追放された少年は『スキル共有スキル』で仲間と共に最強冒険者を目指す

アヅサ奪還7

「お、師匠様！？お師匠様の負けって…」

「落ち着いて、クラリス。…それとルカ君、アレクシアさん。私がいいと言うまで決して動かないで」

　そう告げた後、オイフェとエリュクスの間で魔術による無数の攻防が繰り広げられた。エリュクスは41個の魔術を放ち、オイフェは37回魔術を行使した。それらは全て、皆伝レベル4から奥伝レベル5程度に位置する魔術。一般的な感覚で言えば、どれもが必殺と言っても良い高威力の術だ。しかし、覚意レベル8魔術すら使用可能なオイフェにしてみれば決して大技とは言えない。無論、オイフェは手加減して威力の低い魔術を使用した訳ではない。そうする事しか出来なかったのだ。

　大魔術を使用すればそこに隙が出来る。一流の拳闘士ボクサー同士の試合で、いきなり渾身のストレートを打ち込んだりしないのと同じだ。ジャブやフットワークを使い、相手の隙を伺った後でなければ必殺の一撃は当たらない。そして…その必殺の一撃を決めたのは、エリュクスだった。

　『ゴートゥー・アナザー・ワールド』

　エリュクスがその呪文を唱えた瞬間、場の空気が一変した。エリュクスを中心として、迷宮ダンジョン全ての魔力が吸い込まれるような感覚。

（いや…違う、魔力を吸い込んでいるのは…！）

　ルカははっきりと知覚した。魔力を吸い込んでいるのはエリュクスではない。その傍らで横になる少女…来島安鶴沙。彼女の体が、膨大な魔力を取り込んでいる。その様子を見てオイフェは呟いた。

「…やっぱり、駄目か」