上 下
503 / 1,076

最終試験58

しおりを挟む
「アレクシアさん、おめでとうございますっ!これでアレクシアさんもSランクですねっ!

 観客席に戻ったアレクシアに、安鶴沙がぎゅっと抱き着いた。そんな少女の頭を苦笑して撫でつつ、アレクシアはルカに視線を向ける。

「おめでとうございます、アレクシアさん。…素晴らしい戦いでした」

 そんな少年ににっこり微笑みつつ、アレクシアは答えた。

「私ひとりでは勝てなかった。沢山の出会いが…私に勝利をもたらしてくれた。応援してくれてありがとう、ルカ。アヅサ」

 疲れ切った様子ながら、アレクシアの表情からは凛とした力強さが失われていなかった。その根底にあるのは、今まで積み重ねてきた研鑽と…そして、ルカや安鶴沙という仲間の存在。彼女の態度がそれを教えていた。

「それで…フーベルト殿」

 アレクシアは安鶴沙の頭を撫でつつルカと見つめ合った後、フーベルトを振り向いた。

「何故、あなたの動きが分かったのか…それを知りたいとおっしゃられていましたね」

「うむ。…正直な所、あれを避けられるなどとは思っておらなんだ。いったい何故、わしの動きが分かったのか…それを教えてはくれんか」

「はい。――ルカ君」

 と、ここでアレクシアはルカに言葉を投げかけた。

「…君も、あの動きを予想出来ていたね」

 戦いの最中、ルカが叫んだ言葉をアレクシアはしっかり聞き取っていた。そしてルカもまた、アレクシアと同じくフーベルトの動きを完全に読みきっていた。その理由は――、

「はい。僕にも、フーベルトさんが次に放つ攻撃が分かりました。その理由は…すでに一度、同じ動きを見ていたからです」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あやかし酒場と七人の王子たち ~珠子とあやかしグルメ百物語~

相田 彩太
キャラ文芸
東京の中心より西に外れた八王子、さらにその片隅に一軒のひなびた酒場がある。 「酒処 七王子」 そこは一見、普通の酒場であるが、霊感の鋭い人は気づくであろう。 そこが人ならざるモノがあつまる怪異酒場である事を。 これは酒場を切り盛りする7人の兄弟王子と、そこを訪れる奇怪なあやかしたち、そしてそこの料理人である人間の女の子の物語。 ◇◇◇◇ オムニバス形式で送る、”あやかし”とのトラブルを料理で解決する快刀乱麻で七転八倒の物語です。 基本的にコメディ路線、たまにシリアス。 小説家になろうでも掲載しています。

大好きな母と縁を切りました。

むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。 領地争いで父が戦死。 それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。 けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。 毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。 けれどこの婚約はとても酷いものだった。 そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。 そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……

家から追い出された後、私は皇帝陛下の隠し子だったということが判明したらしいです。

新野乃花(大舟)
恋愛
13歳の少女レベッカは物心ついた時から、自分の父だと名乗るリーゲルから虐げられていた。その最中、リーゲルはセレスティンという女性と結ばれることとなり、その時のセレスティンの連れ子がマイアであった。それ以降、レベッカは父リーゲル、母セレスティン、義妹マイアの3人からそれまで以上に虐げられる生活を送らなければならなくなった…。 そんなある日の事、些細なきっかけから機嫌を損ねたリーゲルはレベッカに対し、今すぐ家から出ていくよう言い放った。レベッカはその言葉に従い、弱弱しい体を引きずって家を出ていくほかなかった…。 しかしその後、リーゲルたちのもとに信じられない知らせがもたらされることとなる。これまで自分たちが虐げていたレベッカは、時の皇帝であるグローリアの隠し子だったのだと…。その知らせを聞いて顔を青くする3人だったが、もうすべてが手遅れなのだった…。 ※カクヨムにも投稿しています!

勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。  ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。  これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である

婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。

ユウ
ファンタジー
辺境伯爵家の次男シオンは八歳の頃から伯爵令嬢のサンドラと婚約していた。 我儘で少し夢見がちのサンドラは隣国の皇太子殿下に憧れていた。 その為事あるごとに… 「ライルハルト様だったらもっと美しいのに」 「どうして貴方はライルハルト様じゃないの」 隣国の皇太子殿下と比べて罵倒した。 そんな中隣国からライルハルトが留学に来たことで関係は悪化した。 そして社交界では二人が恋仲で悲恋だと噂をされ爪はじきに合うシオンは二人を思って身を引き、騎士団を辞めて国を出ようとするが王命により病弱な第二王女殿下の婚約を望まれる。 生まれつき体が弱く他国に嫁ぐこともできないハズレ姫と呼ばれるリディア王女を献身的に支え続ける中王はシオンを婿養子に望む。 一方サンドラは皇太子殿下に近づくも既に婚約者がいる事に気づき、シオンと復縁を望むのだが… HOT一位となりました! 皆様ありがとうございます!

【完結】儚げな少年と思って助けたら魔界一最強の魔王様でした。

カントリー
恋愛
「おねえちゃん 僕のお嫁さんになって…」 奴隷の少年だと思い助け、 可愛がったら… 「…約束は守ってもらうからな オーロラ…破るなんてありえないよな?」 魔界一最強の魔王様でした。 これはメイドのオーロラが繰り広げる 魔族の最高頂点の魔王様に求婚されるまでの 異世界ファンタジー。 小説の「異世界でお菓子屋さんを始めました!」と少し繋がっています。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

処理中です...