剣士ゾーエ・ルビラ。
背の高い老人はアルトゥース流奥伝剣士オルホルト・ディートラー。
刺青のある青年はパルツィヴァール流奥伝槍使いリフェ・シェイル。
彼ら5人は全員が闇社会では名の知れた実力者であり、互いに面識があった。ただ1人、先ほどから会話に加わろうとしない少女を除いて。
「おい、お前…」
禿頭のゲリッケが少女に声をかける。
「えーっと、なんつったか…お前の名前は」
「ん?オレか?」
白髪の少女は、少女らしくない口調で返事をしつつゲリッケの方を向いた。
「オレの名前は…えーっと、なんだったっけ」
「なんだったっけも何もあるか。自分の名前だろ…馬鹿にしてんのか?」
「いやいや、違うって。ああそうそう、ローエングリンだ。ローエングリン・ファイアフィズ。それが、オレの名前だ」
だが、レオンハルトには数年に一度ほど、ひとりきりになってどこかの森や洞窟に籠って己の剣を見つめ直すという習慣があった。この習慣があるからこそ、レオンハルトは老齢となった今も全盛期と変わらぬ力を保持する事ができている。しかし、レオンハルトがどこに森に、いつ出かけるのかというのは近衛の中でも一部の者しか知らされる事はない。
そんな一部の者しか知るはずのない情報を、6人の襲撃者にもたらした者がいた。その男の名は――、
「確かエリュクスと言ったか…あの男」
禿頭の男が言う。その言葉に頷くのは、背の高い老人。
「うむ。そう名乗っておったのう。かかか、誠にあの伝説のエリュクスかどうかは知らんがな」
「あたしらに情報を持ってきたあいつが何者かなんてどうでもいいさ。大事なのは、本当にレオンハルト・ツヴァイクがここにいるかどうか…そうじゃないかい?」
体格のいい女のその言葉に、
「そう、だな」
「ひゃは、その通り」
と落ち窪んだ目の男と顔に刺青のある青年が同意する。彼らは、いわゆる闇社会の住人だ。要人の暗殺や、盗賊団の用心棒といった表沙汰には出来ない仕事を生業としている者ばかり。
落ち窪んだ目の男は、ランサラト流皆伝剣士キルセモ・ウェルボーン。
禿頭の人物は、アルトゥース流皆伝剣士ゲリッケ・メイヒュ。
体格のいい女性は、ガーヴァーン流皆伝剣士ゾーエ・ルビラ。
背の高い老人はアルトゥース流奥伝剣士オルホルト・ディートラー。
刺青のある青年はパルツィヴァール流奥伝槍使いリフェ・シェイル。
彼ら5人は全員が闇社会では名の知れた実力者であり、互いに面識があった。ただ1人、先ほどから会話に加わろうとしない少女を除いて。
「おい、お前…」
禿頭のゲリッケが少女に声をかける。
「えーっと、なんつったか…お前の名前は」
「ん?オレか?」
白髪の少女は、少女らしくない口調で返事をしつつゲリッケの方を向いた。
「オレの名前は…えーっと、なんだったっけ」
「なんだったっけも何もあるか。自分の名前だろ…馬鹿にしてんのか?」
「いやいや、違うって。ああそうそう、ローエングリンだ。ローエングリン・ファイアフィズ。それが、オレの名前だ」
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