追放された少年は『スキル共有スキル』で仲間と共に最強冒険者を目指す

アヅサ奪還15

「俗人が！剣ならば俺に勝てると思い上がったか！？」

　エリュクスは安鶴沙を肩に担ぐと同時に剣を抜き放ち、ルカの攻撃を受け止める。オイフェと魔術の打ち合いを演じた事から見ても、エリュクスは間違いなく近接戦ではなく魔術を得意とする人間だ。だが、ルカは剣を交えた瞬間に悟る。この相手は剣術においても並みならぬ使い手であると。

（でも、それでも…！）

　離れて魔術を撃たれるよりは近接戦闘の方が勝機があるはずだ。ルカは攻める手を休めず、二撃、三撃と攻撃を叩き込んでいく。エリュクスはそれを捌きつつ、徐々に後ろへ後ろへと下がっていく。押される形になっているのはエリュクスにとって屈辱だが、この展開は彼にとって想定内でもあった。エリュクスの背後にあるのは岩壁だ。しかしこの壁は扉状になっており、その先からは地上に逃れる事が出来る。そもそも、ここはエリュクスの隠れ家のひとつ。利便性といざという際の脱出口を考え、出入口は複数用意してある。

「しつこいぞ…俗人が！」

　と苛立たし気な風を装いつつ、エリュクスの心中はいたって平静だった。あと僅か数歩下がれば、出口に到達する事が出来る。あと約十歩…五歩、三歩、二歩、一歩…というその時。

「ロック・ウォール！」

　響き渡る少女の声。と同時に、エリュクスの背後に頑強な岩壁が地面からせり上がってきた。