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一難去って11

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 エリュクスは自身の予備バックアップを用意している――とても信じられないような話だが、しかしそうだとすればエリュクスが最後に言った『野望は潰えていない』という言葉の意味も理解できる。だが、そうだとすれば――。

「エリュクスさんは、どうして…そこまでして、邪神を復活させたいんでしょうか…」

 かつての仲間であるオイフェを消滅させ、自身の複製をつくるという禁忌を犯してまで成し遂げたい邪神の復活。だが、その理由がルカには分からない。

「エリュクスは…憎んでいるのよ。この世界を…」

「世界を…?」

「ええ。かつて、エリュクス達は…『冥王』と呼ばれる、強大な力を持った存在を…討伐したわ。これは知っているわね…」

「はい。邪神の再来と呼ばれた存在ですよね。大陸ひとつを滅ぼしたという…」

「そう。まさしく…エリュクス達は、世界を救った英雄ね…。けれど…世界は、その英雄たちに報いる事はなかった。…エリュクス達のパーティが、6人だった事は知っているかしら…?」

「それは初めて聞きました」

 『冥王』討伐の伝説はこの世界の多くの者が知る所だが、それが成されたのは200年前の事。長い年月の間にさまざまな噂や逸話が入り混ざり、今となってはその実態を把握する事は難しくなっている。『冥王』を倒したとされるメンバーで一般に知られるのは、リーダーであるゲフィオン・ロトリングという人物と最強の魔術師オイフェのみ。その他のメンバーは、現代には伝えられていない。

「かつて『冥王』を倒したパーティは…一般に知られるゲフィオン、オイフェ、それにあなたも会ったエリュクス。それと…私の父レオンキーファ、私の母フレイアルフェ、さらに異世界マサノリ・クスノキ。この6人よ…」

「えっ…?」

 『異世界人』という言葉に反応して安鶴沙は顔を上げる。だが、今はそれを聞く時ではないと判断したのか追及はしない。ロストアルフェはさらに言葉を続けた。

「この6人のうち…レオンキーファは『冥王』との戦いで命を落とし、マサノリ・クスノキは元の世界に戻ったと…言われているわ。オイフェとエリュクスの顛末については…あなた達も知っている通り。そして…リーダーのゲフィオンと…私の母フレイアルフェは…戦いの後、殺されたわ。それぞれの国の…人間たちに」
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